「店長」や「課長」など、「役職」はある意味、昇進の目標である。任される責任が増えるが、その分報酬にも跳ね返る……はずだが、実際は違うようだ。企業口コミサイト「キャリコネ」には、仕事量と責任が増えても給料に反映されない「名ばかり店長」に関する口コミが寄せられている。
「名ばかり店長」という言葉は「日本マクドナルド事件」で広まった。ファストフード店「マクドナルド」の店長が、労基法上の「管理監督者」として扱われて時間外労働の割増賃金が支払われなかったことを受け、訴えを起こしたものだ。
2008年の判決では、店長は「管理監督者に該当しない」として、未払いの残業代の請求を認める判決が出された。しかし、裁判と判決から10年経っても、「名ばかり管理職問題」は未だに根絶していない。
「会社は実態を把握しながら対応しない。監査が入ったら確実に労基法に引っかかる」
「劣悪。『名ばかり店長問題』があり、会社は実態を把握しながらも対応を考えていない。監査が入った場合確実に労働基準法に引っかかる」(店長、20代後半、男性、年収306万円)
「あくまでもメーカーの子会社なので出世はほぼ不可能。名ばかり課長や名ばかり店長と言う名の、役職はヒラ社員で名前だけ課長の人がたくさんいます」(ルートセールス、30代後半、男性、正社員、年収480万円)
「主任になると時間外手当が出なくなるので、忙しい部署の社員はすぐに主任となります。名ばかり店長のようなシステムになってしまっています」(総務、30代前半、女性、正社員、年収300万円)
「店長」や「課長」、「主任」という肩書きは名ばかりで、残業代や時間外手当がつかないという口コミが寄せられた。仕事量と責任だけ増えて給料は変わらない「名ばかり」の役職者が、現場で無理せざるを得ない状況に陥っている。
労働基準法が定める「管理監督者」は、経営と一体的な立場と考えられるため、時間外労働や休日労働をしても割増賃金は支払われない。しかし、企業が「店長」や「主任」を「管理職」と定めたとしても、その「管理職」が労基法の「管理監督者」に当てはまる訳ではない。管理監督者の判断は行政通達によって定められているため、役職があることと管理監督者であることは一緒ではないのだ。
企業は管理職を置くなら、適切な裁量と見合った報酬を支払うべきだ。肩書だけ立派、肩書と仕事量だけ膨大で、賃金はほぼ変わらないなどの待遇では、働く側のモチベーションも下がってしまう。
「漫画を読んだり喋ってばかり」肩書と実力が釣り合わない「名ばかり」タイプも迷惑
一方で、肩書きにあぐらをかいて仕事をしない「名ばかり店長」も存在する。
「店長は基本的にレジに出ず、事務所での仕事。気付けば漫画を読んでいたり、スタッフとしゃべってばかりです。他人に厳しく自分に甘いグータラな名ばかり店長が多く、営業所内でも評判はよくありません」(店長、20代後半、男性、正社員、年収280万円)
「大きなクレームが発生しても店舗クラス以上の社員は表にでてこない。名ばかり店長が大多数。末端の仕事のウェイトが増えていく」(店長、30代前半、男性、正社員、年収430万円)
自分に甘く他人に厳しい店長や、クレーム対応をせず仕事を増やす店長など、責任を果たしていない上司に悩む声が寄せられた。こうした上司は「現場のお荷物」的存在だが、役職だけは「名ばかり」で良い地位にいるため、部下の負担が増える一方だ。実力の伴わない「名ばかり店長」こそ、報酬を見直す必要がある。
不当に「管理職」を押し付けられている「名ばかり店長」と、役職に見合っていない「名ばかり店長」。どちらも是正の余地は大きい。
※調査ワード 「名ばかり店長」