スペイン・バルセロナで行われたF1プレシーズンが終了し、3月15日~17日に開幕するF1オーストラリアGPを待つのみとなった。連日のテストを終え各チームの仕上がり具合が気になるところ。果たして2018年シーズンから勢力図は変わるだろうか。今回はピックアップした5チームの展望を紹介していく。第1回は王座奪還を目指すフェラーリだ。
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2回にわたって行われたF1プレシーズンテストのデータから浮かび上がってくるのは、少なくともこの時点で、2019年最速ランナーはフェラーリの新車「SF90」であるということだ。
テスト最終日、ピレリが持ち込んだもっとも軟らかいコンパウンドタイヤC5を履いたタイムアタック合戦は、セバスチャン・ベッテルがわずか1000分の3秒、王者メルセデスのルイス・ハミルトンを抑えた。この日にベッテルがマークした1分16秒221は、テスト期間中の全体ベストでもある。
ただ、このベッテルのベストがSF90最速説の根拠とはならない。ハミルトンとの差は1000分の3秒しかなく、両者がアタックした時間帯も異なっていた。つまり路面温度等のコンディションは同一のものではなく、1000分の3秒の差はどちらにも転ぶ。
SF90は前年までのマシンの正常進化型だ。コンセプトは継承しつつ、ボディワークをさらにスリム化。また塗装までを見直すなどして、各部の軽量化が徹底的に図られた。ただ、新空力規定への対応で、フロントウイングの変化が目を引く。2019年シーズンから翼上の補助的装備が禁止となり、翼端板が1枚化、そして幅が拡張されたフロントウイング。SF90はフラップの左右両端、後方にタイヤがある位置が下がっている。
F1においてフラップとは気流を跳ね上げてダウンフォースを発生させる装備だが、フェラーリが採ったこの手法はタイヤ下に空気を引き込もうというものだ。タイヤが発生する乱流との干渉を抑制する意図だろう。似た処理は、アルファロメオやトロロッソ・ホンダらにも見られる。
■メルセデスに対しレース距離換算で16.5秒の差か
一方で跳ね馬の主なライバル、メルセデスやレッドブル・ホンダはテスト段階では通常の跳ね上げで、同じ手法は採用していない。このフロントウイング処理は、いまのところどちらが正解とも言えないが、19年シーズンが進んでいく上でのひとつの開発キーとなるのではないか。
SF90に関して、ベッテルと新加入のシャルル・ルクレールは、「乗りやすいマシン」だと口をそろえた。この乗りやすさが、もしかするとSF90が現状メルセデスに差をつけている部分かもしれない。SF90最速説の最大の根拠は、実はテスト最終日の1日前にある。
この日はフェラーリのルクレールが終日、メルセデスはバルテリ・ボッタスが午後のドライブを担当。同じピレリの硬い側から2番目の「C2」タイヤを履き、同じ時間帯に両チームがレースシミュレーションを行なっていた。この際のラップタイムペースが、1周につき約0.25秒もフェラーリがメルセデスを上回っていたのだ。これをレース距離に換算すると、16.5秒差となる。
なおボッタスは、一発のタイムを出すことにも苦慮していた。最終日のベッテルとの1000分の3秒差は、ハミルトンだからひねり出せたものかもしれない。ベッテルとルクレールのベストが100分の1秒差に留まるのに対し、ハミルトンとボッタスのギャップはコンマ3秒以上だ。
ただ、フェラーリは昨年も一時期、メルセデスより速いマシンを持っていた。盟主奪回なるかは、開発、ドライバー、マネージメント、チーム力のすべてを今後も高い次元でそろえなければ、かなうものではない。
■F1プレシーズンテスト総括(2)に続く