今週末、2019年シーズンのMotoGPシリーズ(ロードレース世界選手権)が、カタールのロサイル・インターナショナル・サーキットで開幕する。
開幕戦のカタールはナイトレースとして今年も開催されるが、2年前まで4日制だったが昨年から3日制にスケジュールが変更された。また、Moto2クラスとMoto3クラスの予選方式が変更され、MotoGPクラスと同様に15分ずつのQ1、Q2として行われることになった。Moto2クラスとMoto3クラスの3回のフリー走行は各40分(Moto2クラスは昨年までの45分から40分に短縮)で行われ、3回のフリー走行総合上位14名がQ2に直接進出。Q1の上位4名を加えた計18名でQ2が争われる。
開幕戦のレースウイークは、現地時間8日(金)13時50分(日本時間19時50分)よりスタートする。
開幕戦の舞台となるロサイルインターナショナルサーキットは、カタールの首都ドーハの郊外にある。ロサイルは2004年に建設されたサーキットで、2004年から世界GP開催コースとなり、2008年以降はナイトレースとして開催されている。コース全長は5.380kmで、1068mと長いメインストレートを持ち、左コーナー6、右コーナー10の中高速レイアウトで、マシンのハンドリングやタイヤの耐久性が重要になるコース。ブレーキングの要求レベルは中程度。
周囲を砂漠に囲まれているため、風に飛ばされた砂がコース上に飛散することで、路面が滑りやすいことも多く、特に走り始めはグリップに悩まされることが多い。中東の砂漠地帯にあるため、年間の降水量は少ない地域だが、2009年にはMotoGPクラスの決勝が雨で一日順延された。
2017年にもMotoGPクラスの決勝スタート直前に雨が降り、スタートディレイとなったものの、周回数を短縮してレースが実施されたことがある。このため、2018年のオフィシャルテストでは、コースに人工的に水をまき、ナイトセッションでのウエット走行のテストを行ったが、昨年はドライでレースが行われた。ただし、昨年の10月に開催されたスーパーバイク世界選手権(SBK)最終戦のカタールラウンドでは雨が降り、SBKのレース2がキャンセルされるという事態が起こった。今週末の天気予報では、天気が崩れる心配はない模様。
2018年のMotoGPクラスには11チーム22名のライダーがレギュラー参戦する。
ディフェンディングチャンピオンのマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)は、シーズンオフ中に左肩の脱臼ぐせを治す手術を受けた。2月のセパンテストでは左肩の回復が完全ではなく、3日間総合では11番手に終わったが、カタールテストでは総合4番手と体調の回復が進んだ。今年からマルケスのチームメイトとなるホルヘ・ロレンソ(レプソル・ホンダ・チーム)は1月のトレーニング中に転倒、左手首を骨折したため、セパンテストを欠場。カタールテストで復帰し総合6番手につけたが、新しいマシンへの習熟が十分でないことがどう影響するか。
ここ数年好調なドゥカティ勢では、エースのアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ミッション・ウィノウ・ドゥカティ)、新たにファクトリーライダーとなったダニロ・ペトルッチ(ミッション・ウィノウ・ドゥカティ)共に順調に調整を進めてきた。ドヴィツィオーゾはセパンテストで総合4番手、カタールテストでは総合15番手に止まったが、昨年のカタールGPでは優勝しており、今年も優勝候補のひとり。ペトルッチはセパンテストで総合トップ、カタールテストでは総合10番手。今年はチーム名をミッション・ウィノウ・ドゥカティとし、タイトル奪還をめざす。
ここ2シーズン、マシン面での苦戦が続いているヤマハ勢は、マーベリック・ビニャーレス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)がカタールテストを総合トップで終了した。ビニャーレスはセパンテストでも総合5番手と上位につけ、バレンティーノ・ロッシ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)もセパンテストで総合10番手、カタールテストで総合5番手とマシンの改善を着実に進めている様子。今年からメインスポンサーがモンスターエナジーとなり、ブラックを基調としたニューカラーで新たなシーズンに挑む。
