私が展開する現場の管理職向け研修の中で、年上部下に対する以下のような悩みが出されることが非常に多くなってきています。
「昔世話になった人が自分の部下にいて、どう接していいのかわからないんです」
「昨日まで上司だった方が、今月から自分の部下になってしまい、相手の経験値の方が高いだけに非常にやりにくいんです」
「年上の方は、言うこと聞かないし、モチベーションが低くて、周りにあまりいい影響を及ぼしていないんです。どうしたものか……」
皆さんはいかがでしょうか? 今回は、このような年上の部下の方々に、どのように接していくと組織がうまく回っていくのかについて話を進めてまいります。(文:働きがい創造研究所社長 田岡英明)
「定年までの消化試合」と考えている年上部下は承認欲求を刺激してみる
人を動かす基本は「相手を知る」ということです。年上部下の言動から相手のタイプと思いを読み解いていきましょう!
といっても会話の中から読み解くのは至難の業。いくつかのパターンと接し方を以下に提示してまいりますので、参考にしてください。
パターン(1):昔取った杵柄絶対主義タイプ
このタイプの方々は、「私の経験はまだまだ通用するし、若い人にも負けていない!」と思っています。年下の上司のあなたからすると「時代をわかってない」と思ってしまいがちです。しかし、このタイプの方々には高いモチベーションがあります。そのモチベーションをうまく組織に活かしていただきましょう。ポイントは強みの発掘と時代を理解いただくリハビリテーションです。
パターン(2):消化試合的仕事姿勢タイプ
このタイプの方々は、「もうあと少しで定年なんだから、そっとしておいて」なんて思っています。年下の上司のあなたからすると「若い人よりは給料もらってんだから、その分は働いてよ」とか「周りに悪い影響与えないでほしいな~」と思ってしまいます。
このタイプの方々の一番の問題点はセルフイメージが低いことです。セルフイメージは自身の価値観・興味・能力から出来上がっていますので、これまでの社会人人生を話してもらうタイミングを作っていきましょう。その中で見つけた強みを現場で活かせるように仕事をお願いしていくのです。年をとっても承認欲求が高いのが人間の本質です。
パターン(3):気遣いすぎコミュニケーションタイプ
このタイプの方々は、もともと管理職経験者であることが多く「俺が言いすぎると、若い上司もやりにくいだろうから黙っておこう」と思っています。しかし、これでは宝の持ち腐れになってしまいます。
組織にある使えるリソースはしっかり活用し、組織成果に結び付けていくのが管理職の役割です。年上部下のこれまで培ってきたノウハウを現場でしっかり活かしてもらうために、明確な役割と期待を伝えていきましょう。
以上、3つのタイプをお話させていただきました。このパターンばかりではないですが、現場の年上部下の方を理解する上で参考にしてください。
"3つの尊"をベースに行動し、世代継承性を果たしてもらう!
年上部下への接し方のベースは" 3つの尊"とお伝えしております。
1つ目は、尊敬です。年配の方としてこれまで培ってこられた経験に対し、しっかり尊敬の念を抱きましょう。
2つ目は、尊重です。人の行動には必ず意図があります。その意図に裏付けられた言動を尊重してまいりましょう。
3つ目は、尊厳です。上司としての尊厳をしっかり守りましょう。組織の中で、伝えるべきことは時として厳しくもしっかり伝えていきましょう。
キャリア開発論の世界では、人の入社してからの流れとして
"自分が動く"(若手時代)→"人を動かす"(中堅時代)→"組織を動かす"(管理職世代)→"世代継承性を果たす"(年上部下世代)
といったものがあります。まさに年上部下の方々は"世代継承性を果たす"タイミングにいます。これまでの社会人人生で培ってきたものを惜しみなく現場に継承していただきましょう!そこには遠慮は不要です!
【著者プロフィール】田岡 英明
働きがい創造研究所 取締役社長/Feel Works エグゼクティブコンサルタント
1968年、東京都出身。1992年に山之内製薬(現在のアステラス製薬)入社。全社最年少のリーダーとして年上から女性まで多様な部下のマネジメントに携わる。傾聴面談を主体としたマネジメント手法により、組織の成果拡大を達成する。2014年に株式会社FeelWorks入社し、企業の管理職向けのマネジメント研修や、若手・中堅向けのマインドアップ研修などに携わる。2017年に株式会社働きがい創造研究所を設立し、取締役社長に就任。