3月8~10日に行われるWRC世界ラリー選手権第3戦メキシコに向けて、参戦するドライバーたちが意気込みを語った。
2019年シーズンのWRC第3戦となるラリー・メキシコは、雪や氷とターマック(舗装路)が入り交じる第1戦モンテカルロ、雪道が主体の第2戦スウェーデンからは一転、気温の高い高地で争われる完全なグラベル(未舗装路)イベントだ。
この時期のメキシコは最高気温が30度に達する暑さで、マシンには熱害対策が求められ、またコクピット内のクルーやサービスパークのメカニックたちも暑さとも戦うことになる。
マシン、特にエンジンにとっては標高の高さも戦うべき存在だ。ラリー・メキシコは標高が高いエリアが主戦場で、酸素が薄く、通常大会より最大20%ほどパフォーマンスが低下すると言われている。
エンジンパワーが低下するということは、一度スピードが落ちると回復させるまでに時間がかかるということであり、小さなミスが大きなタイム差につながりかねない面もある。
そのほか、砂利に隠れた石なども注意を払わなければならない存在で、こういった障害物がマシンに大きなダメージを及ぼすこともある。
競技は現地7日の10時ごろ(日本時間8日1時ごろ)にシェイクダウンが行われ、走行がスタート。その後、現地20時8分(日本時間11時8分)、グアナフアトの市街地を舞台にSS1が行われて開幕する。
翌8日はSS2~9までの8SSで争われる1日で、SS2、5は全長31.57kmのロングステージ“エル・ショコラテ”だ。
9日はSS10~18までの9SS。このうちSS11、14に設定された“オタテス”は前日のエル・ショコラテよりも長い32.27kmの戦いとなる。
競技最終日の10日は、SS19~21の3SSが行われる。最終ステージのSS21“ラス・ミナス”はステージ上位5名にボーナスポイントが与えられるパワーステージで、現地時間12時18分(日本時間11日3時18分)にスタートする。
WRC最上位クラスを戦う4チームは、シトロエン、Mスポーツ・フォードが2台体制、ヒュンダイとトヨタが3台体制での参戦となる。
このうちヒュンダイは、開幕2戦を戦ってきたセバスチャン・ローブが不参加。代わってダニ・ソルドが2019年シーズン初戦を迎える。
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■トヨタ
●オット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)
「スウェーデンの優勝は我々にとって素晴らしい経験だったが、すぐに焦点をメキシコに切り替えた。スウェーデンの翌日月曜日から2日間グラベルテストを行なうため我々はスペインに直行したんだ」
「テストでは多くの異なることを試し、メキシコに向けてできる限りの準備をしたよ。チーム全員が一生懸命働いてきたから、メキシコではきっと競争力があるはずだ」
「選手権のリーダーだから、金曜日のステージを最初に走らなくてはならない。簡単ではないだろうけど、昨年のメキシコでは出走順が早いスタートからでも良い結果を出せることがわかったから、がんばりたい」
●ヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)
「メキシコを待ち遠しく思っているよ。特に、フィンランドの冬の終わりに暖かい日差しを浴びることが楽しみなんだ」
「ここまでのところ、僕が望んでいたようなシーズンスタートとはなっていない。しかし今回のメキシコではポジティブな要素がある。それは金曜日の出走順が8番手と、有利な位置からスタートできることだ」
「先週はスペインでとても良いテストができた。クルマは昨年のラリー・オーストラリアで優勝した時とほぼ同じセッティングで、いくつか小さな調整を加えた。もっとも重要なのは、高い標高と高い気温に対する準備が完全にできていると、チームが自信を持って臨めることだね」
●クリス・ミーク(トヨタ・ヤリスWRC)
「先日、スペイン南部で2日間テストを行なった。フィンランド以外のグラベルコースでヤリスWRCを運転するのは初めてだったけど、僕にとっては本当に意味のあるテストで、クルマはとても運転しやすく感じたよ」
「ここ数年、メキシコでは良い戦いができている。2017年は優勝し、昨年は優勝争いに加わり3位でフィニッシュしたんだ。今回は違うクルマだけど、再び勝利のために戦えることを願っているよ」
「モンテカルロとスウェーデンは非常に複雑なコンディションで、簡単にミスをしてしまうようなイベントだった。しかし、メキシコは通常コンディションが前2戦よりも安定しているから楽しみだよ」
■ヒュンダイ・モータースポーツ
●ティエリー・ヌービル(ヒュンダイi20クーペWRC)
「2度の表彰台獲得という満足の行く結果を出して、2019年の着実なスタートを切ることができた。まだチャンピオンシップの序盤だが、ペースとポテンシャルを示すことができたと同時に、改善すべき領域も特定した」
「メキシコはいつものように異なる挑戦になる。シーズン最初の暑い気候でのラリーだ。モンテカルロやスウェーデンとはとても対照的だし、高地の山間部でのラリーになる。高地で酸素が減るということは、エンジンの馬力が減り、ドライバーとコドライバーにとってはコクピット内の気温が上がって厳しい状況になるということだ」
「過去にはこのラリーで表彰台を賭けて戦った。だから好結果を出すためにやらなければならないことは分かっているよ」
●アンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC)
「スウェーデンとメキシコのコンディションの違いはこれ以上ないほど大きいよ! シーズン中最も暑いラリーのひとつだ。高地で開催され、長くて厳しいグラベルのステージがある。暑さと高度の組み合わせで、クルーとマシンにとっては過酷なラリーになる」
「標高のせいでエンジンのパワー出力は減ってしまう。つまり絶えずマシンの調子を探っていかないといけない。シーズンのスタートは、クルーとして、そしてチームにとってもポジティブな点があった。スウェーデンでは2位の座を争ったから、メキシコでも首位の近くにつけることを期待しているよ」
●ダニ・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)
「僕にとっての2019年シーズン初戦を迎えることができて、うれしいよ。最初の2戦は熱心に見守っていたからね」
「寒いコンディションだったとはいえ、他のクルーはモンテカルロとスウェーデンですでにウォームアップを済ませている。僕たち自身のシーズンを始める時が来たんだ」
「カルロス(デル・バリオ/コドライバー)と僕はメキシコへの準備をするために、(ポルトガル国内ラリーの)ラリー・セラ・デ・ファフェに出場し、ヒュンダイi20 R5で優勝したんだ」
「この経験と木曜日のシェイクダウンを活用して、すぐにスピードを発揮し、表彰台を賭けて戦うことを目指すよ。メキシコは過酷なイベントだけれど、楽しめるイベントだ。ファンからの素晴らしい応援もあるしね」
■Mスポーツ・フォード
●エルフィン・エバンス(フォード・フィエスタWRC)
「いつもラリー・メキシコを楽しんできたし、いくつかいい結果も残してきた。何度か表彰台に手が届きそうなところまでいったから、今回の目標はまたトップリザルトに挑戦することだ」
「スウェーデンではチーム全体で充分なスピードを見せることができたから、メキシコでもそれを維持したい」
「初日は出走順がいいから、それをフル活用しなければならない。だけど、このラリーに課題がないわけではない。気温が高く、ラフステージのある悪名高い難関イベントだから、ベストリザルトを掴むにはしっかり集中していなければならないんだ」
「さらに標高の高さもシーズン随一で、空気の薄さから(エンジン)パフォーマンスが20%程度落ちるから、スムーズかつアグレッシブすぎないドライビングスタイルに慣れる必要がある」
●テーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)
「ラリー・メキシコとラリー・スウェーデンはキャラクターがまったく違うイベントだけど、力強さを維持できたらうれしいね」
「この前、スペインで1日だけテストを行った。僕たちがメキシコで直面するであろう気温には届かなったけど、標高の高いグラベルでマシンのフィーリングを確認できたよ」
「フィーリングは最高だったけど、ライバルたちの動向は分からないから、いつも少し不安を感じてラリーに向かっている。スウェーデン戦前も同じ気持ちだったけど、僕たちはペースがよくて、トップを狙えるスピードがあった」
「週末、僕たちが先頭集団に挑むことができるか分からないけど、懸命に取り組んできたし、チームもフィエスタWRCの開発に努力してきた。スウェーデンではその努力を示すことができたから、メキシコでもがんばりたい」
「僕は走行順が遅いけど、それがいつでも有利というわけではない。多くの石がライン上に転がり込むこと可能性もあるからね。僕にとっては、スピードと同時にクリーンで一貫性のあるドライビングをすることがカギとなる」
■シトロエン・レーシング
●セバスチャン・オジエ(シトロエンC3 WRC)
「事前に行った2日間のテストは充実していた。路面の状態は、まさに僕たちが今週末に挑戦しなければならないステージのようになっていたからね。テスト中は天気に恵まれていた。もちろんメキシコほどではなかったけれど、とても暖かかったんだ」
「タフだったラリー・スウェーデンでは、自分たちの力を引き出すことができなかったから、早くラリーを始めて自分たちのポテンシャルを知るのが待ちきれないよ」
「メキシコのステージは美しいが、気温が上がる午後の走行では、慎重になる必要がある。マシンにとって2回目の走行はいつだってきついものになる。特に高地では馬力が減ってしまうだけでなく、冷却システムに問題が起きることがあるからね」
●エサペッカ・ラッピ(シトロエンC3 WRC)
「スペインでのテストではC3 WRCの感触が一層よくなり、ラリー・スウェーデンで達成したことに積み重ねていくことができた。マシンとの一体感をますます感じているよ。それでも、ラリー・メキシコでの自分の経験がとても限られたものであることは分かっている」
「僕は昨年がラリー・メキシコ初参戦で、あとは2017年にレッキ(下見走行)を担当したくらいしか経験がないんだ。そのことを考えると、トップ5でフィニッシュできたら、僕にとって素晴らしい結果ということになる」
「僕たちの出走順は、最初の数組と比べたら有利だ。そのことを活かせるかどうかは自分たちにかかっている。ここでのステージでは着実に効率的なドライビングをする必要がある。ステージは高地だから、100馬力ほど失うことになるからね」