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レッドブルの“先兵”として中団チームで存在感を放つトロロッソ・ホンダ/F1合同テスト総括(5)

2019年03月09日 13:41  AUTOSPORT web

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F1合同テストで大きなトラブルもなく積極的な走行を重ねたトロロッソ・ホンダ
スペイン・バルセロナで行われたF1プレシーズンが終了し、3月15日~17日に開幕するF1オーストラリアGPを待つのみとなった。連日のテストを終え各チームの仕上がり具合が気になるところ。果たして昨シーズンから勢力図は変わるだろうか。今回はピックアップした5チームの展望を紹介していく。第5回はトロロッソ・ホンダだ。
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 レッドブルへのパワーユニット供給開始の影に隠れがちだが、ホンダはトロロッソとのパートナーシップ2年目のシーズンを迎える。優勝や表彰台争いに間違いなく絡まねばならないレッドブルのコンビとはまた別に、トロロッソは中団グループのなかでどれだけの存在感を示せるか。

 好材料は多い。ホンダは2019年のパワーユニット(PU/エンジン)供給体制について、レッドブルによりリソースを注ぐのではなく、2チームの間に「プライオリティはつけない」としている。つまりトロロッソにとっては、単独供給だった2018年同様の手厚いサポートが保証されるということだ。

 また昨年のトロロッソは、マクラーレンからの引き抜きにあい、シーズンの大半をテクニカルディレクター不在で過ごした。だが、離脱時期が早かったことで、逆に2019年の新車「STR14」の開発への影響は少なくて済んだ。テクニカルディレクター後任は内部昇格とし、開発の継続性が途切れることはなかったからだ。


 ホンダPUとのパッケージングは新車でさらに洗練度を増し、冷却効率が高められた結果、空力的に重要なサイドポンツーンのコンパクト化が図られた。インテークダクトの周辺処理には、トレンドとなる“フェラーリ型”の作風が新たに採り入れられている。

 ノーズはキープコンセプトだが、フロントウイングはこれもフェラーリと同様にフラップの両端を下げてタイヤとの気流干渉を抑止する手法だ。また、“親チーム”のレッドブルもホンダ製パワーユニットを採用したことで、カウル内部の機械的パーツはかなり共有化ができたはずだ。

■積極的にパフォーマンスランを実施しホンダPUの性能を確認


 開幕前テストのトロロッソは、“グループ”のホンダとのコンビネーションのなかで、まさにレッドブルの先兵役を果たした。メルセデス、フェラーリ、レッドブルの3強チームの間には、もう何年もオフのテスト期間中の手の内隠しが横行。テスト終了ぎりぎりの段階まで、燃料を軽くしたパフォーマンスランを行なうことがない。

 だが中団に僅差でせめぎ合うチームともなれば、そんな余裕の構えではいられず、早い段階から自分たちの新車の立ち位置をつかむ必要がある。STR14は初回バルセロナテスト4日間の3日目でピレリのもっとも軟らかいC5タイヤを履いた走行を実施。ダニール・クビアトが同じくパフォーマンスランに挑んだアルファロメオのキミ・ライコネンを抑え、その日のトップタイムをマークした。

 これはレッドブルにとっても、ホンダPUのライバル他社に対する現状レベルを知る重要な指針となる。レッドブルは後日、予定していたテスト最終の2日間でこのパフォーマンスランの機会を逃すことになるのだが、トロロッソが先に対ライバルとの比較データを示してくれた。テストでのタイムは本番にそう当てにできるものではないにせよ、ホンダ側にとっても励みとなる1日となったはずだ。

 新人アレクサンダー・アルボンはテスト全8日間中の最速ラップで、1年のブランクがあったとはいえ豊富なF1キャリアを持つクビアトをしのいでいる。やや不安視されたドライバーラインナップも、他チームに決して見劣りするものではない。トロロッソは今年、激戦の中位グループのなかで先頭争いが可能な位置にあるだろう。