2019年シーズンの開幕を目前に控えた3月9日、ホンダはシーズンのキックオフイベントを開催した。そこで、ホンダのパワーユニットを搭載して2年目を迎えるレッドブル・トロロッソ・ホンダのフランツ・トスト代表に、2019年型マシン『STR14』の開発や一新されたドライバーラインアップなどについて、独占取材を行った。
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──2019年のトロロッソのマシン『STR14』は、基本的には(元テクニカルディレクターの)ジェームズ・キーのコンセプトを基に開発されたものですよね。
「いや、違うよ」
──そうなんですか? 2019年マシンの開発が始まった時点では、キーはまだチームに在籍していたはずですが。
「キーがチームを去ったのは、確か7月か8月だったよね。それ以降、クルマはずいぶん変わった」
「まずは新車の開発工程をはっきりさせようか。(STR14の)コンセプトが決まったのは、2月か3月だった。その時点ではキーはまだ在籍中で、開発を主導していた。しかしその後、どんどんクルマは変わっていった。レッドブル・テクノロジーとの開発協力が、本決まりになったからね。その結果、彼らと共同開発する部分、あるいは開発を委託する部分がたくさん出てきたんだ」
──マシンのリヤ部分は、『RB15』(レッドブルの2019年型マシン)とかなり似た印象です。
「正確には、2018年のレッドブルのマシン『RB14』と似ている。というのもギヤボックス、リヤサスペンションはレッドブル・テクノロジーからもらっていて、それはまさにRB14のものだからだ。レッドブルの開発陣は、いつも期限ギリギリまで設計を粘るからね。それで我々はとても待ち切れず、新設計パーツの恩恵にあずかれなかったというわけだ」
──それに対してマシンのフロント部分は、完全にトロロッソのオリジナルですね。
「というより、リヤサスペンションやギヤボックス以外は、完全にトロロッソのデザインだ。モノコック、前後のウイング、ノーズ、フロアなどは、チームが独自に設計すべきと決められているから」
──2018年型に比べてかなり高い完成度のマシンになっていると思いますが、テストでも非常に好調でした。
「今のところはとても満足してるし、シーズンに向けてもますます期待が高まってる。約4300km、950周前後走れたしね。十分に準備ができただけでなく、新パッケージへの強い手応えも感じてる。ふたりのドライバーも非常に良くやってくれたし、スタッフの仕事ぶりも実に満足の行くものだった」
──とはいえ今季の中団グループは、2018年シーズン以上の接戦が予想されます。
「そうなんだ。どこも本当に速くなってる」
──そんななか、トロロッソ・ホンダはどんな戦いができそうだと予想してますか。
「とにかく中団のほぼ全チームの力が、非常に拮抗している。そういう状況だと、レース週末のコンディションにいかにセッティングを合わせられるかで、勝負が決まるだろうね。あるレースでは初日から速さを見せられても、違う週末はそうではないという展開が、昨年以上に起きるかもしれない」
──コース特性やコンディションが変わってしまうと、安定した速さを発揮できないのが、2018年のトロロッソの弱点のひとつでした。
「2019年はその辺りも十分考慮して、準備を重ねてる。大丈夫と信じてるよ。ただ毎レース、100分の1秒単位の争いになることはまちがいない。そうなると、本当にほんのちょっとしたミスや詰めの甘さで、大きく順位を落としかねない。とにかく厳しい戦いになることは、覚悟しているよ」
──Q3進出も、そう簡単ではない?
「そうならないことを、心から望んでる。最低でも1台は、コンスタントにトップ10の速さを見せたい。それが2019年シーズンの目標のひとつだね」
■チーム復帰のクビアトに心打たれる「速さも技術も錆ついていなかった」
──2018年、ガスリーは初めてF1にフル参戦し、わずか1年でレッドブル・ホンダに移籍しました。(レッドブルのクリスチャン)ホーナー代表も、トロロッソからの昇格が早すぎたかもしれない旨の発言をしていました。テストでのクラッシュを目の当たりにして、トスト代表もその危惧を共有しますか。
「いや、そうは思わない。下位カテゴリーでのピエールの実績を見れば、彼の優秀さは明らかでね。ほとんどの選手権でチャンピオンになり、1年だけ参戦したスーパーフォーミュラでは非常に印象深い走りを披露した」
「そこから見えるのは、非常に優れた適応力と困難に打ち勝つメンタルの強さだ。F1フル参戦1年目の2018年も、実に素晴らしかった。だからこそレッドブルも、抜てきを決めたわけだしね。決して、早すぎるとは思わないよ」
──ダニール・クビアトもF1復帰後すぐに、ブランクを感じさせない走りを見せてくれました。
「すでに去年の最終戦後のタイヤテストの際にも、実にいい走りを見せてくれた。それも走り出して、すぐにね。その日の朝に久しぶりにダニールに会って『またこれから一緒にやっていくんだ』と思った時には、なんだかグッときてしまった。その私の思いに、彼は十分以上に応えてくれたよ。昔ながらの速さ、技術的なフィードバックの正確さ、そしてタイヤマネージメントの巧みさ。なにも錆びついていなかった」
「一方のアレックス(アルボン)も、うれしい驚きだった。ほとんどF1経験がなかったのに、あれだけの安定した速さを発揮してくれたからね」