WEC世界耐久選手権は3月15日、アメリカ・フロリダ州のセブリング・インターナショナル・サーキットで第6戦セブリング1000マイルの決勝レースが行われ、TOYOTA GAZOO Racingの8号車トヨタTS050ハイブリッド(セバスチャン・ブエミ/中嶋一貴/フェルナンド・アロンソ組)が総合優勝を飾った。
通常の6時間レースよりも長い1000マイル(約1600km)、最大8時間で争われるWEC“スーパーシーズン”第6戦は晴天の下、気温30度、路面温度50度という厳しいコンディションのなかでスタートを迎えた。
そのなかで、まずはセバスチャン・ブエミがドライブする8号車トヨタが僚友7号車のホセ-マリア・ロペスをリードしていき、その後方にレベリオン・レーシングの3号車レベリオンR13・ギブソンと17号車、11号車BRエンジニアリングBR1・AERのSMPレーシング勢が続いていく。
4周目、スタートからペースの上がらなかったレベリオン・レーシング1号車R13に早くもギヤボックストラブルが発生し、緊急ピットインすることに。チームはレース序盤に戦線を離脱することとなったが、約8分の作業を経てレースに送り出した。
スタートから35分、周回数にして20周目に2番手の7号車トヨタが1回目のピットインに入ると、翌21周にはトップの8号車トヨタもピットへ。さらにLMP1プライベーター勢も続々とルーティンピットインを行っていく。
コース復帰後は8号車トヨタが僚友7号車とのリードを4秒から7秒に広げ、3番手は3号車レベリオンに代わりステファン・サラザン駆るSMPの17号車BR1というオーダーになった。
40周目、5番手走行中だったSMPレーシングの11号車BR1の右リヤタイヤがバースト。これとほぼ同じタイミングでトップ2のトヨタ勢がピットに入り、7号車はロペスから小林可夢偉に変わると同時にリヤエンドカウルを交換していく。一方、8号車トヨタはブエミから予選最速タイムをマークしたアロンソに代わってピットアウトした。両者の差は9秒ほどだったが、その後、1時間30分経過時点では12秒に広がっている。
スタートから1時間52分、レースの約4分の1に迫ったところで3番手を走っていたSMP17号車BR1のイゴール・オルジェフがクラッシュを喫し、このレース初めてのフルコースイエロー(FCY)が導入される。このFCYは約10分後にセーフティカー(SC)ランに移行した。
シリーズの公式雨雲レーダーでは、ちょうどこのタイミングで雨が降り出す予報が出されていたが、実際には雨粒はほとんど落ちてこず。なお、2時間経過時点で天候は曇り。気温27度、路面温度は31度まで下がった。
71周目、コースサイドバリアの修復が終わりSCが退去、8号車トヨタのアロンソを先頭にレースが再開された。その後、2時間50分を迎えたところで、パストール・マルドナドのSMPレーシング、31号車オレカ07が最終コーナーでウォールにヒット。リヤウイングを落としFCYを誘発した。このアクシデントで導入された2回目のFCYは3時間目に解除となっている。
■1500km超走行も、1000マイルまでわずかに届かず
スタートから3時間を過ぎ、両車ともに3人目のドライバーを送り出したトヨタ勢は、ここにきて8号車の一貴と7号車を駆るコンウェイの差が詰まり3秒差に。膠着状態で迎えたスタートから4時間のタイミングで、レースは268周レースから8時間のタイムレースに移行した。
134周目、8号車トヨタのすぐ背後にまで迫った7号車トヨタがピットインし、コンウェイからロペスに交代。翌周には8号車も一貴からブエミに代わり、ふたたび接近戦が展開されていく。
しかし、145周目に7号車トヨタが緊急ピットインする。国際映像のリプレイによるとピットインの直前、7号車トヨタはGTEカーとの接触を避けるために縁石のさらに内側を走ったことでマシンにダメージを負ったようで、リヤカウルを開けての修復作業によってトップから2周遅れとなってしまった。
これで楽になった8号車トヨタは、レース時間残り30分あまりから降り出した雨の影響で最終盤に2度のタイヤ交換を強いられることにはなったが、中盤以降もブエミからアロンソ、さらに一貴へとドライバー交代しながらコンスタントに走行を継続していく。
