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ちゃんみなが語る、国籍やカテゴリに縛られない生き方「“機会”を奪うようなことはして欲しくない」

2019年03月01日 19:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 ちゃんみなが、2月27日に1stシングル『I’m a Pop』をリリースする。表題曲は”ジャンルレス”をテーマに掲げており、MVにも性別、国籍などを問わないダンサーを起用。また、初めて1曲の中で日本語、英語、韓国語の3カ国語を織り交ぜたリリックとなっており、何事もジャンルでカテゴライズすることへの違和感、無理やり枠にはめられることの息苦しさなどがアンチテーゼ的に表現されている。


参考:DAOKO、あっこゴリラ、ちゃんみな……最新作のラップ表現とサウンドの特徴を解説


 『BAZOOKA!!!高校生RAP選手権』(2016年)に出場して注目を集めてから約3年、ちゃんみなは昨年20歳を迎えた。本人曰く“第2章のスタート”だという同作には、どんなメッセージが込められているのか。ひとつの節目を迎え、さらなる進化を遂げようとしている彼女の等身大の言葉を聞いた。(編集部)


■「ジャンルに縛られるのは嫌なんです」


ーー『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2018』でのパフォーマンス、会場で見ていました。ちゃんみなさんが登場したBUZZ STAGEはRHYMESTERやCreepy Nuts、またはアンジュルムといった非バンド勢も登場しましたが、それでもイベント自体として“ロックバンド”が中心になっているので、ちゃんみなさんのダンサーを伴ってのステージングはやはり“異質”にも感じました。出演してみていかがでしたか?


ちゃんみな:想像してたよりも観に来てくれる人も多かったし、ノリもみんな分かってたんで、ライブ自体がやりにくいことはなかったですね。でも正直、スゴくアウェイだなっていう空気感も感じました。だけど、アウェイの方が燃えるんですよね、私は。以前、アイドルが中心のイベントにも出させていただいたことがあって、それこそ本当にアウェイで、誰も私のこと知らない、みたいな。でもそういう時こそ燃えるし、『RIJF』でも、もう「観て観て!!」って感じで(笑)。


ーーアウェイの方が燃えるのは?


ちゃんみな:負けん気だと思います。私のことを知らない人もまだ多いし、知ってくれてる人でも、「『BAZOOKA!!!高校生RAP選手権』(高ラ選)から出てきた、毒舌のギャルっぽいラッパーでしょ?」っていうイメージで止まってる人も多いと思うんですよね。でも、そういう人がいまの私のパフォーマンスを見て、「ハマりました」とか言ってくれると、やっぱり自分でも勇気がもらえるんですよね。だから、とりあえず聴いてみてよ、っていう気持ちなんだと思いますね。


ーー『高ラ選』にちゃんみなさんが出たのは約3年前になりますが、未だにそのイメージで捉えられたり。


ちゃんみな:それからバラエティ番組に出させてもらったときの、フリースタイルのイメージだったり。全員が自分のヒストリーを丹念に追ってくれるわけじゃないし、一部だけを見て判断する人もいるのはしょうがないとは思うんですけどね。だから常に頑張らないとなとも思います。


ーー今お話されたような“イメージでカテゴライズされること”というテーマは、今回の「I’m a Pop」にも通じますね。


ちゃんみな:ずっと私のメモ帳には、このテーマがあったんですよ。それで、このテーマのようなことに出会ったり、感じた時に、リリックを書き足していってて。それを書き溜めたページがパンパンになってきてて(笑)、それで、そろそろ曲にしたいな、って。


ーーそれは例えばどんな事柄?


ちゃんみな:世の中からヒップホップの子、って思われることが多いんですよね、やっぱり。でも、ヒップホップサイドからは、あの子はヒップホップじゃない、ポップスだって言われたり、『LADY』をリリースしたときは「もうラップ辞めたんですか」とか。もっと言うと、私に韓国の血が入ってるってだけで、K-POPのパクリだ、とか言われたりとか。そういう積み重ねの中で、ラッパーやアーティストってそんなに“縛られる”職業なんだって歯がゆさが強くなっていって。それがこの曲になっていったんです。


