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『グッドワイフ』常盤貴子と唐沢寿明、それぞれの「正義」とは 最終回は見事な逆転劇に

2019年03月18日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

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 常盤貴子が主演を務める日曜劇場『グッドワイフ』(TBS系)が、3月17日に最終回を迎えた。


参考:『グッドワイフ』見事な伏線回収


 振り返れば、『グッドワイフ』は神山多田法律事務所の弁護士であり妻の蓮見杏子(常盤貴子)を中心とした弁護士チーム、贈収賄の容疑にかけられていた夫・壮一郎(唐沢寿明)の検察チーム、別々の物語が進行し、やがて混濁していった。弁護士チームの方では1話完結の裁判を、検察チームでは「壮一郎は本当に賄賂を受け取っていたのか」という焦点から、南原次郎(三遊亭円楽)という壮一郎を罠に貶めた根本の汚職政治家の存在、“裏切り者”として影を忍ばせていた壮一郎の元部下であり検事の佐々木達也(滝藤賢一)と、どんどん視聴者の注目は移っていく。


 そして、最終回「最後の審判」のポイントは、多田征大(小泉孝太郎)への嫉妬に狂った壮一郎とその疑いを晴らそうとする杏子の対立。つまり、「妻 VS 夫」という構図であり、「弁護士VS 検事」という2つのチームは、皮肉にも最終回にて裁判所で混じり合うことになったというわけだ。


 結末から述べると、多田への贈収賄の容疑による裁判は隠れみのとして検察内部の注目を仰ぐもので、壮一郎の本当の狙いは次長検事・御手洗直人(中村育二)の裁判官の癒着にあった。投身自殺をした佐々木は、最後に尊敬する壮一郎に強い検察をつくることを期待し亡くなっていった。御手洗は佐々木の忠誠心をも利用し、賄賂に手を染めていたのだ。「私はつくりますよ。とてつもなく強い検察をね」と御手洗に宣言する壮一郎の逆転劇は見事。振り返れば、第9話で検事正に昇任した壮一郎の、「悪しき習慣まで継承しないように精進しますよ」という御手洗への言葉はある種このラストへの予告であったのだろう。


 壮一郎は御手洗を連行することで、弁護士としての多田への警告、そして杏子への夫としての信用の回復も同時に成し遂げている。一部始終を見ていた杏子は呆気にとられた顔で笑みを浮かべ、「すごい策略家で、すごく不器用な人なんでしょうね」とつぶやく。第3話にて「子どもたちは大丈夫か?」という杏子への一言で自身の立場を有利に進めた壮一郎の策略家としての顔を思い出した。


 「最後の審判」というタイトルは、壮一郎の検事としての正義でもあり、杏子がどのような未来を選ぶかという選択に対する意味もある。杏子が取った未来は「もういい妻をやめる」というもの。円香みちる(水原希子)との一度だけの過ちを許すこともできるが、過去は二度と変えられない。「自分の気持ちからは、自分だけは逃げられないから」と杏子は壮一郎に告げ、楽しいこともつらいこともあったこれまでの17年間という過去から、新しい道を歩みだす。戸籍上、夫と妻という立場ではなくとも、変わらずに父と母という立場で子ども達と過ごすことができることを、蓮見家が食卓を囲むシーンが提示している。以前、多田が杏子に「もう別の未来を行けばいい」と話したことがあったが、また皮肉にもその言葉が最終回を暗示する答えになっており、決して過去を変えることはできない多田の弁護士としての今後も示していたように思える。


 『グッドワイフ』の主人公は蓮見杏子であるが、同時に壮一郎も検事としての正義を貫く、もう一人の主人公であった。妻という目線、立場を今の現代に提示しながら、次々と視聴者の目を欺いていく、見事なドラマであった。 (文=渡辺彰浩)