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関ジャニ∞「crystal」が描く、未来へ立ち向かう姿勢 変化見せることでグループは進化していく

2019年03月09日 08:01  リアルサウンド

リアルサウンド

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 関ジャニ∞が通算42作目となるシングル『crystal』を発売した。前作『ここに』から約6カ月ぶりのシングルである。


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 表題曲の「crystal」は、作詞を大西省吾と高木誠司が、作曲・編曲を大西省吾が担当している。大西省吾はクリエイター集団のagehaspringsに所属する作曲家で、関ジャニ∞では前作のカップリング曲「タカラモノ」で編曲を担当しているほか、多数の楽曲の編曲を担当してきた、グループにとってはゆかりのある存在だ。


 関ジャニ∞としては珍しいエレクトリックなタッチで、バンドサウンドと電子音が融合した曲調を採用しており、四つ打ちのリズムはダンスミュージック由来の印象で、サカナクションの「ミュージック」を彷彿とさせるような要素が散見されるが、2段階あるサビのうち後半部分の〈震えないで crystal〉以降ではサウンドにスケール感が増し、それまでの内省的な世界観からの脱出が図られる。2番以降で曲は大胆に展開し、1番とは作りの大きく変化した2番を終えるとシンセソロ後に落ちサビを経て、それまでのサビに変化を加えた大サビ、さらにDメロも登場する。こうした繰り返しの少ない構成によって、曲が進むに連れて主人公がある地点から遠くまで突き進んでいく印象を与えている。


 歌詞は、涙を連想させる“cry”とタイトルにもなっている“crystal”をかけ、〈ひと筋の光〉〈流した涙〉〈乱反射〉〈透明な光〉〈瞬いた光(ライト)〉など、共通したイメージを持つワードを散りばめることで視覚的な作品に仕上げている。初期の“がむしゃら”感は薄れ、今曲で歌われるのは、痛みを抱えながら歩んでいく少し大人になった男性像である。現実に打ちひしがられるような絶望感ではなく、出会いと別れを経験した主人公の、未来へと立ち向かう勇敢な姿勢が前面に打ち出されている。サウンドの変化と力強い歌詞によって、立ち止まることなく前へ進もうとする主人公を描き出した一曲だ。


 カップリング曲の「咲く、今。」は、ピアノが全面的に押し出されたバラード。作詞を松原さらり、作曲をオカダユータ、編曲を高慶”CO-K”卓史がそれぞれ担当している。ピアノの伴奏とギターの響きがセンチメンタルな情景を描く中、後半の切ないメロディが印象的で、いきものがかりやコブクロといった春ソングの定番アーティストを思い起こさせる作風だ。


 また、もうひとつのカップリング曲「月曜から御めかし」はアップテンポなロックナンバーで、作詞を錦戸亮、作曲を南田健吾、編曲をPeachが担当している。錦戸亮が作詞を務めるのは前作『ここに』収録のカップリング曲「All you need is laugh」や、アルバム『ジャム』収録の「Traffic」など、グループのディスコグラフィーには珍しくない。歪んだギターがメインの若さみなぎる青春パーティーロックだが、たまにロービットな電子音が施され、ポップな雰囲気を強めるよいアクセントとなっている。


 3曲を全体的に見ると爽やかな印象のシングルリリースで、重さや過剰さはない。その分クールで、果敢に前へ飛び出しているイメージがある。それを生み出しているのが先述したサウンド面と歌詞であろう。特に表題曲のサウンドはグループにとっては新鮮な響きで、それ自体が今回の作品で歌われている〈進みたいんだ〉というテーマに直結している。前作『ここに』は新体制後初のシングルだったもののサウンド面にグループの“らしさ”が表れていたが、今作は音にも言葉の面においてもじりじりと駒を進めている印象だ。


 長く続くグループは自身のイメージとどう付き合っていくのかが常に課題だが、こうした変化のさせ方を見せることで徐々に新しいグループへと進化していくのだろう。(荻原梓)