ーーその意味では、この曲は“自分は自分というジャンル”という引き算の視座ではなく、“自分は全てのジャンルを横断する”という足し算の視点で描かれていますね。


ちゃんみな:私自身、いろんなジャンルの音楽を聴くんですよ。最近はNICKELBACKにハマっているし、自分の音楽史の中で、めちゃめちゃ尊敬しているのはアヴリル・ラヴィーン。私の「おらー!」みたいな負けん気の部分はロックの影響だと思うし、私の魂はロックだと思ってます(笑)。怖いもの知らずな部分はヒップホップからの影響が大きいし、家族を愛したり、友達を大事にするのは、ポップスからの影響だと思う。だからこそ、どんな音楽でもやりたいし、何かのジャンルに縛られるのは、私は嫌なんですよね。


ーーそういう“カテゴライズしてくること”に対するフラストレーションが、この曲に繋がっていったと。


ちゃんみな:他のアーティストさんもみんな少なからず感じてることだと思いますね。自分の力不足もあるとは思うんですけど、それでも、ある特定の枠に押し込めようとする人にはムカつくし、正直、そういう人には私の音楽は聴かなくていいよ、と思う。最近って、クレームがスゴイじゃないですか。クレームを言う人が増えすぎて、いろんなモノがダメになったり、出来ないことが増えていってると思う。音楽に関しても「このジャンルとは本当は……」とか、「あなたはこのジャンルから出るな」みたいなことが多かったり。内容に関しても「この曲で誰かが傷ついたらどうする」「このMVを真似したらどう責任を取るんだ」……みたいな。それによって音楽の表現が狭められてる部分が大きいと思うんですよね。


ーーいわゆる“~~警察”とか“お気持ち問題”であったりは、SNSでも議論や炎上の種になりがちですね。


ちゃんみな:意見を発信できることはいい部分もあるとは思うんですけど、悪い部分も目立って来てるんじゃないかなって。だから、せめて自分のファンの人には、そういうことをしないで欲しいってよく言っていて。それは私の表現だけじゃなくて、他のアーティストの表現に対しても。誰かが作ったものに対して、それを簡単に否定したり、腐さないで欲しいと思うんですよね。“機会”を奪うようなことはして欲しくないなって。


■「次の時代は私達に任せな、もう黙ってなって」


ーートラック的にはTRAPを採用していますね。


ちゃんみな:サビで〈I’m a pop/I’m a rock/and I’m a hiphop〉ってラップすることは決めていたんですけど、そういうメッセージ性のある曲に、どういう音をはめようかなと思ったとき、いろんなジャンルのサウンドを一曲の中に落とし込むっていうのもアイデアとしてはあったんです。でもその方向性じゃなくて、TRAPビートにしたのは、ヒップホップとポップスが一番(日本では)相性が悪いと思ったからなんですよね。だからその2つを組み合わせたのは、皮肉っていう部分もあります。


ーー両極をぶつけることで、そこに今の日本のシーンに対するアイロニーが生まれると。いわゆるマンブル的なアプローチのラップスタイルも、日本ではポップスとしてはまだ受容されていません。


ちゃんみな:基本的にはこのトラックに合うラップを考えた時、マンブルなラップによって呆れてる感じを出したかったという感じもありますね。


ーーこの曲の内容をハードなラップで表現すると怒りの感情を感じてしまうけど、マンブルなラップによって、リリックにあるように、息苦しいその状況と感情を表現しているとも感じて。また、それは日本の中では皮肉になるけど、例えばTRAPとマンブルラップがメインストリームの中で大きな比率を占めているUSであれば、この曲の構成は非常にポップスとして整合性が高くなりますね。その構造も興味深かったです。この曲の中では、韓国語でラップもされていますね。韓国語、英語、日本語という、トリリンガルで楽曲が表現されているのはちゃんみなさんのバックグランドにも基づいてると思うし、キース・エイプや88rising勢との共通点も感じて。


ちゃんみな:あえてですね。この曲は音楽のカテゴライズの話であると同時に、自分の国籍の話でもあるんですね。私は母親がコリアンだから言われることもあって。それはSNS上とかでも。


ーー明確なヘイトスピーチを投げかけられる、と。


ちゃんみな:最近の情勢も影響してると思うんですけど。そういうことは生まれたときから受けてきたものだったんで、そういう状況もリリックに落とし込めればなって。でも、それに対して怒ってるというよりは、3カ国が喋れて良いでしょ、羨ましいでしょっていう風に捉えて。やっぱり昔はお母さんを責めたこともあったんですけど、お母さんのおかげで韓国語を喋れるし、この曲を通して、音楽はどの国のものでもないし、どのジャンルのものでもないし、ってことを言いたかったんですよね。少なくと誰のものかっていうのを判断するのは、お前の仕事じゃないから! って。MVの中でも女性とキスするシークエンスを入れていただいたのも、そういう意識の上でなんですよね。


ーーというと?


