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【就活セクハラ】画像要求にやり逃げのリアル『OB訪問アプリ』の危険な罠

2019年03月06日 05:00  週刊女性PRIME

週刊女性PRIME

写真はイメージです

「気持ち悪くて就活をやめました。今はコーヒーショップで働いています」

 と嘆くのは就職活動中にセクハラ被害にあったサナさん(仮名・23)。サナさんはOB訪問アプリを使って出会った男から、男性器の画像を大量に送られ精神的に参ってしまったという。以前から一部で悪質な行為が行われていると問題視されていたこのアプリでついに逮捕者がでた。

この事件は氷山の一角

 2月18日、警視庁は就職活動中の20代の女子大学生を自宅に連れ込みわいせつな行為をしたとして、大手ゼネコン『大林組』社員の宗村港容疑者(27)を強制わいせつの疑いで逮捕した。宗村容疑者は容疑の一部を否認しているという。

2人は“VISITS OB”というOB訪問アプリで知り合っています。このアプリはOBやOGの社会人と学生をつなぐサービスで、マッチングアプリとも呼ばれています。社会人ユーザーには2種類あって、企業による法人アカウント利用の企業公認ユーザーと、ボランティア社会人による個人アカウント利用(ボランティアユーザー)に分かれていて宗村容疑者は後者のボランティアユーザーだったそうです」(全国紙記者)

 事態を重くみたアプリ運営会社は翌日には規定を設ける方針を発表。今後、面談は企業のオフィス内やアプリ会社が指定する安全な場所に制限するガイドラインを作成中という。

 しかし「この事件は氷山の一角にすぎない」とITジャーナリストの渋井哲也さん。

「就活を利用してセクハラを仕掛けてくる事例は数多くあり、マッチングサイトは別名、出会い系サイトとも呼ばれていて今や2人に1人の女子大学生がセクハラを受けているといわれています」

 ツイッターなどのSNSでも#MeTooをつけてセクハラを受けたと告白をする女子学生が後を絶たない。

 自身も就活アプリでセクハラを受けたと話すのは都内の大学4年の芽衣さん(仮名・22)。長いさらさらストレートヘアが印象的。

「(ニュースを見たとき)私と同じだ、と思いましたね。それですぐにツイッターで自分のセクハラ体験をつぶやきました。普段は知り合いから数件のいいねをもらう程度なのに、賛同する声や数十件のいいねがついて驚きました」

 広告代理店を希望する芽衣さんは早い段階でOB訪問アプリに登録して情報を集めていたという。

「私みたいな知名度の低い大学の女子は立場が低いので、ほかの学生よりも頑張らなくてはいけないという思いが(相手を)つけあがらせたんだと思います」

 芽衣さんは悔しさをにじませながら自身の嫌な記憶をたどる。

「二次通ったら身体だかんな」

「アプリは顔写真の登録が必要なので、モリモリに加工してすごい可愛い女の子に仕上がりました(笑)。するとすぐに大手広告代理店勤務を名乗るノブという男性から連絡が来て、アプリ上だと話せないことが多いからという理由でラインのQRコードを送ってそれからは直接のラインのやりとりが始まりました」

 ラインでのやりとりになったとたん雰囲気が「くだけた」という。

「急にため口になって、エントリーシートを通してあげるから合コンセッティングして、と言われ合コンしたらすごいおじさんが来た。自称35歳だったけど、軽く40歳は越えてたと思う。ラインのアイコンもパパっぽい感じだったし妻子持ちだと思う」

 ノブの要求はどんどんエスカレートし、

「エントリーシートを通ったら今度は2人での食事を強要されて。キモくて嫌いなタイプなのでいつも友達を連れて行っていたんです。3回くらいそれを繰り返したら豹変して怖いラインがきたんです」

 芽衣さんはそのラインをすかさずスクショとして残し、何かあったら告発しようと思っていたという。

「以前からエッチな画像を送れと言われていて、適当にごまかしていたら急に“自分の立場わかってんの?”ときて。なんかゾゾッとして谷間を寄せたキャミソール姿の写真を送っちゃいました(笑)」

 そのかいあってかはわからないが芽衣さんは二次面接まで通ったという。

「二次通ったら身体だかんな、とかいつも言われていて、こんなやつと働くのは嫌だと思っていたけど最終面接で落ちました(笑)。(性行為を)したら受かったのかな。でも結果、受からなくてよかったです。あんな男の性奴隷にされたら地獄ですもん」

 芽衣さんは大手ではないが広告代理店に無事内定した。

 次に登場するのは綾香さん(仮名・22)。

「簡単に言うとやり捨てされた。許せない」と、憤る。

「不動産業界志望で、マッチングアプリに登録してすぐに出会ったのがサイトウ(28)でした。大学時代の共通の知人もいることから心を許してしまい、アプリを通さずにすぐに直連(直接連絡すること)に移りました」

彼に力はなかった

 サイトウはすぐに豹変した。

「資料を見せてあげると自宅に呼ばれお茶を渡すかのように当たり前に缶ビールを渡されました。ソファに座ったとたん突然、身体を寄せてきて“一緒に働きたいから断らないで。断られると推せない”とかめちゃくちゃな理屈を言ってきて……」

 綾香さんは結果、身体を許してしまうことに。

「サイトウの勤務先は大手不動産会社だし、そこそこイケメンだし就職も世話してくれるならいいか、と脳内変換してしまったんです。だから自分としては彼女になったものだと思っていました」

 その後は週1回ないし月に2回くらい会って身体の関係を求められる日々。就活はサイトウの差配で順調に進んでいるかと思いきや─。

「エントリーシートで落ちました(笑)。結局、彼にはなんの力もなかったんです。アプリの担当者イコール人事担当者だと思っていましたけれど、あさはかでしたね。

 彼に落ちたことを言うと“プッシュしたけど無理だった”の一点張り。しまいには“あそこまで推したのに落ちたお前が悪い”的な態度で。頭にきたから、“別れる”って言ったら付き合ってないし的な。どこまでコケにされるんだと思いましたね」

 綾香さんは笑い話にしているが、心の傷は深い。

「あとからわかったのは、サイトウはほかの女子大生にも手を出しまくっていたんです。強制わいせつで逮捕されるべきだから被害届を出そうと被害者同士で話したけど、なかなかまとまらない。争ってまた傷つくのが嫌みたい」

 綾香さんも#MeToo運動をしていく予定だという。

 #MeToo運動の声をすくい上げている作家の北原みのりさんは、

「1対1の圧倒的な権力関係の中で行われているセクハラです。許せないし、女性たちがあげた被害の声を無駄にしない社会を作っていきたいですよね。企業も、今回の事件を機に、社員教育を徹底してほしい」