2019年03月15日 11:21 リアルサウンド
モーニング娘。は1998年1月にシングル『モーニングコーヒー』でメジャーデビュー。その記念すべき20周年イヤーも無事終え、その人気はいまだに健在だ。
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なぜ、モー娘。はかくも長く愛され続けるのか?
いうまでもなく、そこにはプロデューサー・つんく♂らによる楽曲のクオリティの高さ、定評のある歌、ダンスの卓越したパフォーマンス力がある。それはまず基本だ。
だが同時にモー娘。には、女性アイドルの新しいありかたを切り拓いたパイオニアとしての一面がある。モー娘。というアイドルグループを唯一無二と言える存在にしている理由はそこにもあるだろう。ここではその観点から二つのポイントに注目してみたい。
まずひとつは、テレビアイドルの新たな継承者としての側面である。
昭和の女性アイドルは、オーディション番組と切っても切り離せない。1970年代、森昌子、桜田淳子、山口百恵の「花の中三トリオ」やピンク・レディーなどを輩出した『スター誕生!』(日本テレビ系)に始まり、1980年代のおニャン子クラブまで、女性アイドルはテレビのなかのオーディションから生まれていた。
平成に入り、しばらく途切れていたその伝統を大きく復活させたのが、モー娘。を生んだ『ASAYAN』(テレビ東京系)である。
オーディション番組の最大の良さは、デビューするまでのプロセスが見られることだ。受験者が必死で頑張る姿、努力して成長する姿を見ることで視聴者は自然に感情移入し、ファンになる。そうした昭和から変わることのないアイドルの本質的魅力をモー娘。は受け継いでいた。
だが同時に、モー娘。は新しくもあった。
よく知られているように、モー娘。のオリジナルメンバーはオーディションの合格者ではない。「シャ乱Q女性ロックボーカリストオーディション」で最終選考まで残ったものの、優勝はできなかった落選組5人を集めて結成された。さらにはメジャーデビューのための条件として、まずインディーズでデビューし、CDを5日間で5万枚手売りすることを課された。それはある意味オーディションの一環であるとともに、AKB48以降平成の女性アイドルグループでおなじみになったファン参加型のドキュメンタリー性、そして物語性の原点でもある。
そしてそのような展開のなかで、モー娘。のメンバーたちには「やり切る精神」も自ずと培われたように思える。彼女たちは、「可愛い」ともてはやされるだけのアイドルとは違っていた。
アイドルグループが長く続くためには、センターを務める中心的メンバーだけでなく、すべてのメンバーが持ち味を発揮して輝きを放つことが大切だ。それはまさに、『うたばん』(TBS系)の保田圭で私たちが目の当たりにしたことだった。司会の石橋貴明の強烈ないじりを受けながら、保田圭はそれを自身のチャンスと積極的にとらえ、期待されるキャラを見事にやり切った。だからこそ、彼女のブレイクはあった。
こうしたメンバーの自主性尊重の精神は、もうひとつの注目点であるモー娘。独自の卒業/加入のスタイルにも生かされている。
キャンディーズの解散を思い出せばわかるように、昭和のアイドルにおいてメンバーとグループは一体であり、運命を共にするものだった。それはそれで美しく潔い。しかしかと言って無理にグループを長続きさせようとすれば、メンバー個々の意思を抑えつけてしまうことにもなりかねなかった。
そのジレンマを解消したのが、モー娘。独自の柔軟な卒業/加入のスタイルである。
卒業の決断は、メンバー個々の意思に委ねられる。だがそのことは、グループの存続とは切り離して考える。だからメンバーの人数も固定されない。新メンバーは補充ではなく、あくまで加入である。
卒業とは無関係に2期メンバー3人が加入したり、福田明日香が卒業した後の追加メンバーオーディションの合格者が当初2名の予定(実際は後藤真希1名)であったりしたのは、その証しだ。プロデューサー・つんく♂のその時々のグループ構想もあっただろうが、もう一方で元々メンバーの自主性を尊重する姿勢だったことが、そのようなかたちになったのに違いない。
こうしてモー娘。において、おそらく初めて女性アイドルグループが続いていく仕組みが確立された。
おニャン子クラブにも似たようなところはあったが、『夕やけニャンニャン』(フジテレビ)というテレビ番組がベースであった分、グループが長く持続していくには不安定だった。それに対し、モー娘。はテレビアイドルである一方、ライブ活動にも軸足を置いたことによってグループが長く存続するための安定した基盤づくりに成功した。
その結果、ファンにとって特定のメンバーではなくグループそのものを応援するいわゆる「箱推し」の比重も増した。メンバーの卒業や加入があるたびに、ファンはさまざまな思いを抱きつつ歴史の目撃者となってモー娘。という「箱」を見守り、支え続ける。その卒業/加入のスタイルは、アイドルグループを応援する喜びをより深いものにしてくれたと言えるだろう。(太田省一)