2019年3月4~5日、鈴鹿サーキットで今年最初の全日本スーパーフォーミュラ選手権・公式合同テストが実施された。ピットに最新鋭の世界最速ワンメイクフォーミュラマシン『SF19』が20台揃うのは、なかなか壮観。11チーム20人の今季レギュラードライバーがそれぞれの新たな“自機”で走り出し、いよいよ新シーズンが具体的に動き始めた。
公式テストへと連なる3月2~3日にやはり鈴鹿サーキットで開催された『モースポフェス 2019 SUZUKA~モータースポーツファン感謝デー~』でもスーパーフォーミュラの走行プログラムがあったため、各チームは都合4日間連続、開幕戦の舞台で新車SF19を走らせる機会を得たことになる。そのなかでドライ路面もウエット路面も経験できたのだから、総じていい準備期間となったはずだ。
公式テスト2日間の印象としてまず強調したいのは、アクシデントやトラブルでストップした車両を回収するための赤旗中断が少なかったこと。これは新車の完成度の高さを示す状況と考えてよく、同時にスーパーフォーミュラ参戦各チームの対応力、そして国内外から集まったドライバーたちのハイレベルさの証明ともいえるだろう。
テスト中に記録されたラップタイムも速かった。まだセットアップをしっかり煮詰めきれたといえる陣営はないと思われるが、1分36秒台はあたりまえ、1分35秒台も出ていたほどだ。もちろん気象コンディションやオーバーテイクシステムの使用状況等を考慮する必要はあるが、先代車『SF14』のセットアップが熟成されたときの速さと、ほぼ同等のラップタイムをSF19は初回公式テストですでに発揮している。
SF19はSF14から「クイック&ライト」のコンセプトを継承して開発された。SF14同様にダラーラ社が手掛けたマシンということもあり、5年前にスウィフト社製の先々代『SF13(旧名:FN09)』からSF14へと移行した時ほどのビッグチェンジでないことは明らかだ。
鈴鹿テストでのドライバーやエンジニアの談話からもそれは伝わってきた。完全な新車というよりも正常進化と表現するほうが妥当なところか。それが各陣営のスムーズなテスト開始につながっていることも事実だが、正常進化であってもワンメイクマシンの刷新は、シリーズに大きな変化をもたらす可能性を充分にはらむ要素である。
ダウンフォースの増加とフロントタイヤの幅広化によるコーナリング性能の向上実感も異口同音に聞かれるところ。また、ホイールベースがSF14より50mm短くなっていることもSF19の“味”を形成する要素のようだ。
一概には言えないものの、これらのスペック変化からはいわゆる『コーナーで前(フロント)が入りやすくなる』傾向が予想される。現実にそういう面はあるようで、ある有力チームのエンジニアからは「ウチの(SF14時代終盤の)セットアップ傾向的には助かる方向の変化です」という内容の話が聞かれた。一方で他の有力チームからは「イチから考え直さないといけないかもしれませんね」との声も。
なにしろコンマ2~3秒は“大差”と表現される世界にあるスーパーフォーミュラだけに、やはり正常進化マシンではあっても新車導入の影響は小さくないと見るべきようだ。ドライバーやチームがもつ個性への影響が如実に出てくるケースもありそう。
ましてや今季はドライバーの移籍や担当エンジニア変更といった話題も多いだけに、SF19導入という要素との化学反応次第では大きな勢力図変化が起きても不思議はないといえる。
そして実際、その兆候が見受けられてもいるのだ。SF14で戦った5シーズンに実績を積みあげた選手がタイムシート上ではあまり目立たず、スーパーフォーミュラでの経験が浅い選手がタイム上位に進出、そんな傾向が鈴鹿公式テストにはあった。もちろん強い選手やチームはすぐにアジャストしてくるだろうが、流れが変わりそうな雰囲気も醸成されつつある。
また、「ブレーキングがさらに良くなっている」という感触も聞かれており、もしかしたらこれも戦い方に微妙な変化をもたらすかもしれない。そして今季はオーバーテイクシステムの運用が変わり、これまでは決勝レース中に20秒×5回の原則だった“パフォーマンスアップ”が、レース中の上限100秒以内であれば、使用回数と各回の使用秒数は自由裁量、と変わる予定だ(※一度使用した後、再使用開始までには使用できない制限時間が設定される)。これもレース展開にどんな影響を及ぼすのか?
SF19で争われる初シーズンのスーパーフォーミュラ、その初戦となる鈴鹿2&4はまったく展開が読めない新車デビューイヤーらしい激闘となりそうだ。