そして、今シーズンの注目がスズキだ。昨年はアレックス・リンス(チーム・スズキ・エクスター)が活躍を収め、優勝まであと一歩に迫った。リンスはセパンテストで総合12番手、カタールテストで総合3番手と順調に調整を進めている。チームメイトにはルーキーのジョアン・ミル(チーム・スズキ・エクスター)が起用された。2017年のMoto3チャンピオンのミルはMoto2クラスを2018年の1シーズンで卒業、MotoGP昇格を果たした。ミルもセパンテストでは総合15番手、カタールテストでは総合12番手とMotoGPマシンへの適応を順調に進めている。
フル参戦3年目となるKTMファクトリーは、ポル・エスパルガロ(レッドブルKTMファクトリー・レーシング)が継続、ヨハン・ザルコ(レッドブルKTMファクトリー・レーシング)が新たにチームに加わった。ポル・エスパルガロはセパンテストで総合18番手、カタールテストでは総合8番手でテストを終えた。
アプリリアはアレイシ・エスパルガロ(アプリリア・レーシング・チーム・グレシーニ)が継続し、アンドレア・イアンノーネ(アプリリア・レーシング・チーム・グレシーニ)が新たに加入。アレイシ・エスパルガロはセパンテストで総合7番手、カタールテストで総合14番手。イアンノーネはマシンの乗り換えにやや苦戦。セパンテストで総合21番手、カタールテストで総合18番手に止まった。開幕戦カタールGPにはテストライダーのブラッドリー・スミス(アプリリア・レーシング・チーム・グレシーニ)もワイルドカード参戦する。
LCRホンダのカル・クラッチロー(LCRホンダ・カストロール)は、シーズンオフを昨年のオーストラリアGPで負った怪我の回復に専念。セパンテストでは総合6番手、カタールテストでは総合17番手。チームメイトの中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)はテストでは好調で、セパンテスト、カタールテスト共に総合9番手とトップ10で終えており、2年目のシーズンの活躍に期待が高まる。
新チームのペトロナス・ヤマハSRTでは、昨年の新人王フランコ・モルビデリ(ペトロナス・ヤマハSRT)がセパンテストで総合8番手、カタールテストで総合7番手と、順調にヤマハのマシンに適応。ルーキーのファビオ・クアルタラロ(ペトロナス・ヤマハSRT)はセパンテストは総合16番手に終わったが、カタールテストを総合2番手で終え、一躍注目を集めた。
プラマック・ドゥカティはジャック・ミラー(アルマ・プラマック・レーシング)が継続。セパンテストでは総合3番手、カタールテストでは総合11番手。ルーキーの2018年Moto2チャンピオンのフランセスコ・バニャイア(アルマ・プラマック・レーシング)はセパンテストで総合2番手といきなり躍進。カタールテストでは総合13番手に止まったが、ルーキー勢のトップをねらう。
アビンディア・ドゥカティは昨年のシーズン後半をケガのため欠場したティト・ラバット(レアーレ・アビンティア・レーシング)が復帰。セパンテストでは総合14番手、カタールテストでは総合16番手に終わったが、昨年、ドゥカティにマシンをスイッチして調子を上げただけに2年目の今年も期待が高まる。チームメイトはカレル・アブラハム(レアーレ・アビンティア・レーシング)。アブラハムはセパンテスト総合20番手、カタールテスト総合21番手で終えた。
KTM・テック3はハフィス・シャーリン(レッドブルKTMテック3)がセパンテスト、カタールテスト共23番手とマシンの乗り換えに苦戦気味。ルーキーのミゲール・オリベイラ(レッドブルKTMテック3)はセパンテスト19番手、カタールテスト20番手。チーム母体となるテック3のチーム力でどこまで巻き返せるかに注目が集まる。
昨年のカタールGPでは、ヨハン・ザルコ(ヤマハ)がポールポジションを獲得、ドヴィツィオーゾが優勝、僅差の2位にマルケス、3位にロッシが入賞した。
今年もロサイルを得意とするドゥカティが有力候補。過去の結果を見れば、ロサイルとの相性はあまりよくないと思われていたホンダ勢だが、昨年の結果やテストの結果から見ると、それも解消している様子。ヤマハは昨年までの問題をどこまで解消できているかに注目が集まる。いずれにしてもテストの結果からもタイム差は少なく、今シーズンも接戦が展開されることは間違いないだろう。