2019年03月21日 10:42 弁護士ドットコム
首都圏にあった少年院2つと少年鑑別所1つが移転し、4月にそれぞれ「東日本少年矯正医療・教育センター(仮称)」、「東京西法務少年支援センター(仮称)」として運用が始まる。
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いずれも「国際法務総合センター」(東京都昭島市)内に立地。運営の効率化を図るため、センター内には、ほかにも研修施設や成人を収容する矯正施設などが集約されている。敷地面積は約12万5千平方メートル。立川基地の跡地に建設された。
関係者は「設備、職員ともに充実させ、少年のニーズに応じた適切な医療・支援を提供していきたい」と話している。
法務省矯正局は2月6日、2つの施設を報道関係者らに公開した。(編集部・吉田緑)
「東日本少年矯正医療・教育センター(仮称)」は関東医療少年院と神奈川医療少年院を統合した施設だ。
収容予定人数は支援教育課程が100人、医療措置課程が110人。前者は主に障がいがあるかその疑いがある少年、後者は主に身体や精神に疾患がある少年を収容する。社会性が乏しく、いじめられた経験や被虐待歴をもつ少年も少なくないという。
支援教育課程の居室には鍵がなく、開放的で明るい。
施設では「自分のことは自分でできるように」と自立に向けた支援や指導をおこなう。洗面所やトイレは共同で使う。
絵画や陶芸、木材工芸などの作業療法をはじめ、さまざまなプログラムも用意されている。
運動ができる体育館やプールもある。体育館は収容されている少年だけではなく、一般市民も利用することができる。
窓からは、まだ建設中のグラウンドも見えた。
再犯・再非行を防ぐためには、円滑に社会復帰するためのサポートも必要だ。しかし、障がいなどがあることから、自立が難しい少年も少なくない。
そこで、社会福祉士などの専門スタッフによる支援をおこない、医療や福祉との連携をはかる。単に家庭に帰すのではなく、必要に応じて病院などにつないでいるという。
身体や精神に疾患があり、なんらかの医療的な治療(医療措置)が必要な少年たちのための居室も用意されている。男子はオレンジ色、女子はピンク色の扉だ。
建物は、「国際法務総合センター」内にある成人向け医療刑務所の「東日本成人矯正医療センター」ともつながっている。少年のニーズに応じた適切な医療をすみやかに提供することが可能だ。
「東日本成人矯正医療センター」は2018年1月からすでに運用を開始している。このセンターは刑務所でもあるが、大きな病院でもある。人工透析の機器やMRI、CTの撮影室など、医療に必要な設備が充実している。
「東京西法務少年支援センター(仮称)」は八王子少年鑑別所が移転して名称を改めたものだ。収容予定人数は80人。
収容されるのは、主に家庭裁判所で「観護措置」の決定を受けた非行少年だ。鑑別所では、審判が始まるまで、医学、心理学、教育学などさまざまな観点から、少年が非行に走ってしまった要因や更生に必要なことを調査する。
センター内には一般市民向けの「もくせいの杜心理相談室」を開設。心理学や教育学の専門職員が応じる。
少年鑑別所では、学校や児童相談所などの依頼を受けて研修をおこなったり、心理相談を受け付けたりもしている。
鑑別所の豊富な臨床経験などを生かすため、2015年に少年鑑別所法が施行され、「非行及び犯罪の防止に関する援助」(地域援助活動)も業務としておこなうことが規定された(同法131条)。
前身の八王子少年鑑別所「くわのみ心理相談室」では、年間100をこえる相談があったという。
「もくせいの杜心理相談室」では、子どもの非行や問題行動に悩む保護者にかぎらず、広く一般市民の相談を無料で受け付ける。子どもの万引きやネット依存など、さまざまな相談が寄せられるという。
(弁護士ドットコムニュース)