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『THE GUILTY/ギルティ』限定上映イベントレポート ヘッドセット装着で主人公を追体験!

2019年03月11日 15:41  リアルサウンド

リアルサウンド

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 デンマーク発の新感覚サスペンス映画『THE GUILTY/ギルティ』の体感型限定上映イベントが、ヒューマントラストシネマ渋谷にて3月8日に開催された。本稿ではその衝撃的な映画体験をレポートする。


参考:イヤホンをつけながら映画を観る?


 本作は、「電話からの声と音だけで、誘拐事件を解決する」というシンプルな設定ながらも、予測不可能な展開で評判を呼び、第34回サンダンス映画祭では、『search/サーチ』(NEXT部門)と並び、観客賞(ワールド・シネマ・ドラマ部門)を受賞。その後も第47回ロッテルダム国際映画祭観客賞、ユース審査員賞、第44回シアトル国際映画祭監督賞などに加え、世界中の映画祭で観客賞を獲得。第91回アカデミー賞外国語映画賞デンマーク代表にも選出された。


 日本の公開初日である2月22日は平日でありながら、全国的に100名以上を動員する回が多数あり、都心部では夜の回は満席となった。2016年11月にリニューアルした映画館・新宿武蔵野館ではリニューアル以降の初日動員、興収記録を塗り替える大ヒットスタートを記録している。


 本作のあらすじは、緊急通報指令室のオペレーターであるアスガー・ホルム(ヤコブ・セーダーグレン)に、今まさに誘拐されているという女性からの通報が入り、アスガーが車の発車音、女性の怯える声、犯人の息遣いといった“電話”から聞こえてくる音だけを手がかりに、“見えない”事件を解決するというもの。


 今回、実施された『THE GUILTY/ギルティ』体感型限定上映イベントでは、「電話からの声と音だけで、誘拐事件を解決する」という本作の設定を活かし、ソニー独自の音導管設計を採用した、耳をふさがず周囲の音を自然に聞きながら音楽や音声も同時に楽しめるオープンイヤーステレオヘッドセット「STH40D」を装着して映画を鑑賞。ヘッドセットからは、オペレーターである主人公アスガーが繋いでいる電話の音声のみが出力され、まるで自分自身が映画の主人公と同じ緊急指令室のオペレーターになったような気分で映画を楽しむことができる。まさにこのイヤホンだからこそ、今回の限定上映イベントが成り立つのだ。


 来場者の中には、オーディオが好きで本イベントに訪れた人もおり、「映画の設定とイヤホンとの相性に驚きました。外の音とイヤホンの音、どちらか聞きづらかったりするのかなと思っていたんですが、そんなこともなくちゃんと一つ一つの音に集中できました。普通の劇場では気がつかないだろう音も聞こえたので、実際に自分で電話を受けているみたいでした」と興奮を隠せない様子だった。


 誘拐され怯える女性の震える声、何者かの怒号、パトカーのサイレン……イヤホンによってより細かい音を聞くことができ、想像力が刺激される。まさに自分が主人公アスガーになった気分だ。映画館という閉鎖的な空間だからこその緊張感と集中力で、イヤホンから聞こえる音や声から様々な想像や推理ができる。


 映画館より配信で観ることの方が多いという女性は、「劇場でイヤホンをつけるからこそ、ずっと映画に集中できました! なかなか家だとスマホを見てしまったり意識が散ってしまいがちですが、イヤホンから聞こえる音で電話の向こうに起きていることを想像してしまって、私の方まで焦ってしまいました(笑)」と語った。電話越しに聞こえる繊細な物音に思わず息を呑んでしまうが、これも普通の映画館上映や自宅で観たりするのとは違う、本イベントならではの没入感があってこそだろう。


 『search/サーチ』『カメラを止めるな!』といった2018年の話題作にも繋がる作風でもある本作。映画としてもカメラワークは安定し、劇伴もないため、観客は否応無しに本作から聞こえてくる電話越しの音に耳をすませる。観る人によって、想像している電話主の表情や風景が異なるのも面白いポイントだ。『search/サーチ』『カメラを止めるな!』も観たという女性の映画ファンは、「音だけだからこそ想像できる余地がいっぱいあり、面白かったです! イヤホン付き上映で観るのと、普通に観るのではまた違うと思うので、通常の劇場上映でも観てみたいです」と『THE GUILTY/ギルティ』ならではの設定に夢中の様子だった。


 今回の上映会は興行では初となる試みで、次回の3月15日を逃すと次があるかは分からない。気になる方はぜひ体験してみてほしい。
(取材・文=島田怜於)