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NCT 127、初の日本ツアーで作り上げた純度の高いエンターテインメント 札幌公演を振り返る

2019年03月10日 15:21  リアルサウンド

リアルサウンド

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 NCT 127が、3月2日と3日に全国ツアー『NCT 127 1st Tour ‘NEO CITY : JAPAN – The Origin’』札幌公演を開催した。昨年春にはShowcaseツアーを行った彼らだが、本格的な日本ライブツアーは今回が初。“NEO CITY”というタイトルの通り、良い意味でファンを裏切る驚きと進化を遂げたNCT 127のモードを示す、圧倒的なステージを見せてくれた。


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 今回のツアーは全国7都市のホール&アリーナを巡り、ファイナルのさいたまスーパーアリーナ公演まで全14公演が行われる。当然のことながらチケットは軒並みソールドアウト。現在、チケットを手にいれるチャンスは、さいたまスーパーアリーナの追加公演のみとなった。本稿では、ツアーのちょうど真ん中にあたる7公演目、3月2日札幌公演をレポートしたい。


 初ツアーにしてプロフェッショナルとしての貫禄さえ感じさせるパフォーマンスでファンを魅了したNCT 127。プロジェクションマッピングでボックスに投影された映像演出の中から白いスモークが溢れると、実験から新しい生命体が生まれたかのごとく、白をベースにした衣装に身を包んだメンバーが威風堂々と登場すると会場から割れんばかりの歓声が上がった。代表曲「Cherry Bomb」では、ポジションが目まぐるしく変わる、且つ複雑な振り付けであるにもかかわらず、一糸乱れぬダンスで観客の視線を釘づけに。個人にスポットがあたるパートでも、一人一人がダイナミックな振付で内なる情熱を客席へとぶつける。集合体としての強靭さ、個としてのしなやかさを見せていくと、そんな熱気に当てられたファンも一心不乱に歓声を上げ、どんどんNCT 127の虜となっていく様子だった。


 オープニング映像やステージ演出には近未来SF(分かりやすく言えば『AKIRA』や『ブレードランナー』)を想起させるモチーフが印象的に使われており、楽曲、ダンス、VJ、舞台装置といった要素を完璧に融合。これはグループ名の頭文字となっている“Neo Culture Technology”というコンセプトに根ざした、彼らならではの持ち味のひとつだ。一度見ただけではすべてを把握しきれない情報量の多さだが、どこを切り取っても純度の高いエンターテインメント。その本領が遺憾なく発揮されるステージは、ファンとの触れ合いに重きを置いたShowcaseでは見られなかった光景だ。


 「Limitless」は日本語Ver.で披露。テヨン、マークらの独特のフロウと、ジェヒョンやドヨンらによる伸びやかボーカルの対比が特徴的な一曲だ。〈この声がこの歌が響き合う この世界で 僕らは一つになる〉そんな歌詞と呼応するように、観客からは「NCT」という掛け声が。本公演でそういうシーンは度々見られたが、NCT 127とファンが新しい世界を作り上げていくことこそ、彼らが追求する今回のツアーの本質なのかもしれない。


 打って変わってMCでは、メンバー同士の愛らしいやりとりやファンへの感謝の言葉に頬が緩む。ホールツアーの特権とも言えるのか、彼らも「みなさんの表情がよく見えます!」と客席との距離の近さにご満悦の様子だった。しかし、そんな微笑ましいシーンとは打って変わり、「Regular」ではフォーマルスタイルに衣装チェンジ。妖艶な楽曲も相まって大人の色気を醸し出すメンバーに酔いしれ、恍惚とした表情でため息を漏らしたファンもいたのではないだろうか。


 優しい歌声で観客の心に寄り添ったバラード、90’sダンスカルチャーを取り込んだ演出、ポールが複雑に絡んだジャングルジムのようなステージセットでより立体的なパフォーマンスを見せるシーケンスなど、楽曲の振り幅はもちろん、総合的な演出力でNCT 127の世界を多角的に表現していくメンバー。ライブも後半に差し迫る中、盛り上がりのピークを見せたのは彼らのデビュー曲「Fire Truck」。緩急のある複雑なメロディや重めのビートで揺さぶりにかかるも、ここぞとばかりの大きな掛け声でついていくファンの様子が印象的だった。


 K-POPグループの中でも、海外のトレンドを汲み取った先鋭的な楽曲を作り続けているNCT 127。MVなどのクリエイションを含め、時にはファンに難解と捉えられることもあるが、ライブの音響やライティングなどと交わることで音楽が持つ快楽性が一気に増幅されていく。これがさいたまスーパーアリーナという大舞台へ移ることによって、一体どんなエンターテインメントへと変貌していくのだろうか。さいたまスーパーアリーナ公演では、日本デビューから現在までの集大成、そしてさらなる進化の一端を見せてくれるに違いない。(泉夏音)