アストンマーティンは3月5日、スイスで開催されているジュネーブ国際モーターショー2019の会場で、ブランド初となる量産ミッドシップスーパーカーのコンセプトモデル『アストンマーティン・ヴァンキッシュ・ビジョン・コンセプト』を世界初公開した。
伝統的にアストンマーティンの量産フラッグシップモデルに名付けられてきた『ヴァンキッシュ』の名を冠したコンセプトモデルは、創業100年以上の歴史を誇る同ブランドでは初となる量産ミッドシップスーパーカーのプロトタイプとしてサプライズ登場した一台だ。
アストンマーティンは将来このヴァンキッシュで、フェラーリやランボルギーニなど伝統的にイタリアメーカーが強さをみせるミッドシップスーパーカー市場への参入を目指しているという。
そんなヴァンキッシュのスタディモデルとしてお披露目されたビジョン・コンセプトのスタイリングは、現在レッドブル・アドバンスド・テクノロジーズとアストンマーティンが共同開発しているハイパーカー『ヴァルキリー』や、ジュネーブでワールドプレミアされた『AM-RB 003』の系譜を受け継ぐものとなっている。しかし、細部は2台のハイパーカーほどの空力的な尖りはなく、全体的にアストンマーティンらしい芸術的なシェイプを描く。
また、現時点ではスペック等の詳細情報明らかにされていないものの、ふたつの確定情報ががアナウンスされた。その内のひとつはパワートレインに関するもので、次期型ヴァンキッシュには同日発表されたAM-RB 003にも搭載されるアストンマーティン製V6ターボエンジンが積まれるという。なお、ハイパーカーのAM-RB 003では同エンジンにハイブリッドシステムが加わる予定だ。
そして、もうひとつは車体構造について。ヴァルキリー、AM-RB 003はロードカーでありながら究極のパフォーマンスを引き出すため、軽量なカーボンファイバーモノコックが用いられる。これに対して量産スーパーカーであるヴァンキッシュ・ビジョン・コンセプトではテーラーメイドされた接着アルミニウムシャシーが採用されるという。
これにはコストと生産スピード、そして自動車業界内でこの分野をリードしているアストンマーティンが、同技術の利点である重量に対する強度を完璧に把握できることが理由に挙げられている。
「まず最初に『ヴァンキッシュ』の名称を復活させることができてうれしく思っている。ヴァンキッシュは弊社の量産フラッグシップカーに使われてきた名称であり、今回発表する重要なコンセプトカーにふさわしい名前だ」と語ったアストンマーティンのアンディ・パーマー社長兼グループCEO。
「ヴァンキッシュ・ビジョン・コンセプトの発表は、アストンマーティンの歴史における記念すべき瞬間であり、弊社のセカンドセンチュリープランを実現するために欠かすことのできないステップでもある」
「アストンマーティン初の量産ミッドエンジン・スーパーカーは、私たちのブランドに変革をもたらすことになるだろう。アストンマーティンはこのモデルとともに、伝統的にラグジュアリースポーツカーの主要な市場となってきた新しいカテゴリーに参入していく」
■ヴァンキッシュ・ビジョン・コンセプトは「過激なパフォーマンスを抑え、意図的に美しさを追求している」
また、アストンマーティン・デザイン・ディレクターを務めるマイルス・ナーンバーガーは、次期量産フラッグシップの設計について次のように述べた。
「『ヴァンキッシュ・ビジョン・コンセプト』はテクニカルな外観という面では『ヴァルキリー』や『プロジェクト003(AM-RB 003)』よりも控えめだが、それでも極めて魅力的で印象的なエクステリアを特徴としている」
「たとえば、タイヤを透かして見ることができる開口部を備えた独特のクラムシェル・フロントフェンダーがその一例だ」
「このクルマでは、ヴァルキリーやプロジェクト003のデザイン上の特徴となっているネガティブスペースはほとんどない。過激なパフォーマンスを抑えて設計され、意図的に美しさを追求しているんだ」
「一旦サーキットに出れば素晴らしいパフォーマンスを発揮するが、自宅や公道では非常に良きパートナーとなるだろう。そのため、そのスタイルはそれほど挑発的ではなくミッドエンジンスーパーカーの流儀に従ってたものになっている」
「その美しさはアストンマーティン・ヴァルキリーやプロジェクト003にみられるアグレッシブで機能を優先したスタイルを、より流麗で官能的な形態へシフトすることによって実現した」
「その一方で、アスリートを連想させるボディラインや現代的なデザインは受け継いでいる。これらは、アストンマーティン初の量産ミッドエンジン・スーパーカーの特徴や機能を表現する上で重要な要素となっているんだ」