『第44回木村伊兵衛写真賞』の受賞者が発表された。
今年の受賞者に選出されたのは、岩根愛。選考委員は石内都、鈴木理策、ホンマタカシ、平野啓一郎が務めた。3月20日発売の『アサヒカメラ2019年4月号』には選評などが掲載される。対象作は写真集『KIPUKA』と展示『FUKUSHIMA ONDO』。
1991年に単身で渡米し、ペトロリアハイスクールに留学した岩根愛。2006年からハワイにおける日系文化に注目し、2013年からは福島にも拠点を構えて移民を通じたハワイと福島の関連をテーマにした作品を制作し続けている。昨年、初の作品集『KIPUKA』を刊行した。
授賞式は4月24日に東京・一ツ橋の如水会館で実施。受賞作品展は4月23日から東京・新宿のニコンプラザ新宿 THE GALLERY 1、6月13日から大阪・ニコンプラザ大阪 THE GALLERYで開催される。
『木村伊兵衛写真賞』は毎年優れた作品を発表した新人写真家を表彰。写真家・木村伊兵衛の業績を記念して1975年に創設され、「写真界の芥川賞」とも称されている。過去の受賞者には藤原新也、畠山直哉、ホンマタカシ、蜷川実花、HIROMIX、川内倫子、佐内正史、梅佳代、長島有里枝、浅田政志、石川竜一、川島小鳥らが名を連ね、昨年は小松浩子、藤岡亜弥が受賞した。
■佐々木広人(『アサヒカメラ』編集長)のコメント
第44回木村伊兵衛写真賞は岩根愛さんの『KIPUKA』に決定しました。
毎回、1次選考会と最終選考会の前に、推薦人に推挙していただきますが、岩根さんを推す数はその時点で最多でした。つまり、今回は「大本命」が受賞したことになります。
こう記すと、選考があっさり終わったと勘違いされそうですが、推薦から最終選考までの過程では、現代の写真表現をめぐる課題、在りようなどがさまざまに語られました。
いまや1秒間に25万枚の写真が撮影されていると言われています。大した知識がなくてもデジタルカメラを使うだけでそれなりの画像が撮影でき、現像知識がなくても編集用のソフトやアプリの使い方を知っていれば画像はいかようにでも加工できます。交通網と通信網の発達で、かつては秘境だった異国の地でさえ「近場」になってしまいました。もはや「ただ撮る」だけでは不十分ですが、「プラスα」があっても必ずしも評価されるとは限らないのです。
そんな困難な時代の写真表現とは何なのか。写真家たちに課された問いは難解です。しかし、そんな時代で最高の評価を受けるということは、とてつもない偉業だとも思うのです。