■「新たな方法で東洋と西洋を結びつけた」「真に国際的な建築家」
2019年の『プリツカー賞』に磯崎新が選出された。
『プリツカー賞』は「建築界のノーベル賞」とも言われる建築賞。現地時間の3月5日に受賞者の発表が行なわれた。磯崎新は日本人としては8人目の受賞者となった。
審査員は磯崎を「建築史と理論の深い知識を持ち、前衛芸術を取り入れ、現状を複製することは決してなかった。彼が手掛けた建物に今日まで反映されている意義深い建築を探求する姿勢は、様式の分類を超えて、進化し続けている」と評価。
さらに「磯崎は東洋が西洋文明に強く影響を受けている時代に、日本国外で建築を手掛けた最初の日本人建築家の1人であり、真に国際的な建築家」「見せかけやコラージュのような方法ではなく、新たな方法で東洋と西洋を結びつけた」と評している。
■代表作に大分県立大分図書館やつくばセンタービル、ロサンゼルス現代美術館など
磯崎新は1931年、大分生まれ。東京大学工学部建築学科を卒業後に丹下健三に師事し、1963年に磯崎新アトリエを設立。ポストモダン建築の旗手として国際的に活動する。これまでに手掛けた作品は国内外で100以上におよぶ。
初期の代表的な作品は大分県立大分図書館(1966年)、日本万国博覧会 お祭り広場(1970年)、群馬県立近代美術館(1974年)、つくばセンタービル(1983年)など。
1988年には初の海外からのコミッション作品としてロサンゼルス現代美術館の建築を手掛けた。また1992年のバルセロナオリンピックのために建設された屋内競技場パラウ・サン・ジョルディの設計も担当している。
東日本大震災後は、スイスの音楽祭『ルツェルン・フェスティバル』が被災地への復興支援として企画した、可動式のコンサートホール「アーク・ノヴァ」をアニッシュ・カプーアと共に設計・制作した。「アーク・ノヴァ」は約500名を収容できる巨大な空気膜構造のコンサートホールで、宮城・松島、仙台、福島を巡り、2017年には東京でも展示された。
■過去の日本人受賞者は? 2014年の坂茂以来
『プリツカー賞』はアメリカのハイアット財団が主催する建築賞。今回で46回目。
これまでにフランク・ゲーリー、レンゾ・ピアノ、レム・コールハース、ヘルツォーク&ド・ムーロンノーマン・フォスター、ザハ・ハディドといった数々の建築家が受賞。日本人の過去の受賞者は、丹下健三、槙文彦、安藤忠雄、妹島和世と西沢立衛、伊藤豊雄、坂茂。磯崎は坂が受賞した2014年以来の日本人受賞者となった。
磯崎は現在87歳。歴代3番目に高齢の受賞者だという。授賞式は5月にフランスで行なわれる。