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世界でInstagramフェイスフィルターに起こっている、「トレンド」と「美学」の変化

2019年03月07日 10:41  リアルサウンド

リアルサウンド

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 The Vergeによると、Instagramフェイスフィルターのこれからのトレンドは「グロッシー」「メタリック」、そして「シュール」だ。


(参考:Instagram、インフルエンサー専用アカウントを開発中 フォロワーの推移を確認可能に


 モデルのテディ・クイリバン、ミュージシャンのアイラヴマコーネンやロザリアなど、多くのインフルエンサーが自身のInstagramストーリーで”Beauty3000”フィルターを使用した写真や動画をアップロードしている。


 このフィルターは、ベルリンを拠点に活躍するモーションデザイナーのJohanna Jaskowskaによるものだ。彼女のポートフォリオサイトを見ると、青い水面のような空間が広がり、奥に向かって作品がまるで水中から浮かんでいるように表示される。作品を行き来するには、スクロールまたは矢印キーでサイト内を操作する。彼女の作品は、ユーザーのインタラクションで動きや空間を演出する、実験的なアプローチであることがわかる。


 Jaskowskaはi-Dのインタビューで、「フィルターの人気はナルシシズムにある」と答えた。「そのナルシシズムは必ずしも悪いことではないが、時にはあまり自然じゃない」と彼女は考える。「本物」の自分とネット上の自分が分裂しているとよく言われるが、「一方でバーチャルな世界で自分の人格を一から作り出すこともできるのも素敵なことだ」と。「フィルターは仮面のようにある種の“無名性”を与えてくれるが、それはコミュニケーション手法の一つであり、インターネットの登場で新しい仮面の用法ができた」のだという。


 また、イタリア版Vogueでは、「フェイスフィルターはファッションアクセサリーとしても考えられる」と答えている。「犬のフィルターを使っている時と、顔がきらめくようなフィルターを使っている時とでは、ユーザーの態度が変わってくる」そうだ。


 影響を受けた作品について聞かれた際、彼女はHenri-Georges Clouzotの”L’Enfer”(1964)の光の捉え方に影響を受けて”Blast”フィルターを作成したと語っている。ブレードランナーや攻殻機動隊などのサイバーパンク作品にもインスパイアされているらしい。


 フェイスフィルターのトレンドはSnapchatの「犬」フィルターにより引き起こされ、「犬」フィルターはもはやミーム化した今、最新の流行は可愛さを抑えめに、近未来的でグロッシーなルックスに移行しつつある。


 「グロッシー」「メタリック」「シュール」ーーBeauty3000フィルター以外にもこのような「aesthetic(美学)」がたくさん見られる。例えば@wrld.spaceは金色のホットドッグでできた天使の輪のフィルターを公開し、@fvckrenderのフィルターは銀色の手やクリスタルが顔の前に現れる。このように、似たようなフィルターばかりが作られているのは偶然ではなく、クリエイターたちはFacebookグループでアイディアを共有し、意見交換をしているそうだ。


 なお、Instagramでクリエイターのフェイスフィルターを使用するためには、作成者をフォローすることで、アプリ内のカメラに表示されるようになる。フィルターは無償で提供されるが、クリエイターはSNSで得た知名度を機に新たなチャンスに繋げることができるという仕組みである。


 まだInstagram上でも新しい機能であるため、クリエイターを数人フォローするだけでカメラがフィルターで溢れ、目当てのものが探しづらくなってしまう。しかし現在の需要を考えると、今後はより使いやすいようにアップデートされる可能性が高いだろう。


 発表当時、「Snapchatのパクリ」とも揶揄されたInstagramのストーリー機能だが、アクティブユーザーは増え続け、2017年以降はSnapchatを上回っている。国内ではLINE、Twitterに続き3位となったInstagram国内の月間アクティブアカウント数が2,900万人(2018年11月)を突破し、Facebookの月間アクセスユーザー数である2,800人(2017年9月)を抜いた。


 日本でも昨年10月に渡辺直美がフェイスフィルターを作ったりと、Instagramのフェイスフィルターの勢いは止まりを見せない。スマホが普及して以来、カメラ性能の向上とSNSの大衆化により、自撮りをネット上にアップロードするユーザーが増えていった。


 InstagramやSNOWのフェイスフィルターを通し、顔認識やAR技術などの知識がない人も気軽に体験できることが、個人的にはとても興味深く感じる。クリエイターは多くのユーザーからのフィードバックを受け、また自分でも作ってみたいと感じる人が増えることで、このような技術がさらに発展していくことに期待したい。


(かぷぬ)