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ホラー/スリラーのマエストロたちが集結! 『アンフレンデッド:ダークウェブ』の恐怖のアイデア

2019年03月01日 16:01  リアルサウンド

リアルサウンド

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 昨年公開された映画『クワイエット・プレイス 』の「音を立てたら、即死」が記憶に新しいように、「◯◯したら死ぬ」という設定やキャッチコピーを近年よく耳にするようになった。もちろん昔からホラー映画というのは何かをしたら殺されるのだが、その◯◯に入る言葉がより身近で生きていく上で回避不可能なものになってきている。


参考:“母の命”か“恋人の命”、究極の選択を迫られる 『アンフレンデッド:ダークウェブ』本編映像


 例えば、前述した『クワイエット・プレイス』のほか、『ドント・ブリーズ』も音、『バード・ボックス』は見ること、『ライト/オフ』は消灯、『バイバイマン』は考えたり名前を口にするだけで死んでしまう。


 かつては、『13日の金曜日』のジェイソン、『エルム街の悪夢』のフレディ、『悪魔のいけにえ』のレザーフェイス、『リング』の山村貞子、『呪怨』の佐伯伽椰子&俊雄などホラーアイコンたちが名を馳せていたが、近年はリメイク・リブートを除き「得体の知れない何かが、日常生活を脅かしてくる」というのがホラー映画においてブーム化していると言えるだろう。


 そんな「◯◯したら死ぬ」系映画に新たに参戦したのが、3月1日から公開される『アンフレンデッド:ダークウェブ』だ。本作は2016年に日本公開された『アンフレンデッド』の続編。昨年公開された全編PC画面上で展開される『search/サーチ』のプロデューサー、ティムール・ベクマンベトフが1作目に引き続き製作を担当している。


 『アンフレンデッド:ダークウェブ』は続編といえども、PC画面上で何かに襲われるという設定以外でストーリー上の繋がりはない。むしろ本作のほうが「得体の知れない何か」による恐怖が上がっていると言えるだろう。


 前作『アンフレンデッド』は、恥ずかしい動画をアップされ、それを苦に自殺した女子高生ローラ・バーンズの霊が、いじめに加担したメンバーに襲いかかるという内容だった。いじめっ子たちが受ける残虐行為は因果応報といっても過言ではなかったが、本作は違う。主人公・マタイアス(コリン・ウッデル)が、ネットカフェの落とし物にあったパソコンを拾ったことにより、持ち主の恨みを買い、マタイアスのSkype仲間までもが危険に晒されるのだ。


 マタイアスが拾ったパソコンの隠しフォルダには、女性が監禁されていたり、ドラム缶に閉じ込められていたりと、ショッキングな動画が大量に保存されている。さらにそのパソコンでは、ネットの裏世界といわれる“ダークウェブ”に繋ぐことが可能で、クライアントが要求するおぞましい動画が取引されている。そんな危ない情報を、ひょんなことから手に入れてしまったマタイアスと友人たち。持ち主からは「通報したりネットの接続を切ったら殺す」と脅される。「パソコンを拾っただけなのに」、こんな目に遭うなんて非常に理不尽な人生だ。


 1作目を振り返ってみると、幽霊ローラ・バーンズはミキサーに手を突っ込ませるなど、慈悲のかけらもないやり方で襲いかかってきたが、「いじめっ子に仕返ししたい」という強い思いから関係のない人は巻き込まず、当事者のみをターゲットにしてきた。一方、本作の“ダークウェブ”の人間は、顔も名前も居場所も不明、さらにマタイアスの耳の聞こえない恋人アマヤや、入院しているマタイアスの友人の母親などゲームに参加していない人々までをも巻き込んでいく。


 実は人間は、昔から正体不明のものに怯える傾向がある。江戸時代までの灯りのない時代は、真夜中の暗闇には魑魅魍魎(ちみもうりょう)がうごめくと恐れられ、科学が発展した現代、とくに日本ではウイルスを恐れマスクをする人が絶えない。恐怖を感じたとき、危険を回避しようとするのは人間の本能である。


 ホラー映画においても“恐怖の対象”の謎が深まれば深まるほど、本能的に観客の好奇心が高まる。「なぜ死ぬのか」や「どうやったら生き残ることができるのか」という疑問を、映画館という安全が保証された環境で恐怖を疑似体験しながら、問題解決する。さらに、それはある種の快感にも繋がる。アイデアや魅せ方が斬新であれば、有名な俳優や監督を起用しなくとも大ヒットが見込めるのがホラー映画の面白いところだ。


 ティムール・ベクマンベトフに加え、『パラノーマル・アクティビティ』『パージ』『ヴィジット』『ゲット・アウト』などを手掛けてきた天才プロデューサー、ジェイソン・ブラム、そして『THE JUON/呪怨』のスティーヴン・サスコなど、ホラー/スリラーのマエストロたちが集結した本作。『search/サーチ』ではネットを最大限に駆使して娘の命を救ったが、『アンフレンデッド:ダークウェブ』では良かれと思って利用したサービスが人を殺す引き金になるなど、日常生活で思いもよらない恐怖のアイデアが散りばめられている。(文=阿部桜子)