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中嶋一貴「簡単なレースに見えたかもしれませんが……」。トヨタ、WECセブリングで今季5度目の1-2飾る

2019年03月17日 07:11  AUTOSPORT web

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セブリングの表彰台の頂点に立ったセバスチャン・ブエミ、フェルナンド・アロンソ、中嶋一貴
3月15日、アメリカ・フロリダ州のセブリングで2018/2019年WEC世界耐久選手権第6戦セブリング1000マイルの決勝レースが行われ、TOYOTA GAZOO Racingはセバスチャン・ブエミ、中嶋一貴、フェルナンド・アロンソ組8号車トヨタTS050ハイブリッドと、マイク・コンウェイ、小林可夢偉、ホセ-マリア・ロペス組7号車トヨタTS050ハイブリッドが今季5回目となるワン・ツー・フィニッシュを飾った。
 
 TOYOTA GAZOO Racingにとって初めて臨むセブリングでの戦いは現地15日16時にスタートが切られると、前日の予選でフロントロウを独占した8号車と7号車を先頭に全33台のマシンがバンピーな1コーナーに飛び込んでいった。
 
 ポールシッターの8号車はブエミがスタートドライバーを務め、まずはチームメイトのロペス駆る7号車を引き連れてレースをリードする。2台の差はおおむね3~5秒で推移していくなか、スタートから2時間を経過しようかというところで、ライバルチームのひとつであるSMPレーシングの17号車BRエンジニアリングBR1・AERがクラッシュ。これによりフルコースイエローが導入され、まもなくセーフティカー(SC)ランへと変わった。
 
 約15分に渡ったSCランからの再開後は、ブエミからアロンソに変わった8号車とロペスから可夢偉へとバトンをつないだ7号車による首位争い第2ラウンドが繰り広げられる。そのバトルは一貴対コンウェイのバトルを経て、再びブエミとロペスの優勝争いへとつながっていく。

 そうしたなかでも、8号車トヨタのクルーは後ろからつねにプレッシャーを受ける立場でありながら、ほぼ完璧なレース運びをみせ、レース最終盤の雨にも冷静に対処しながら最後はLMP2カーのクラッシュの影響で導入されたSCランの下でトップチェッカーを受けた。
 
 8号車にとってこの勝利は2018年6月のル・マン24時間以来のものとなり、これによってブエミ、一貴、アロンソ組はチームメイトに対する選手権ポイントのリードを5点から15点に拡げている。

■アロンソ「ポールを獲れたことで、決勝に向けて自信を持てた」

「大変なレースだっただけに、セブリングで勝つことができて最高の気分です。外からは簡単なレースに見えたかも知れませんが、僕は最初の担当走行時からコース上の混雑に苦しめられていました」と語るのは、8号車の最終スティントを任された一貴。

「最後に再びステアリングを握ったとき、やるべきことは分かっていました。リスクを負うことなく、着実に最後まで走り切るということです。ドライコンディションでのクルマには満足していましたが、終盤、雨が降ってきてからは大変でした」

「視界が悪く、路面グリップも信じられないほど低下しました。それだけに、無事にチェッカーフラッグを受けられて本当に良かったです」

 また、チームメイトのブエミも久々の優勝を喜ぶ。

「長く待ち望んだ表彰台の真ん中に再び上がることができて本当にうれしいよ。コース上のトラフィックを処理するのが本当に難しいレースだった」

「僕の最初の担当走行時は、後ろから追ってくるホセ(-マリア・ロペス)がとても速く、首位をキープするために懸命にプッシュしなくてはならなかった。7号車との差を広げたかったけれど、彼らが(他クラスのクルマと)接触をするまでは10秒以内の僅差での争いだったんだ」

