2019年のMotoGP開幕戦カタールGPの最終ラップは、2018年の再現のようだった。最終コーナーの立ち上がりで先頭はアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ミッション・ウィノウ・ドゥカティ)、その背後でドヴィツィオーゾのスリップに入るマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)。両者の勝敗を分けたのは、わずか0.023秒だった。
開幕戦カタールGPは、終盤まで“トップ集団”が形成されないまま進んだ。実質トップ争いを展開していたのはドヴィツィオーゾとマルケス、そしてアレックス・リンス(チーム・スズキ・エクスター)。しかしこの3名が抜け出していたわけではなく、4番手以下のライダーがトップ3のすぐ後ろに追随していた。
そんなレース展開で、最後に優勝争いを繰り広げたのは、2018年チャンピオンのマルケスと、ランキング2位を獲得したドヴィツィオーゾ。接戦のトップ争いではあったが、ドヴィツィオーゾが周回数の多くをリードしていた。
「僕の戦略は、タイヤを温存することだった。これは難しかったね。僕はレースの大半をリードしていたし、ライバルの状況を把握できなかった」
一方のマルケスは、ドヴィツィオーゾとの最後の勝負を迎えるまで、ややポジションに浮き沈みがあった。リンスに何度か2番手を奪われ、さらに後方の追撃を受けるシーンも見せている。
「オーバーテイクするにはかなりプッシュしなければならなくて、そうするとラインを維持できずはらんでしまった。だから、レース終盤のために、走りを抑えるようにしたんだ」
最終ラップ、コントロールラインを最初に通過したのは、トップに浮上したマルケスだった。そのマルケスを1コーナーの飛び込みで交わしたドヴィツィオーゾ。10コーナーではマルケスがドヴィツィオーゾのインにマシンをねじ込むが、オーバーテイクには至らない。
ドヴィツィオーゾが先頭で最終コーナーを迎え、マルケスが再びドヴィツィオーゾのインにつける。だが、ラインを外したマルケスは立ち上がりでドヴィツィオーゾの先行を許す。
コーナーの進入で激しく攻めるブレーキングが持ち味のマルケスだが、この日のブレーキングについて、「いくつか変更をしたんだけど、そうしたらいつものようにブレーキングができなくなってしまった」と語った。
わずか0.023秒差で2位フィニッシュとなったマルケス。それでも「ここではいつも苦戦するから、20ポイント獲得できてうれしい」と前向きだ。
一方、最後にマルケスの猛追を振り切り優勝を飾ったドヴィツィオーゾは「マルケスはいつものように限界まで攻めていた」とライバルとの戦いを振り返り、開幕戦の勝利にもすきを見せる様子はない。
「(今回は)僕たちのマシンの強みである加速とトップスピードを活用できた。でもまだ、コーナリングスピードを改善する必要がある。今年は速いライバルがたくさんいる。あまり得意ではないサーキットでも、ポイントを失うのは最小限にとどめないとね」
開幕戦ではドヴィツィオーゾに軍配が上がった。2019年シーズン、このふたりの優勝争いが何度、繰り広げられることになるのだろう。