2019年03月12日 18:51 弁護士ドットコム
医学部入試で女子や多浪生を不利に扱う得点操作があった問題を受け、25大学の医学生でつくる「全日本医学生自治会連合」(医学連)は、全国の医学生を対象にこの問題や差別に関するアンケートを実施。3月12日、東京・霞が関の厚生労働省で会見し中間報告を行った。
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ある女子医学生(6年)は医局説明会で、教員(医師)から「女性は結婚すれば働かなくていいから楽だよね」などと言われたとの回答を寄せた。会見で医学連のメンバーは「外との交流が少なく、医学界では差別意識がいまなお残っている」と指摘した。
アンケートは、全国に5万人以上いる医学生すべてを対象に、2018年11月から書面やWEBで行った。これまでに50大学の計2186人(女子890人、男子1257人、無回答39人)から回答があり、3月末まで引き続き受け付ける。回答は集計し、厚労省や文部科学省に提出して事態改善を求めていく。
東京医科大をはじめ複数の大学で発覚した入試不正について「大学が差別を容認しているようなもので許されない」(男子・2年)との回答があった一方、「男性と同じくらい働くことが無理なのは事実で、正直仕方のないこと」(女子・6年)という声もあった。
医学部入試の面接で、結婚や出産、育児などライフイベントに関する質問をされたことがあるかも聞いたところ、全体の14%の医学生が「ある」と回答。ある女子医学生(2年)は「結婚するつもりはあるのか。出産、育児で退職するつもりか」と質問されたという。
入学後についても聞くと、約200人が性別や年齢を理由に嫌な思いを経験したと回答した。ある女子医学生(5年)は「女子は外科に興味がないだろ、と言われ手術見学の機会を与えられなかったことがあった」。外科は、診療科のなかでも特に激務だと言われている。
現役や1浪で合格した医学生より年齢を重ねている医学生に対しては、根拠のない非難をする教員がいるとも報告された。ある男子医学生(4年)は「お前みたいなちょっと頭のいいだけの年寄りは臨床現場では役に立たない」と言われたという。
アンケートに寄せられた声の多くは、差別への憤りの声だったが、なかにはこうした差別を「当然のもの」として、なかば諦めているかのような意見もあったという。ある女子医学生(5年)は「その程度の嫌なことなど社会では当たり前なので耐性をもつべき」とした。
なぜ差別的な言葉を受けるのか。医学連の中央執行委員会委員長で宮崎大医学部5年の山下さくらさんは「外との交流が少なく、一般からの声が聞こえにくい現状がある。差別意識がいまなお残っているのは、狭い世界で医学を学んでいることが背景にある」と述べた。 (弁護士ドットコムニュース)