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【予習】「スパイダーバース」を100%楽しむために、知っておきたい4つのポイント

2019年03月08日 13:02  アニメ!アニメ!

アニメ!アニメ!

『スパイダーマン:スパイダーバース』
次元を超えてスパイダーマンたちが集結した世界を舞台に、主人公のマイルス少年が人として、スパイダーマンとして成長する姿を描くCGアニメーション映画『スパイダーマン:スパイダーバース』が、3月8日に劇場公開された。

すでに公開済みの海外では非常に評価が高く、世界興行収入が3億ドルを突破するほどの人気ぶり。
さらには、第91回アカデミー賞で長編アニメーション賞映画賞に輝いたことも記憶に新しい。

そんな前評判の高さを信じて、読者のみなさんにはダッシュで劇場に駆け込んでいただきたいところだが、スパイダーマンといえば誕生から50年以上が経過しているキャラクターだ。
その最新作ゆえに、本作も非常に情報量の多い内容に仕上がっている。

前知識無しでも充分楽しめる本作だが、本稿では知っていればさらに楽しめるように『スパイダーバース』の作品背景や豆知識を紹介! これから映画を観る方々の“予習編”としていただければ幸いだ。

■『スパイダーバース』の世界観

異次元との扉を開く実験がきっかけで、スパイダーマンたちがマイルスのいる次元に集結するという内容の本作だが、「なぜ複数のスパイダーマンが存在するのか?」と疑問に思った方も多いだろう。

そもそも、彼らが暮らすマーベルコミックの世界は、それぞれが多元宇宙(マルチバース)のひとつということになっている。
『アイアンマン』に始まり、現在も進行中の映画シリーズ「マーベル・シネマティック・ユニバース」の世界ならばEarth-199999……という風に、マーベル作品の世界には常に無数の平行世界が存在し、その中で様々なスパイダーマンが活動しているのだ。

ちなみに、マーベルコミックにおいては、本作の原案とみられる一大イベント『スパイダーバース』が2014年、2015年にかけて展開されていた。
こちらは登場キャラクターやマルチバースなどの基本部分に共通点はあるものの、ストーリーや設定は大きく異なり、映画との関連性は薄い。
そのため観るにあたって予習をする必要はないのだが、コミック内で描かれる総勢96名ものスパイダーマンの活躍は圧巻の一言! 邦訳版も刊行されているため、本作を観て興味を持った方にはぜひ読んでいただきたいところ。
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■魅力あふれるスパイダーマンたち
ここで、本作に登場するスパイダーマンたちを紹介したい。

スパイダーマン(マイルズ・モラレス)

まずは、主人公であるマイルズ・モラレス。彼はピーター・パーカー同様に蜘蛛に噛まれたことで能力を得、ピーターの死をきっかけにスパイダーマンを継ごうと奮闘する少年だ。
通常のスパイダーマンの力に加えて、透明化するカモフラージュという固有の能力を持っている。

スパイダーマン(ピーター・パーカー)

そんなマイルスと共に行動するのが、異次元からやってきた別のピーター・パーカー。我々の知る姿に最も近いスパイダーマンである。
彼は死んだピーターに代わってマイルスの師となっていくのだが、頼れる兄貴分というにはちょっとゆるい一面も……?

スパイダー・グウェン(グウェン・ステイシー)

女性スパイダーであるスパイダー・グウェン。グウェンの名を聞いて「おっ!」と思った方もいるかもしれない。
正体であるグウェン・ステイシーは、映画『アメイジング・スパイダーマン2』で描かれたように、正史ではベンおじさん同様に悲劇の死を迎えるキャラクターだ。
そんな彼女がスパイダーマンとして活躍し、夢の共演をすることも、マルチバースの懐の深さを象徴していると言えるだろう。

スパイダーマン・ノワール

ノワール調の世界からやってきたスパイダーマン・ノワール。
ハードボイルド過ぎる振る舞い、外見がマイルスたちの世界では非常に浮いており、一周回ってギャグに片足を突っ込みかけているところが魅力。

ペニー・パーカー&SP//dr

表情豊かなロボットSP//drを操る日系アメリカ人の少女、ペニー・パーカー。
日本アニメ風な世界からやってきており、そのデザイン、動きは我々の親しむアニメの世界にかなり寄せてきている。
予告編での登場時に日本で話題になったことを覚えている方も多いのではないだろうか。


マーベルキャラを擬獣化した世界からやってきたスパイダーハム。
カートゥーン調の世界からやってきており、マイルスたちの世界の常識は全く通じない!?

ヴィランたち

彼らと対峙するヴィランも、近年ではPS4ゲーム『スパイダーマン』やNetflixドラマ『デアデビル』でおなじみのキング・ピンを筆頭に、グリーンゴブリン、ドクター・オクトパスといった、おなじみの面々が登場する。その悪役ぶりにもぜひ注目していただきたい。

■全く新しいアニメーション

コミックの世界を体験させるために、極限までこだわり抜いた映像についても触れておきたい。

本作はCGアニメーションではあるものの、CGでレンダリングした映像のうえに手描きで作画、着彩を施すという特殊な工程で制作されている。
そのため従来の通常のCGアニメとは全く異なるルックの画面になっている。

また、予告を観てもわかる通り、各キャラクターのデザインにもそれぞれのルーツとなるコミックの画風が取り入れられており、アニメーションをさせる際にも、マイルスたちはあえてモーションブラー(※動く被写体を撮影した際に生じるブレ)をかけずにカクカクとした動きをさせている。
ペニー・パーカーはアニメ風のメリハリある動き……と言った風に、キャラごとに異なるアニメーション技法を用いているのだ。

また、CGアニメーターとして、日本人アニメーターの若杉遼が参加し、躍動感溢れる映像に貢献していることにも注目していただきたい。
全く違うデザイン、動きのキャラクターたちが同じ画面に違和感なく同居し、激しいアクションを繰り広げる本作は、観客を新たな境地へと導いてくれるはずだ。
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■鉄壁の主要スタッフ陣にも注目!
本作の監督を務めるのは、『シュレック』シリーズのスピンオフ『長ぐつをはいたネコ』や『ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!』に携わっていたボブ・ペルシケッティに、ギレルモ・デル・トロが製作総指揮を務めた『ガーディアンズ 伝説の勇者たち』の監督ピーター・ラムジー。
このふたりはこれまでアニメーター、ストーリーボードアーティストとして活躍していたことから、ビジュアルがキーとなる本作に起用されたのは納得の采配だ。
そんな中で異色なのが、『22ジャンプストリート』などで脚本を手がけ、アニメに携わるのは本作が初となるロドニー・ロスマン。

この3人がどんな化学反応を起こした結果、本作が生まれたのか。気になった方は、過去作を遡ってみるのもアリだろう。

そして、忘れてはならないのが、製作にフィル・ロード&クリス・ミラーの名があること。
本作同様ソニー・ピクチャーズ・アニメーションが手がけたアニメーション映画『くもりときどきミートボール』の監督・脚本に始まり、『21ジャンプストリート』(監督)、『ブリグズビー・ベア』(製作)といった実写映画から『LEGOムービー』(監督・脚本)と、携わる作品のほぼ全てが好評価を得ているヒットメーカーコンビだ。
『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』降板の後、本作で再び実力を証明したこのふたり。
観客を笑わせつつ、心に残るフックを盛り込むことも忘れない作風がスパイダーマンの世界にどう反映されているのか、ぜひその目で確かめてほしい。