いよいよ、F1開幕戦オーストラリアGPの決勝レースがスタートする。このレースは2019年シーズンの1戦目という以外に、もうひとつ今までなかったある出来事がスタートする重要な一戦となる。それはファステストラップポイントの復活だ。
ファステストラップポイントは、1950年から59年まで導入されていたが、その後は消滅。今回60年ぶりに復活した。
ファステストラップポイント導入に関しては、いまだに賛否はあるものの、導入されたからには狙いに行くと答えるのは、メルセデスのレースストラテジストのジェームス・バレスだ。
「1回のファステストラップポイントで得られるポイントは1点だが、年間で21回のチャンスがある。チャンピオンシップを考えると、決して無視はできない」
では、どのようにして狙いに行くのか。バレスは次のように分析する。
「まず、燃料が軽くなった最後のスティントで狙うことになるだろう。タイヤのデグラデーション(劣化)が大きい場合は、タイヤを交換した直後が狙い目だが、今年のタイヤはどのサーキットでもそれほどデグラデーションが大きくはないと予想されるので、スティントの最後に狙いに行くことになるだろう」
■フリーピットストップできるドライバーが最有力か
ファステストラップポイントを獲得できるのは、トップ10のドライバーだけなので、ファステストラップを獲得するためだけに、燃料が軽くなったレース終盤にピットインしてタイヤを新品に変えるとというドライバーはいないだろう。
ただし、バレスは「トップ10内を走行しているドライバーでも、ファステストラップを獲得するために、燃料が軽くなったレース終盤にピットインしてタイヤを新品に変えるドライバーが出てくる可能性はある」と指摘する。
それは、前車との差がオーバーテイクできるほど接近しておらず、かつ1つ後ろのポジションのドライバーとの差がピットストップのロスタイム以上あり、いわゆる「フリーピットストップ(ピットストップしても順位が落ちない)」の権利を持っている場合だ。
そこで要注意となるドライバーは、優勝争いをしているドライバーより、トップ3チームで形成する第1集団の最後尾を走っているドライバーだ。メルセデス、フェラーリ、レッドブル・ホンダの3チームの中で、最後方のドライバーと第2集団との差が20秒以上あれば、そのドライバーはピットインして、新品タイヤに交換して、ファイナルラップにファステストラップを狙う可能性がある。
そこで過去5年間のオーストラリアGPのファステストラップ獲得者を調べてみると、そのドライバーは以下の通りだった。
2018年 ダニエル・リカルド (レッドブル)
2017年 キミ・ライコネン (フェラーリ)
2016年 ダニエル・リカルド (レッドブル)
2015年 ルイス・ハミルトン (メルセデス)
2014年 ニコ・ロズベルグ (メルセデス)
2014年と15年のメルセデスは他を圧倒していたので、優勝争いをしていてもファステストラップを取れたが、16年以降は必ずしも優勝争いをしていたドライバーではない者が獲得していることがわかる。前後との差がある第1集団の最後方のドライバーは、たとえピットインしてタイヤを新品に変えなくとも、タイヤを温存できるので、レース終盤に良いラップを刻むことができる。
今年のオーストラリアGPでその可能性が高いのは、予選4番手のマックス・フェルスタッペンか、5番手のシャルル・ルクレールあたりだろう。もちろん、予選で3番手のフェラーリ以下に対してコンマ5秒以上の大差をつけたメルセデスが、タイヤの状態が良くないレース終盤でもファステストラップを記録可能性もある。
ファステストラップを賭けた、もうひとつの戦いにも注目したい。