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Google『Stadia』から『Doom Eternal』の配信決定 将来は1,000人参加のバトロワゲーも可能か?

2019年03月21日 08:41  リアルサウンド

リアルサウンド

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 現在、デジタルコンテンツのビジネスモデルは大きな曲がり角を迎えている。音楽では国内外でストリーミングサービスが主流となり、動画に関してもNetflixやHuluが市場を変えようとしている。こうしたストリーミングサービスの波は、ゲームにも波及しようとしている。この流れの先陣を切ったのは、GAFAの筆頭企業であった。


(参考:Google『Stadia』は成功するのか? 開かれたゲーム産業の“パンドラの箱”


■YouTubeとの連携を意識
 Googleは、アメリカ・サンフランシスコで3月18日から22日の日程で開催されている世界的なゲーム開発者会議GDCにおいて、クラウドゲーミングサービス『Stadia』を発表した。同サービスを簡単に言えばゲームをクラウドサーバ上で制御・管理するものである。こうした仕組みにより、ゲームデバイスの性能の違いを意識することなくゲームをプレイすることが可能になる。つまり、スマホとPCでほぼ同等のゲーム体験ができるようになるのだ。


 ゲームとYouTubeを連携させる機能も多数実装している。例えば、ゲームのトレーラー動画などに埋め込まれる「今すぐプレイ」ボタンを押下すると、すぐにゲームがプレイできるようになる。「Crowd Play」は、ゲーム実況中に「一緒に遊ぶ」ボタンを押下すると、ゲーム実況者のプレイに視聴者も参加できるようになるもの。そして、「State Share」機能を使えば、ゲームプレイにおける任意の状況を保存して公開できる。この機能によって、ボス戦を最強装備で戦うようなプレイを気軽に共有できるようになる。


■Ubisoft、id Softwareと提携
 Stadiaは2019年内にアメリカ、カナダ、そしてイギリスをはじめとした一部の欧州諸国からリリースされる予定とされており、価格と配信コンテンツについては不明である。もっとも、配信コンテンツに関しては、エンタメ系メディア『Polygon』が『Doom Eternal』がStadiaに対応することを同ゲーム開発元のid SoftwareがGDCでのプレゼンにおいて明らかにしたことを報じている。同ゲームは、FPSの始祖『Doom』をリブートした2016年版の続編にあたるものである。


 Polygonのほかの記事では、Stadiaを率いるGoogle幹部にJade Raymond氏が就任することを伝えている。同氏は、UbisoftやEAの幹部を務めた経験がある。同氏によると、現在Googleはゲーム開発に関してUbisoftやid Software、そしてQ-Gamesと提携している、とのこと。こうしたことから、Stadiaで配信されるコンテンツとして『アサシン クリード』シリーズなども予想される。


■1,000人参加のバトロワゲーも可能か?
 以上のようなStadiaに関して、ゲームメディア『EuroGamer』は発表されたゲーム環境で実際にゲームをプレイしたレビュー記事を公開した。同サービスはゲームデバイスに依存しないものであることは前述した通りなのだが、その一方でGoogleは専用のゲームコントローラをリリースする予定である。このゲームコントローラを使ってみたところ、デザイン自体は月並みであるものも、操作時のレスポンスには好印象を抱いた、とのこと。また、ゲームプレイについてもGoogleが昨年から進めていたゲームテストプロジェクト『Project Stream』の時と比べて大きな改善が見られ、今後のさらなる性能向上が期待できるとコメントしている。


 アメリカ大手メディアCNBCは、Stadiaの発表後にGPU製造メーカーAMDの株価が11.8%上昇したことを報じた。この株価上昇の背景には、同サービスのGPUとして同社のそれが採用されたことがある。株価が上昇した結果、同社の時価総額は27億ドル(約3000億円)増えて261億ドル(約2兆9,000億円)となった。


 また、ゲームメディア『GAMARANT』は、Stadiaの演算能力がXbox One XやPS4 Proよりも高いことに着目して、同サービスを使って1,000人が参加するバトロワゲーを開発する可能性に言及した。こうした試みはまだ誰も実行していないので未知の問題が立ちはだかるであろうが、もし本当に実行した場合、ゲームの新しい可能性を見ることになるだろう、とコメントしている。


 Stadiaは、これまでゲームデバイスごとに棲み分けがあったゲーム市場を大きく変える可能性がある。と同時に、1,000人参加のバトロワゲーのようなGoogle保有の巨大インフラを活用して初めて可能となるゲームが誕生するポテンシャルをも秘めているのでないだろうか。


(吉本幸記)