スーパーフォーミュラの2019年最初の公式合同テストが行われ、完全ドライセッションとなった2日目、小林可夢偉(carrozzeria Team KCMG)は総合7位ながら、大きな手応えを感じたようだ。走行タイムだけでなく、今年のKCMGはチーム体制を大きく強化。2日間のテストを終えた可夢偉に聞いた。
「この2日間、いろいろなプログラムがあって、順調にこなしていけましたね」と、まずは好感触を語る可夢偉。
スーパーフォーミュラの新型車両SF19にはトヨタ陣営の開発車両の段階で走行経験はあるが、本格的なテストとして走るのはこの合同テストが初めて。2日目の午後には早めにアタックを行いタイムシートの最上位に上がり、しばらくトップを守るなど存在感を見せた。
「SF19は開発車両に少し乗ったことがあるくらいですけど、この2日間、いい開発ができました。2日目の午後は、ソフトのニュータイヤを早めに入れてアタックしたけど、若干、トラフィックにも引っかかりました」と話すものの、1分36秒956のタイムは2日目午後で3番手タイム。上位2台がセッション最後の路面がいい状態でアタックをしたことから、可夢偉もアタックをセッション終盤に行っていれば、充分にトップを狙えるパフォーマンスだった。
「まあ、もしセッションの最後に入れていたらトップタイムの可能性もあったと思いますけど、今はタイムを追いかける段階ではなくて、たくさんタイヤを回して周回数を重ねてデータを取って、パフォーマンスを確認していく方が大事。早めにニュータイヤを入れて、その後のロングランも見れたので、いいテストができました」
コース上の走りだけでなく、今年のKCMGはチーム体制面でも注目を浴びる。まずはなんと言っても、フォーミュラ・ニッポンで2年連続チャンピオン、そして現在はスーパーGTでニスモのワークス車両でGT500を戦いながら、昨年までスーパーフォーミュラではTVピットレポーターだった松田次生がチーム監督としてKCMGに加入。さらに、昨年チームルマンのエンジニアだったライアン・ディングルがKCMGに移籍し、笠井昭則エンジニアとそろって可夢偉をサポートすることになったのだ。
「今年のKCMGはライアンがトラックエンジニアとして加入して、(松田)次生さんも監督して入ってくれた。これまで1台体制で(データ量が少なくて)開発が厳しかった部分があった。次生さんはドライバー目線で見てくれるし、これまで外からチームを見て、エンジニアやメカニックにアドバイスをしてくれる。次生さんは僕以上にKCMGの在籍が長いですし、土居(隆二)代表との信頼関係も強いのでやりやすい」と可夢偉。その次生監督はスーパーGT岡山テストが重なったため、今回のテストでは初日のみの出会いとなったものの、可夢偉は今年の体制に大きな手応えを感じている。
この合同テストでKCMGを見ていて面白いのか、エンジニアのライアンと可夢偉が、日本語でコミュニケーションを取っている姿だ。海外経験の豊富な可夢偉は英語の方が自然だろうが、ライアンは日本語も堪能。チームのメカニックとのコミュニケーションを考慮して日本語で話していた。
「初日は無線で日本語で話していて、2日目は英語でコミュニケーションを取りました。チームのみんなにとって、どういう形がいいのか。この部分もまだ試行錯誤中です」と可夢偉。
昨年の可夢偉はWECとの兼ね合いで第5戦のもてぎ戦を欠場し、実質タイトル争いとは無縁のシーズンとなってしまったが、今年は違う。
「今年はスーパーフォーミュラをフルシーズン戦えそうなので、勝つだけでなく、これだけの体制を整えてもらったのでタイトルを狙っていきたい。その始めとして、今回はいいテストをすることができました」
新型車両SF19の導入で、勢力図がまっさらになる2019年のスーパーフォーミュラ。実績充分ながら、これまで不運に見合われ続けた可夢偉にとっても、大きなチャンスのシーズンとなりそうだ。