普段は厳しい表情で、近寄りがたい雰囲気のヘルムート・マルコ博士(レッドブルのモータースポーツコンサルタント)。しかし、マックス・フェルスタッペンがF1開幕戦オーストラリアGPでいきなり初表彰台に上がった直後の彼は、上機嫌の固まりだった。
──開幕戦でいきなり、3位表彰台を獲得しました。
マルコ博士:そう。そしてホンダと組んだ最初のレースでね。ホンダはこの週末まったくトラブルフリーで、レースでもスタートからチェッカーまで精確無比の働きをしてくれた。最後はオーバーテイクボタンを効かせて(ルイス)ハミルトンを抜くつもりだったが、それはかなわなかった。それだけが残念だよ。開幕戦を終えて、レースでは十分に戦えることがわかった。しかし予選では、メルセデスに対して大きな差を付けられてしまっている。そこはこれから一生懸命、縮めていかないといけない。
ーホンダに対する信頼は、いっそう強くなりましたか?
マルコ博士:言うまでもないね。この表彰台はホンダにとって、2008年以来の達成だ。そのことをみなさんはご存知だったかな。その事実はホンダだけでなく、われわれにも大きな喜びだよ。ホンダは信頼性だけでなく、パワー面でも大きく進化している。とはいえ、まだメルセデスに総合力でかなわないのは事実だし、今後はチーム側が車体面でいっそう向上していかないといけない。
──今日のフェルスタッペンとピエール・ガスリーについてはどうでしたか?
マルコ博士:マックスについては、素晴らしいのひと言だね。特に(セバスチャン)ベッテルを一瞬で抜き去ったあのドライビングは賞賛しかない。ピエールはチーム側の問題で、あんなグリッドからスタートさせることになってしまった。このサーキットであそこから這い上がるのは、決して簡単なことじゃない。
──表彰台は予想していましたか?
マルコ博士:もちろん。簡単ではないと思っていたがね。実際、(バルテリ)ボッタスとの差は、非常に大きい。
──今季の目標として、「5勝」を掲げています。それは今も変わっていませんか?
マルコ博士:当然だ。しかも、5勝はあくまで最低ラインだよ(笑)。
──次戦バーレーンは、レッドブル・ホンダの初優勝が期待できるのでは?
マルコ博士:ここと違って、よりオーソドックスなサーキットだしね。しかも、エンジンパワーにも不安はない。最高の結果を期待したいが、今はとにかく1戦1戦ベストを尽くしていくよ。
──バーレーンに行く前に、再び来日の予定はありますか?
マルコ博士:先週、行ったばかりじゃないか。ホンダのエンジニアたちは何をすべきか自分たちで十分わかっている。われわれが行く必要はないよ(笑)
■エイドリアン・ニューウェイ「いいスタートを切れたことは間違いない」
一方、チーフテクニカルオフィサーであるエイドリアン・ニューウェイも、名うてのインタビュー嫌いで知られている(本当は優しい人柄なのだが、とにかくシャイなのだ)。しかもモゴモゴと口ごもるために、何を言っているのか理解できないことが多い。しかし表彰台の下で捕まえたニューウェイは、短いながらも珍しく雄弁に、そして滑舌良く質問に答えてくれた。
──開幕戦表彰台おめでとうございます。
ニューウェイ:ありがとう。
──この結果は、レース前から予想していましたか?
ニューウェイ:表彰台に上がれるんじゃないかと期待していたし、ある程度の手応えはあった。しかし、メルセデスは予想以上に強かったね。
──一方のフェラーリは、ウインターテストで見せた速さが完全に影を潜めていました。
ニューウェイ:たしかに、バルセロナの速さはまったく発揮できていなかった。しかしそれはあくまで、このサーキット特有の現象だった可能性が高い。去年もそうだったしね。
──とはいえ、レースではタイヤに対して非常に負荷が高いマシンという印象でした。
ニューウェイ:そう。レースではその傾向はあるかもしれない。
──あなたの作った車体と、ホンダ製パワーユニットのパッケージには、今のところ満足していますか。
ニューウェイ:とんでもない。まだまだだ。完全な満足感を私はこれまで得たことがない。とはいえ、いいスタートを切れたことは間違いないね。