そして最後はロイック・デュバル駆るTDSレーシングの28号車オレカ07・ギブソンのクラッシュによって出動した2度目のSCランの下で、スタートから一度もトップを譲ることなくトップチェッカーを受けた。
トラブルで遅れを取った7号車トヨタも豪雨に見舞われた終盤は無理をせず1周遅れの2位でフィニッシュした。これによりトヨタはWEC“スーパーシーズン”中5度目となるワン・ツー・フィニッシュを飾っている。
総合3位には、残り1時間を切る間際にトラブルを抱えてピットインした3号車レベリオンに代わって、表彰台圏内に浮上したSMPの11号車BR1が入った。ドライバーのひとりであるブレンドン・ハートレーは、自身のWEC復帰戦を見事ポディウムフィニッシュで飾っている。一方で、僚友17号車のセルゲイ・シロトキンは搭乗前のクラッシュにより戦わずしてレースを終えた。
なお、トップフィニッシュした8号車トヨタは今回、253周をラップ。その走行距離は約1522kmに上ったが1000マイル(約1600km)までは僅かに届かなかった。
LMP2クラスではウィル・スティーブンス駆るジャッキー・チェン・DCレーシングの37号車オレカ07・ギブソンがオープニングラップでトップを奪う一方で、ポールシッターの38号車オレカは4周目にシグナテック・アルピーヌ・マットムートの36号車アルピーヌA470・ギブソンに交わされ、後退してしまう。さらに38号車オレカはマシントラブルを抱えガレージに戻されてしまった。
そんななか、37号車オレカは他を寄せ付けない強さをみせてクラス優勝を果たす。クラス2位はニラコ・ラピエール擁する36号車アルピーヌがつけ、3位には2度にわたってリヤウイング交換をしながら上位に復帰したドラゴンスピードの31号車が入った。
■接触に泣いたポルシェとフェラーリ
シボレーを加え6メーカーの対決となったLM-GTEプロクラスは、1回目のピットタイミングを終えてフォード・チップ・ガナッシ・チームUKの67号車フォードGTがトップに躍り出る。
母国優勝を飾りたい67号車フォードは4時間経過時も依然としてトップを走っていたが、ピットでのアンセーフリリースをとられピットストップに10秒を加算するペナルティを受けてしまう。それでも、レース終盤までBMWチームMTEKの81号車BMW M8 GTEとトップ争いを続けていた67号車フォードだったが、最終盤に降り出した雨に対応すべくレインタイヤに交換したピット作業でポルシェGTチームの91号車ポルシェ911 RSRに逆転を許してしまった。
ピットアウト後はまもなくセーフティカーランが導入され、そのままチェッカーとなったことから91号車ポルシェの逆転優勝が決定。81号車BMWが2位となり、67号車フォードGTはクラス3位に終わった。
クリアウォーター・レーシングの決勝不出場により計8台で争われたLM-GTEアマクラスでは、2番手スタートとなったチーム・プロジェクト1の56号車ポルシェ911 RSRが序盤戦をリードしていく。
しかし、1回目のSC退去後、トップを走る56号車ポルシェにジャンカルロ・フィジケラ駆るスピリット・オブ・レースの54号車フェラーリが迫ると、2台はターン1で接触。ヨルグ・ベルグマイスターの56号車ポルシェは、タイヤバリアまで達するスピンを喫し5番手に順位を下げてしまった。なお、その後54号車フェラーリにはストップ&ゴーペナルティが課せられいる。
そんなペナルティをよそに、ポールシッターながら序盤は順位を落としていたデンプシー・プロトン・レーシングの77号車ポルシェ911 RSRがレース中盤からじりじりと順位を上げ、終盤にはトップに返り咲く。最後は充分なリードを保ってSCランを迎え、ポール・トゥ・ウインを飾った。
クラス2位、3位には接触し、互いにに順位を下げた54号車フェラーリと56号車ポルシェが並んだ。石川資章率いるMRレーシングの70号車フェラーリ488 GTEはクラス5位となっている。
終盤戦を迎えているWECスーパーシーズンの次戦第7戦スパ6時間は5月2~4日、ベルギーのスパ・フランコルシャンで開催される。