スペイン・バルセロナで行われたF1プレシーズンが終了し、3月15日~17日に開幕するF1オーストラリアGPを待つのみとなった。連日のテストを終え各チームの仕上がり具合が気になるところ。果たして昨シーズンから勢力図は変わるだろうか。今回はピックアップした5チームの展望を紹介していく。第4回はルノーF1チームだ。
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昨年、この2019年に向けたドライバー市場で、一番のビッグサプライズだったのがダニエル・リカルドのルノー移籍だ。ここまでのキャリア7勝のすべてをともにしたレッドブルが強く残留を望んでいたにもかかわらず、彼は新天地を選んだ。
ルノーは2018年シーズン、ワークスチーム復帰3年目にして、メルセデス、フェラーリ、レッドブルの3強に次ぐ、コンストラクターズランキング4位を得た。順調な道のりにも見えるが、依然、上位3チームとの隔たりは大きい。
レッドブルとの比較論なら、昨季4勝(うちリカルドが2勝)を挙げた古巣に対し、ルノーは優勝どころか過去3年の表彰台すらもゼロだ。将来のチャンピオン候補に数えられて久しいリカルドが、あえてキャリアのステップダウンとも言える道を選択したことは、メルセデスやフェラーリ移籍の可能性が断たれていたにせよ、衝撃だった。
逆にルノーから言えば、チーム力強化にこれほど打ってつけの人材はない。速く、かつ勝てるレベルのマシンを知っている。若いスタッフたちが多い技術チームにとって、リカルドのフィードバックから学ぶものは多いはずだ。
また、リカルドの存在はニコ・ヒュルケンベルグにとっても大きな刺激だ。ドライビング能力は高く評価されつつも、ルノーが4チーム目の在籍、F1フル参戦8年にして最高位は4位、まだ1度の表彰台すらも立っていない。もしリカルドを破れば、自身が勝てるレベルにあることを証明できるのだ。
ルノーの新車『R.S.19』は、ノーズ周りの処理は2018年型を踏襲する一方、サイドポンツーンにはダクト前に整流翼を置いてコンパクト化を図るフェラーリ的手法を採り入れた。開幕前のテストではリカルドを抑えて、ヒュルケンベルグがチームのベストタイムをマーク。これはフェラーリとメルセデス勢に次ぐ、期間中の全体5番手だ。
■ロングランペースに課題があるルノーR.S.19
レッドブルはまともなタイムアタックを行なえなかったため、比較対象とはならないが、周回数でもメルセデスとフェラーリに続く3番手となる958周を稼いだ。
課題とされたパワーユニット(PU/エンジン)も、チームによれば「大幅に進化した」という。目標としたパワーアップの所期値は達成できた模様で、これはもう一方のユーザー、マクラーレンも好タイムを出していたことからも判る。信頼性も、深刻な問題は発生しなかった。ドライバーたちもこのパワーユニットを含めた新車への好印象を語り、オフの一連の流れからはすこぶるスムースな開発進展にも見える。
ただR.S.19は、ロングランのペースは決して評価が高くない。タイヤに厳しいという、前年型の悪癖をまだ引きずったままなのか。
1周のラップタイムにしてもトップからはテスト期間中でまだコンマ6秒ほどの開きがあり、リカルドは「追いつくにはまだ時間がかかる」と言う。
まずはドライバー力でこのマシンの劣勢をカバーし、チーム当面の目標となる表彰台に届くか。リカルドはチームの成長を見守る覚悟をもって、移籍してきた。