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空力規則に上手く適応したフェラーリF1。最速マシンSF90は開幕戦の大本命/全チーム戦力分析(3)

2019年03月07日 12:31  AUTOSPORT web

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セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)
第2回F1バルセロナテストを終えて、徐々に新車の実力が明らかになってきた。今回はF1開幕戦オーストラリアGPに向け各チームの実力を数値化して分析。第3回目はフェラーリだ。
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■フェラーリのチーム戦力
100点満点中95点
■テストでの最速タイム
1番手/10チーム中 1分16秒221(ベッテル/C5/3月1日午前)
■予想される本来の実力
1番手/10チーム中 1分15秒5(トップとの差±0秒)
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 ここ数年で最も好調なテストを送っていたのが、フェラーリだ。

 新車『SF90』は素性が良く、走り始めから速かった。テスト初日のセバスチャン・ベッテルがマークしたトップタイム1分18秒161は、C3(旧ソフト)タイヤで出されたもので、同じC3タイヤを履いたマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)より1.3秒も速かった。

 1回目のテストで苦しんでいたメルセデスが初日に記録したベストタイムは、C2(旧ミディアム)タイヤでのものだったが、それよりも2秒も速かった。これはコンパウンド間のタイム感度を考慮しても、フェラーリSF90が群を抜くスピードを持っていることを意味していた。

 SF90の最大の武器は、レギュレーション変更によって姿を消すはずだったアウトウォッシュ効果を、新しいアイディアで復活させたことだった。

 これまではフロントウイング翼端板外側のフィンや翼端板内側の形状を工夫することで空気の流れをフロントタイヤの外側へ向け、アウトウォッシュ効果を図ってきたが、レギュレーション変更によって翼端板内外には空力パーツを設置できなくなり、さらにフロントウイングの幅が広がったことで、これまでのようにフロントタイヤの外側へ向けた空気の流れを作るのは難しくなった。

 ところがフェラーリはフロントウイングのアッパーフラップの形状を中央から外側に向けてテーパー状に細くすることで、翼端板の内側付近を通過する空気をそのままフロントタイヤ外側へ向けて流すことで、アウトウォッシュ効果を維持することに成功していた。

 つまり、2018年までと空力のコンセプトが同じであるため、セットアップも大きく変更する必要はなく、走り出しから速かった。一見、保守的な作りに見えるSF90が、速い理由はそこにあった。

 ベッテルが記録したトップタイムの1分16秒221は、テスト最終日の3月1日の午前にC5タイヤを履いて出されたものだが、じつはこのアタックの後にベッテルはC3タイヤでもう一度アタックしていて、そのタイムはなんと1分16秒720だった。ピレリの発表によるとC5とC3のタイヤのタイム感度は1.2秒だ。それを考慮するとSF90には1分15秒5あたりのタイムを出す速さがあると考えていいだろう。

 これが事実なら、メルセデスより0.5秒、レッドブルに対してはなんと0.7秒も速いという驚きの結論に達するため、にわかに信じがたいが、その結論が大きく間違っていないことは、レースシミュレーションのタイムが裏付けている。

■空力開発でライバルの一歩先をいくフェラーリ



 2回目のテスト3日目の2月28日に、フェラーリ(シャルル・ルクレール)はメルセデス(バルテリ・ボッタス)、レッドブル(ピエール・ガスリー)とともに、午後にフルレースシミュレーションを行なった。ここでメルセデスとレッドブルがC3タイヤでスタートしたのに対して、フェラーリはC2でスタートを切った。その狙いはさておき、C2はC3より約0.6秒遅いはずなのだが、1周目からルクレールのペースはC3を履くボッタスよりも平均0.4秒速く、ガスリーに対しては1秒以上速かった。

 C2のほうがコンパウンドが硬いため、燃料が最も重いスタート時に向いていたのかもしれない。しかし、第2スティントに入ってボッタスもルクレールと同様、C2タイヤに履き替えても、2人のペースはほとんど変わらず、平均して毎周コンマ4秒ずつボッタスは引き離されていった(ガスリーは第2スティント早々にクラッシュ!!)。

 ちなみにテスト最終日にベッテルもレースシミュレーションを行い、このときはC3タイヤを履いてスタートしていたが、やはり前日のボッタスと比較すると平均して0.4秒速かった。

 これはフェラーリがアウトウォッシュ効果を維持しているため、ロングランでも昨年のデータを活用でき、マシンのセットアップだけでなく、タイヤの内圧管理なども、ロングランに合わせて適正に調整できているためだと考えられる。

 フェラーリのアドバンテージは現時点で大きいことは間違いない。F1はコース上でドライバーたちがレースを行うだけでなく、年間を通して続く開発の競争でもある。しかし、メルセデスとレッドブルが空力コンセプトを変えて追随してきたり、あるいは従来のアウトウォッシュ効果以外のアイディアを見つけ、その空力を成熟させてきたら、どうなるのかわからない。

 今回のテストで、フェラーリはホイールリムのトラブルや電気系の不具合を発生させていた。ライバルたちが追い上げてくる前の序盤戦では、フェラーリはこうしたトラブルはできるだけ発生させたくないだろう。またチームメイト同士によるポイントの奪い合いも避けたいところ。SF90という速いマシンを手に入れたフェラーリだが、タイトルを勝ち抜くためには、やるべき課題はまだ残されている。