バルセロナで開催された2019年のF1プレシーズンテストで快調な滑り出しを見せたかに思われたレッドブル・ホンダだったが、最後は負の連鎖に陥るように不本意な形で8日間のテストを不完全燃焼のまま終えることになってしまった。
事の発端は最終日前日のピエール・ガスリーのクラッシュだ。これによってマシンは大きなダメージを受け、テスト第2週に投入したバージボードやフロアなどの新型空力パーツにはスペアが用意できていなかったため、最終日のマックス・フェルスタッペンは発表会仕様の空力に戻して走らざるを得なくなってしまった。これではより正確で有益なデータ収集は難しい。
さらにギヤボックスも交換することになったが、第1回テストの2日目にガスリーがクラッシュした際、すでに2基目に交換しておりスペアパーツはかなり枯渇した状態になってしまった。
マシンを丸ごと用意し直すような大がかりな作業を夜通し行ない、レッドブルのクルーは午前9時38分に作業を完了させてフェルスタッペンをコースへと送り出した。
フェルスタッペンは6周、15周、29周と周回を重ねてテストを進めていったが、前日と同じようにギヤボックスにトラブルが起き、今度は修復するためのスペアパーツが足りず、これ以上の走行を断念しなければならなくなってしまった。
「チームのみんなは昨日の夜に素晴らしい仕事をしてくれてマシンを修復してくれて、今朝はテスト開始から30分を失っただけで走行を開始することができたんだ。だけど残念なことにパーツが足りなくなってしまってこれ以上走ることができなくなってしまったんだ」
ガスリーは不注意から2度もクラッシュを演じ、テストで最もやってはならないマシンダメージをもたらし、チームのテストプログラムを大幅に止めてしまった。
そのことについてフェルスタッペンは「テストではパーツの数が限られているのは良くあることだし、そんな中で僕らはすでに2つもギヤボックスを壊してしまっていたから理想的とは言えないよね」とさりげなく非難している。
ガスリーが2度に渡ってコントロールを失ったことでRB15のマシン挙動がセンシティブなのではないかとの見方もあるが、2018型を知るフェルスタッペンに言わせれば「昨年型よりも良くなっていて僕は気持ち良く走れるし全く問題ない」という。
■走行切り上げの影響でホンダ製パワーユニットのデータ収集にも支障
実際にターン12の加速地点でスロットルコントロールをミスしてスピンしたり、ターン9の入口で縁石にタイヤを落としてスピンするなど、いずれも不注意によるクラッシュだったのだから、責められても仕方のないところだ。開幕を前にしてすでにチーム内でのガスリーの立場が苦しいものになったことは間違いない。
パワーユニット面に関しても、ホンダは単一のスペックでできるだけ長く走行し耐久性を確認しようというアプローチだったが、ガスリーのクラッシュによってパワーユニット交換を余儀なくされ、いきなりその計画にズレが生じてしまった。
テスト3日目から新品に載せ換えて再び走り始めたものの、7日目のクラッシュでさらに大きなダメージを負ってしまったため比較データを収集するにも支障が出てしまった。そして再度投入した最終日の新品は僅か29周しか走るチャンスが与えられなかった。
ホンダの田辺豊治テクニカルディレクターは「ホンダとしてやろうと考えていたことはほ全てこなせましたし、あとはそのデータとハード解析を元にさらにキャリブレーションを熟成していきます」と語ったものの、レースシミュレーションを完走していないことやレッドブルとの予選シミュレーションが充分でないことには不安が残る。
車体側でも新型空力パッケージでのデータ収集を充分に行ないきれなかったなど、ガスリーの不用意なクラッシュがもたらしたネガティブ要素は大きい。
開幕戦までの限られた時間の中で、実走を行なうことなくどれだけそれを挽回することができるのか。レッドブルとホンダそれぞれの努力とシミュレーション能力に掛かっていると言えそうだ。