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2019年は「折り畳み型スマホ元年」となるか? Apple参戦の気配も前途は多難

2019年03月02日 15:31  リアルサウンド

リアルサウンド

 Samsungの「Galaxy Fold」とHuaweiの「HUAWEI Mate X」が発表されたことで、ついに「折りたたみスマホ」という製品カテゴリーが誕生した。このカテゴリーをけん引するのは上記2社であることは間違いないものも、実のところ、ほかのメーカーも参戦しそうだ。ただ、市場の立ち上げに際してはいくつかの問題もあるようだ。


(関連:HUAWEI、注目の折り畳みスマホ『Mate X』を発表 Samsungとの一騎打ちに?


■中華系メーカーが奮闘
 先月末、スペイン・バルセロナにおいて世界的なモバイル機器の見本市MWC(Mobile World Congress)が開催された。同見本市では世界各国のモバイル機器メーカーの展示ブースが立ち並ぶので、その年のモバイル機器のトレンドを確認できる。今年は予想通り、折りたたみスマホの展示や発表があった。モバイル機器および家電のニュースを専門とするメディア『BGR』は、同見本市で確認できたSamsungとHuawei以外のメーカーの折りたたみスマホに関する取り組みをまとめた記事を公開した。


 件の製品カテゴリーに関する取り組みでは、中華系メーカーが世界をリードしている。MWC開催前の動向としてはRoyoleが世界初の折りたたみスマホをリリースしており、Xiaomiは今年1月にティザー動画を発表している。MWC開催中にはOppoがティザー画像を中国最大のSNSであるWeiboに投稿した。また、TCLも2020年に少なくとも1つの折りたたみスマホをリリースする、という報道があった。


 中華系メーカー以外では、Motorolaが今年の前半には折りたたみスマホをリリースと発表した。また、韓国メーカーLGは、MWC開催の数日前に少なくとも今年は折りたたみスマホをリリースしない、とコメントした。しかし、このカテゴリーのスマホをいつでもリリースできる準備がある、とコメントを補足している。


■「折りたたみiPhone」を計画中?
 折りたたみスマホに関しては、Appleも水面下で取り組んでいると見られている。というのも、折りたたみスマホに関する同社の特許が多数確認されているからだ。そうした特許には、昨年7月に報じられた折りたたみ部分の素材にガラスとポリマーの両方を使うというものがある。


 Apple製品ニュース専門メディア『Appleinsider』は、先月28日、同社の折りたたみスマホに関する新たな特許が発行されたことを報じた。報じられた特許は、ディスプレイの折りたたみ部分を加温する機構についてのものだ。特許の説明によると、気温が低い状況下では折りたたみ部分が壊れやすいため、何らかの破損防止対策が必要である、とのこと。そこで考えられた対策とは気温が低い場合には折りたたみ部分を加温する、というものだ。具体的には、加温処理を行うかどうか判定する温度センサーを実装したうえで、加温が必要な時はスクリーンセイバーで輝度の高いグラフィックを表示して熱を発生させるという仕組みが説明されている。


 もっとも、Appleは毎週のように特許の申請と取得を繰り返しているので、以上の特許を取得したからといって実際に採用される保証は何ひとつない、と同メディアは述べている。


■市場関係者は辛口
 以上のような立ち上がりつつある折りたたみスマホ市場を、市場関係者はどのように見ているのか。調査会社Canalysは、先月25日、同市場に関するレポートを発表した。そのレポートによれば、2019年に出荷される折りたたみスマホの出荷数は200万台と予想される。しかし、各メーカーはこの製品カテゴリーのスマホが高品質で耐久性にも優れていることを証明しなければならない。もし折りたたみディスプレイの劣化や破損の事例が重なれば、市場を形成するチャンスを逃すだろう、と評している。


 総合メディア『The Week』には、先月28日、折りたたみスマホの問題点を指摘する記事が掲載された。同製品カテゴリーが抱えるいちばんの問題は、価格が高すぎることだ。例えばGalaxy Foldは約2,000ドル(約22万円)、HUAWEI Mate Xは約2,600ドル(約29万円)であり、高いと言われたiPhone XS Maxの512GBモデルの1,449ドルよりもさらに高い。また、折りたたみスマホに最適化されたアプリが革新的であることも必要だと述べている。テック系メディア『Extreme Tech』が公開した折りたたみスマホ考察記事では、前述のふたつの問題点に加え、やはり通常のスマホより壊れやすいことが難点だと評している。


 折りたたみスマホが今年のトレンドとなる見込みは、極めて高い。しかし、製品カテゴリーとして定着するかどうかは、予断を許さないだろう。


(吉本幸記)