3月7日、スイス・ジュネーブで開かれたFIA世界モータースポーツ評議会において、WEC世界耐久選手権の2020/2021年シーズンから導入される“ハイパーカー規定”に量産モデルをベースとしたマシンの参戦が承認された。
WECは2018年6月、現行の最高峰クラスであるLMP1に代わるカテゴリーとして市販車のような外観を持つプロトタイプレーシングカーを用いる規定、通称“ハイパーカー規定”を2020年から始まる新シーズンから導入することを発表。昨年12月には大幅なコスト削減を掲げる同規定の基本的なテクニカルレギュレーションが明らかにされた。
そんなハイパーカー規定について、評議会は参戦車両の枠組みを広げ、従来考えらてれきたロードカースタイルのレーシングカーに加えて“市販車ベースのレーシングバージョン”の参戦を許可している。
しかしながら拡大された規制の詳細や、ふたつのプラットフォームを基にしたレースカー同士をどのように規制、調整するのかについては明らかにされなかった。これらは3月14~16日にアメリカ・セブリングで開催されるWEC“スーパーシーズン”第6戦セブリングで発表があるものと考えられている。
■規定の拡張で「より多くの自動車メーカーの参入を促す」
2018年12月に発表されたルールブックの当初の目的は、自動車メーカーが高性能ロードカーからスタイリングの手掛かりを得て、それを純レーシングカーに落とし込むことだった。しかし、フェラーリを含むいくつかのメーカーは自社の生産車とレース活動とのより緊密な連携に関心を示している。
そうしたなかで今回承認された参戦車両に関する規定の拡張について、FIAは次のような声明を発表している。
「2020年のLMP技術規制コンセプトを拡大し、メーカーが販売するロードカーから開発された“ハイパーカー(規定車)”が参入できるようにする」
そして、生産車へのグリッドを開放することによって「より多くのメーカーがチャンピオンシップを参入できるように設計されている」と付け加えられた。
評議会が開かれたジュネーブで『ヴァルキリー』シリーズと『AM-RB 003』という計3車種のハイパーカーに加えて、次世代ミッドシップスーパーカーの『ヴァンキッシュ・ビジョン・コンセプト』を発表したアストンマーティンは、ここ数週の間に生産車ベースのマシンの参入を推進してきたマニュファクチャラーのひとつだ。
一方、2018年1月の東京オートサロンで『GRスーパースポーツ・コンセプト』をワールドプレミアしているトヨタは、当初発表されたハイパーカー規定に則った計画を進めていると考えられている。なお、2020/21年シーズンから導入予定の同規定に対して、正式に参戦を発表した大手自動車メーカーはこれまでのところ1社も出てきていない。