第2回F1バルセロナテストを終えて、徐々に新車の実力が明らかになってきた。今回はF1開幕戦オーストラリアGPに向け各チームの実力を数値化して分析。第4回目はアルファロメオ・レーシングだ。
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■アルファロメオのチーム戦力
100点満点中71点
■テストでの最速タイム
8番手/10チーム中 1分17秒239(ライコネン/C5/3月1日午前)
■予想される本来の実力
9番手/10チーム中 1分17秒0(トップとの差+1.5秒)
※トップチームがアタックした場合、1分15秒500のタイムが出ると仮定
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2019年入って『ザウバー』からチーム名を変更して、再スタートを切ることとなった『アルファロメオ』。ザウバーがF1に参戦を開始したのが1993年だから、25年間の歴史に幕が下ろされたわけである。
ただし、チームのファクトリーはザウバー時代と変わらず、スイス・ヒンウィルにあり、スタッフの多くはザウバー時代のエンジニアやメカニックで、チーム代表のフレデリック・バスールは今年が3年目のシーズンとなる。また新車の名前はC38とザウバー時代に愛用されていた『C』のイニシャルが継続された。これはチームの創始者であるペーター・ザウバーの妻、クリスティーヌ(Christine)のイニシャルだ。
ただし、アルファロメオがフェラーリ同様、フィアット傘下ということで、フェラーリとの関係は深くなった。2018年の春までフェラーリでチーフデザイナーを務めていたシモーネ・レスタが、シーズン途中でチームに合流。2019年用の開発を指揮していた。
さらに例年、テスト会場で行なっていたシェイクダウンを、今年はフェラーリのプライベートコースであるイタリアのフィオラノで行うという厚遇ぶり。ステアリングを握ったのは、2018年までフェラーリに在籍し、フィオラノをよく知るキミ・ライコネンだった。
そのシェイクダウンで、大きな注目を集めたのがユニークなフロントウイングだ。通常、フロントウイングのフラップは中央から両端に行くにしたがって幅が増して、大きな羽のような形状となるのだが、アルファロメオの新しいフロントウイングは逆に、両端へ向かって細くなり、翼端板付近がぽっかりと空いたデザインとなっていた。これはフロントタイヤ周辺で発生する乱流を吹き飛ばすためのアイディアで、これをアウトウォッシュ効果という。
ただし、アウトウォッシュは後続車にとっては新たな乱流となり、それがオーバーテイクを阻害している要因になっていることから、FIAは今年フロントウイングのサイズと形状に関して新しいレギュレーションを導入した。しかし、F1の優秀なエンジニアたちはレギュレーションの変更が変更されるたびに抜け道を見つけてきた。今回のアルファロメオのユニークなフロントウイングも、その類のアイディアである。
■懸念点は搭載しているフェラーリPUが昨年型の可能性も
したがって、抜け道を上手に通り抜けたアルファロメオは、テストの序盤から好調な走りを披露した。第1回バルセロナテスト3日目の午前中には、全チームを含めて最初今年の1分17秒台に突入するタイムを刻んでいた。昨年のザウバーの1回目のテストでのベストタイムが1分22秒台。気温や路面コンディションが昨年よりも良好だったとはいえ、昨年のザウバーから、完全に生まれ変わっていた。
しかし、そのペースは2回目のテストに入ると、鈍ってきた。これはアルファロメオが最も軟らかいC5タイヤを、1回目のテストから積極的に使用していたためで、ライバル勢がC5タイヤを履いてタイムアタックを開始してきた2回目のテストに入ると、アルファロメオの走りはやや平凡なものとなったからだ。
チームにとってベストタイムとなった1分17秒239を記録した3月1日も、朝からC5タイヤを気前よく履いてショートランを繰り返していた。それでも1分17秒台を切れなかったということは、これが現時点でのC38の限界なのかもしれない。その日の午後にライコネンが行なったレースシミュレーションのタイムも、ほぼ同時に始めたマクラーレンのカルロス・サインツJr.よりも遅く、午前中のベストタイムが決して燃料を多めに搭載していたというわけではないようだ。
もうひとつ、アルファロメオで気になるのは、搭載されているパワーユニットの諸元が発表されていないこと。昨年は「フェラーリ062」とワークスと同じスペックを搭載していたが、今年は明言されていない。ボディカウルの形状を見る限り、フェラーリに比べるとアルファロメオは明らかに大きく、もしかすると昨年のスペックか、同じスペックだとしても冷却系などが本家の「フェラーリ064」とは異なり、マシン後方の空力に妥協が生じている可能性も考えられる。
ただし、ザウバー時代にはシーズン中にほとんどアップデートされていなかった開発も、アルファロメオのテコ入れによって進むことが考えられる。シーズン中の開発によっては、中団グループの台風の目のような存在になるかもしれない。
全チーム戦力分析(5)に続く