 決勝前日のヒーローとなったアロンソは「我々にとって良い一日となった」と率直なコメントした。
 
「この非常に難しいサーキットでのレースへ向け、僕たちは多くのテストをこなし準備をしてきた。(そのため)好感触でレースウイークを迎え、特にポールポジションを獲得できたことで力強いレースができるという自信も持つことができたんだ」

「僕らはリスクを最小限に抑えながらレースをリードし続けた。最後の雨はとても心配だったけど、カズキがあの難コンディションのなかで素晴らしい仕事をしてくれたね。そのおかげで伝統のコースで勝利を挙げることができたよ」

 一方、中盤まで8号車との接戦を繰り広げていた7号車は、レーススタートから4時間過ぎ、ロペスのドライブ中にGTEアマクラスのマシンと交錯してしまう。軽い接触と瞬間的に縁石を跨いだことで、エンジンカバーおよび車両後部のボディパーツの交換を余儀なくされた。
 
 この緊急ピットインの影響で、7号車はトップを行く8号車トヨタからラップダウンに。結局この差はチェッカーまで埋まらず富士、上海に続く3連勝を目指したコンウェイ、可夢偉、ロペス組は総合2位でのフィニッシュとなった。
 
 なお、7号車は可夢偉のドライブで決勝中の歴代ファステストラップとなる1分41秒800を記録。前日、アロンソが記録した予選ファステストラップと並んでセブリングにその名を残している。また、TOYOTA GAZOO Racingは今回の勝利で13カ月に及ぶスーパーシーズンで5度目のワン・ツー・フィニッシュを達成した。

■「GTカーの動きを読み誤った」と7号車のロペス

「8号車は勝利に値する素晴らしい走りでした。我々も懸命に首位を争いましたが、接触でその権利を失ってしまいました」と語った可夢偉。

「後半戦、逆転が難しいことは分かっていましたが、最後までプッシュを続けました。諦めないことが肝心です」

「チームとしては、ワン・ツー・フィニッシュを果たせたことは最高の結果です。これはチームクルーみんなの努力によるもので、本当に感謝しています」

 可夢偉と同様に、この結果はチームにとっては良い結果と述べたコンウェイは次のようにレースを振り返る。
 
「僕たちはレースを通してプッシュを続け、特に前半戦では良い首位争いができたと思う。そのなかでは何度も接触ぎりぎりでの走りを強いられたよ」

「今日の結果はちょっと残念だけど、(選手権は)まだスパとル・マンが残っているので、プッシュし続けるよ」

 スタートスティントとレース中盤を担当したロペスは「(優勝した)8号車に祝福を送りたいと思う。7号車のチームメイトの走りも素晴らしかった」とコメント。
 
「僕自身は、コース上の混雑に苦しみ、とても厳しいレースになってしまった。首位を走るセブ(ブエミ)を捕まえようとアタックしている最中に、GTカーの動きを読み違えてしまったんだ」

「不運だったけれど、レースを戦っていればこういうことはたまに起こりえる。幸いにも車両のダメージはそれほど大きくなく、2位でレースを完走することができた。この厳しいレースを2位でフィニッシュできたことに満足しているよ」

 2台が8時間のレースでともに1500km以上を走破し、見事ワン・ツー・フィニッシュを果たしたことについて、村田久武TMG社長兼チーム代表は次のようにコメントした。
 
「TOYOTA GAZOO Racing、そしてトヨタTS050ハイブリッドが初開催のセブリング1000マイルレースで優勝できて大変うれしいです」

「初めてのセブリングは挑戦し甲斐のサーキットでしたが、すべてのチームメンバーがこの地でのレースに適応し、懸命に努力をしてきたことが報われました」

「最高の結果を成し遂げたチームとともに、このフロリダに集まってくれた多くの情熱的な耐久レースファンのみなさまに感謝します」

 トヨタが臨むWECスーパーシーズンの次戦第7戦は5月2~4日、チームの拠点であるドイツ・ケルンとそう離れていないベルギーのスパ・フランコルシャンで6時間レースとして行われる。