トップへ

キラキラネームに生まれて 「王子様」から改名、今までの人生をリセット

2019年03月14日 10:11  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

記事画像

「王子様」と名付けられた、山梨県在住の高校3年の赤池肇(はじめ)さん(18)。3月5日に甲府家庭裁判所に改名を申し立てたところ、変更が認められ、名前が変わったばかりだ。


【関連記事:「キラキラネーム」1位は「唯愛(いちか)」…受験でマイナス評価されても仕方ない?】



奇抜で珍しい「キラキラネーム」に悩んできた赤池さん。ツイッターで「名前変更の許可が下りましたァー!!!!!!!!」と改名を公表すると、13万RTされ、大反響を呼んだ。







赤池さんは子どもに名前をつける時、「お爺さんやお婆さんになってもずっと同じ名前であることをよく考えて欲しい」と話す。



「小さい頃は可愛いかもしれないけど、大人になってからも同じ名前だと悲惨。名前はずっとついて回るものです」。



●友人からのあだ名は「王子」

自分の名前は「人名じゃなくて役職名」。他の人との違いに気づいたのは小学校低学年の頃だった。



友人からはいつも「王子」と呼ばれていた。「環境に恵まれていた」こともあり、友人からバカにされたり、名前が原因でいじめられたりすることはなかった。



しかし、名前を何度も聞き返されたり、本当に本名ですかと確認されたりすることは日常茶飯事だった。学生証で証明することに慣れてはいたものの、毎回説明するのはわずらわしく、何より嫌だった。



高校に入学後、クラスで1対1で自己紹介をする機会があった。「王子様」という名前を言った途端、同級生の女子生徒が吹き出したこともある。



「怒ってもしょうがないし、俺でも笑うと思います。まあいっかなという感じでした」



●由来は「私にとっての王子様」

名前をつけたのは、母だった。「王子様」という名前を記した出生届は、父の知らないうちに出されていたという。



事前に母に改名することを報告した際、初めて「王子様」の由来が「私にとって唯一無二の存在で、私にとっての王子様」であったことを説明された。



「知ったこっちゃないという感じでした。でも、もう名前を変えることを決めていたので、特に何も思いませんでしたね」



2018年の冬くらいから、次の名前を考え始めた。まさと、あらた、あやとーー。友人から色々な名前案をもらったが、知り合いの僧侶にもらった「はじめ」を第一候補に決めた。



漢字は「倫理の教科書で印象に残っていた」というマルクス経済学者、河上肇から取り、「今までの人生をリセットし、新しく始めていく」という思いを込めた。



改名後、父親や高校の友人は「よかったじゃん」「おめでとう」と祝福してくれた。付き合いの長い友達は「俺たちのこれまでがなくなっちゃうみたい」と寂しがっていたという。



●「名は体を表す」ではない

「名は体を表す」。こんな言葉があるが、赤池さんは「王子様」という名前で生活してきたからこそ、「名前はあてにならない」と感じている。「結局、全ては自分次第だと思います」。この3月に高校を卒業し、4月からは大学への進学が決まっている。



でも、就職活動や社会人になってからは、「王子様」という名前のせいで、色眼鏡で見られたり、第一印象で侮られたりするのではないか。そんな思いもあった。中学3年の時には、名前を変えることを決めていたという。



赤池さんはツイッターで「15歳から名前は自分だけで変えられるのでキラキラネームの十字架を背負った同士のみんなも希望を捨てないでくれ」と呼びかける。



●改名には2パターンある

浮田美穂弁護士によると、改名には2パターンある。まず、名の漢字(文字表記)は変更せずに、読み方だけを変える場合だ。



戸籍には、氏名の漢字(文字表記)が記載されており、読み仮名については記載されていないため、読み方を変えることは自由にできる。しかし、住民票には読み仮名が記載されている自治体が多いので、市町村役場で「住民票ふりがな修正申出書」を届け出ることで、必要な手続は完了する。



例えば、「主将」と書いて「きゃぷてん」と読むようなキラキラネームの場合、読み仮名を「かずまさ」などと変えることは簡単にできる。



次に、赤池さんのように、名前の漢字を変更する場合だ。



この場合は、家庭裁判所の許可が必要になる。戸籍法には、正当な事由によって、戸籍の名を変更するには、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならないとされている(107条の2)。



赤池さんは、氏名変更手続きは「高校生でもできるくらい簡単だった」と振り返る。インターネットで調べ、家庭裁判所の職員も丁寧に教えてくれたという。



●実際の手続きは?

改名の実際の手続を簡単に紹介すると、住所地(住民票がある市区町村)を管轄する家庭裁判所に以下の書類を提出し、申し立てる。



・名の変更許可申立書・発行から3か月以内の戸籍謄本(全部事項証明書)
・名の変更が必要な理由を証明する資料(具体的には、通称を使用して出した年賀状など)



変更許可申立書では、理由を選ぶ欄がある。赤池さんは「奇妙な名である」という理由で申し立てをした。



気になる費用だが、申立書に貼付する収入印紙800円分と連絡用の郵便切手が数枚のみ。 改名を希望する申立人が未成年者であっても、15歳以上であれば親の代理や同意なしに申立てを行うことができる。



今回、テレビや新聞など多数の取材を受けた赤池さん。「同じように悩んでいる人の励みになればいいなと思っています。名前は変えられるし、こんなに明るくなれますよ」