ちゃんみな:「Doctor」のMVに、ライブでも踊っていただいているオネエダンサーズを登場させたら「ヒップホップはゲイのものじゃない」って叩いてくる人がいたんです。


ーー……本当にいろいろとつまらないことを取り上げて難癖つける人がいるんですね。暗澹とした気持ちになります。


ちゃんみな:不思議なくらい多いですよ。自分の家族みたいな友達にもLGBTの人はいるし、LGBTを否定するっていうのは、なんなんだろうって。それはスゴく悲しいし、自分は差別しないっていう意思として、そういう表現をMVに入れて。たぶん、そういう(差別的な意見を言ってくる)のって、年配の人も少なくないと思うんですよね。はっきり言って、もう放っといてと思うし、次の時代は私達に任せな、もう黙ってな、って。若い世代が時代を、何事も作るんだと思うし、そこにうちらの番が来てるんだと思う。ただ、それを口でいうだけじゃなくて、それに説得力を持たせるために、もっと行動したり、頑張らなくちゃいけないと思うし、それが出来れば、新しい波が起こせるんだと思いますね。同世代には闘争心がある人が多いし、そういう仲間とつながっていきたいですね。


ーー他の収録曲に目を移すと、「Never」はバラードとなっていますね。


ちゃんみな:これはLAで作った曲なんですけど、そういう気分だったんですよね。私の曲って人生の日記で、全部が実話なんですね。その中の一部ですね。こういうことがありました、っていうか、書き留めておきたかったことです。だから、この曲を書いたときは……恋してたんでしょうね、恥かしいからこれ以上言いませんが(笑)。


ーーちゃんみなというアーティストの楽曲は、やはりドキュメントなんですね。「Sober」はよりパーソナルな感触があります。


ちゃんみな:そうですね。1ヴァース目は、アルバム『CHOCOLATE』に収録した「LAST NIGHT」の1ヴァース目を引用してるんですね。だから、その曲の続編であり、まあ、あの曲で書いてたことがうまくいかなかったね、っていう事後報告です(笑)。相手が聴いたら傷つくかな……と思うんだけど、しょうがないですね(笑)。


ーーサウンド的には、TRAP、バラード、ポップス/ハウスとバランスが取られていますね。


ちゃんみな:EPという単位でリリースするのが久しぶりだったので、結果的にという部分はあるんですが、バランスの良いものになったと思います。


ーー「Doctor」はイングリッシュバージョンという形で収録されています。


ちゃんみな:18歳でデビューして、10代のうちが第一章、いまハタチになった自分は第二章だと思ってるんですよね。だから、ハタチになる直前に作った「PAIN IS BEAUTY」は第一章の終わり、今回の『I’m a Pop』からが第二章の始まり。その上で、第二章は積極的に海外に行ったり、より格好いいもの、アーティスティックな方向に行きたいと思ってるんですね。そう考えていたときに、時間差で、海外から「Doctor」のMVのに対する反応がスゴく増えて、コメント欄が英語ばっかりになったり、少女時代のヒョヨンちゃんがインスタ(Instagram)のストーリーに上げてくれたり。そういう流れもあったし、この歌詞は私にとってスゴく大事な歌詞なので、英語に直して、より海外にも伝わる形にしてみたかったんです。


ーーでは、第二章はどんな形になりそうですか?


ちゃんみな:2018年は自分にとって準備期間的なイメージもあったんで、そこで積み上げて来たものや準備したものを、第二章ではより形にしていきたいなって。それはリリック、サウンドというよりも、私自身の変化。だから10代のころとはリリックは変わると思うし、20代だからこそ、今だからこそ書ける内容だったり、楽曲やサウンドだけじゃなくて、パフォーマンス、ファッション、ヘアスタイル、ライブも“進化”させていきたいって思ってます。


ーーそれは3月に東京/大阪で行われるライブ『THE PRINCESS PROJECT 3』でも形になりますか?


ちゃんみな:今回のライブは、テーマが“第二章スタート”なんですよ。だから今までよりもアーティスティックな、よりアーティストとしての表現を見せたいなって。今までのちゃんみなの面影はもちろんあると思うし、それを残しながらも、もっと進化した姿を見せていきたい。なんというか……ガチでやります!(笑)。(高木“JET”晋一郎)