仕事をする上で、給料はモチベーションを生む要因の1つだ。社会保険や厚生年金が天引きされるため、実際に手にできる額は総支給額より低い。
手取りがあまりに低すぎると、生活の質低下やゆとりの喪失を引き起こしかねない。企業口コミサイト「キャリコネ」には、手取り額に関する不満が寄せられている。
「残業を60時間から80時間して初めてまともな手取りになる」
「内勤だと正社員でも手取り15~17万が限界。外回りで10年働いても19万前後が限界。本当に給料が低い」(サポートエンジニア20代後半、男性、正社員、年収250万円)
「仕事がないのに残業をする、いわゆる生活残業を繰り返し、手取り給与を増やす社員が大勢いる。逆にいえば、それをしないと生活できるだけの手取り給与をもらえない」(プリセールス、20代後半、男性、正社員、年収500万円)
「残業を60時間から80時間して初めて、まともな手取りになる。閑散期など残業が出来ない状況になると、手取りは格段に下がる。月ベースでの手取りが不安定」(物流サービス、30代前半、男性、正社員、年収400万円)
「アラサーの給料にしては低い。残業がなければ手取りが14万円くらいになってしまう」(カウンターセールス、20代前半、女性、正社員、年収310万円)
正社員でも手取り額が14~17万円、10年勤務しても19万円前後など、手取り20万円を切っているという切実な声が寄せられた。独身で実家暮らしならなんとかやりくりできても、一人暮らしや家庭のある身では生活が厳しいレベルだ。残業をたくさんすることで手取り額を増やしているという口コミもあるが、閑散期などを考えると毎月一定量の残業ができるわけもない。月ごとに手取り額が大きく違うと、生活の見通しも立てづらいだろう。
仕事をせず会社に残っているだけの「生活残業」は、本来ならあってはならない。しかし、そうまでしないと生活できる水準の手取りを得られない厳しい現実がある。基本給や手取り額が少ないゆえに、残業に頼らざるを得ないのだ。
「働き方改革」で生まれた成果は給料や昇給で労働者に還元を
残業頼みの人々にとって、「働き方改革」の波は、さらに厳しい状況をもたらしそうだ。
「残業で毎月の手取りを増やしていくイメージです。これから働き方改革で残業が減れば手取りが当然減るので生活は苦しくなると思われます」(その他、30代後半、男性、正社員、年収580万円)
「法令厳守やワークライフバランスが重要視されており、時間だけでいうとゆとりのある生活が送れます。しかし給料体系はというと、契約社員から正社員になるにつれ福利厚生の充実と引き換えに天引きの部分も増えるので、大幅な給与の増大もありません。なにゆえ、頑張って昇格してきた人たちが手取りを下げられるのか分りませんが、ここが社員の士気の低さを生み出している原因かもしれません」(システムエンジニア、30代後半、男性、正社員、年収570万円)
長時間労働の是正や、ワークライフバランスの充実のため、企業が取り組んでいる「働き方改革」。今年4月に施行される「働き方改革関連法」では、時間外労働に上限規制が設けられる。
これまで残業することでなんとか手取り額を増やしていた人々も、長時間働くことができなくなる。つまり収入を増やす方法が絶たれるのだ。時間にはゆとりができるかもしれないが、給料を補う手立てがなくなってしまう。
企業はまず基本給の底上げを行い、残業をしなくても生活できるだけの給料を支払うべきだ。勤続年数が増えるにつれ、天引きされる保険や年金額も増えていく。そのため、微々たる昇給では手取りが減ってしまう。勤続10年以上でも手取りが20万円に届かない状況では、社員のモチベーションも下がる。「働き方改革」で得られた成果は、給料や昇給という形で労働者に還元するべきだ。
※調査ワード「手取り」