山口県萩市は2019年度から、世界のトップ50大学の合格者に、入学金や授業料の一部を支給する「萩市グローバル50奨学金事業」を始める。
萩市教育政策課の担当者によると対象は、高校3年間萩市に住所があり、市内の高校に全期間在籍して卒業した人で、かつ、大学入学年度の4月1日時点で20歳以下の人。高校入学前に萩市に転入し市内の高校に通学した人は対象になるが、高校の途中から転入してきた人は制度の対象外だ。
基準にするランキングは、「THE世界大学ランキング」、「QS世界大学ランキング」、「世界大学学術ランキング」の3つ。このうちの1つでトップ50に入っていれば給付金の対象になる。QS世界大学ランキング2019年版を見ると1位はマサチューセッツ工科大学、2位はスタンフォード大学、3位はハーバード大学。日本国内からは、23位に東京大学、35位に京都大学が入っている。
卒業後のUターン義務付けもなし「広報誌に寄稿などの形で貢献して」
制度は、幕末に長州藩からイギリスに留学し、日本の近代化に貢献した伊藤博文ら「長州五傑」を意識して作成した。幕末の志士たちのように、萩市から世界に通用する人材を育成するのが狙いだ。支給金額は、現在の国公立大学の入学金と授業料を参考に決めた。入学金相当額として30万円、授業料や生活費用として在学1年あたり130万円、合計550万円の支給を予定している。
市によると、給付を受けた人に対し、「大学卒業後に市に戻ってくるよう義務付けることは考えていない」という。優秀な人材が海外や他の自治体に流出してしまう可能性に心配はないのか聞くと、
「なんらかの形で貢献してもらえればと思っています。例えば大学在学時や卒業後の仕事の経験を講演会で話してもらうとか、市の広報誌への寄稿、市のイベントに参加してもらうことなどを検討しています」
という回答だった。
今年春の大学入試では、市内から京都大学の合格者が出ているため、担当者は「国内の大学については見込みがある」と話す。海外大学への進学実績は、同課が調べた範囲ではこれまでいたかどうか分からなかったそうだが、
「今まで生徒の皆さんは、こういう進路を目標として立てることがなかったと思う。これを機に、高い志を持つことのきっかけづくりになれば」
と話していた。