2月28日、午後3時16分。カタルーニャ・サーキットが騒然とした。高速右コーナー、ターン9のバリアに突き刺さり大破したレッドブルRB15の姿が映し出されたからだ。
バルセロナ合同テスト2週目の3日目はピエール・ガスリーがRB15のステアリングを握り、ピットガレージからスターティンググリッドに就くことを想定したアウトインラップやフォーメーションラップを含めたフルレースシミュレーションを行った。
まず昨年のオプションタイヤであるソフトにあたるC3タイヤで第1スティントを走り、1分23秒台中盤から1分25秒台までのタイムを刻み、15周目にピットイン。C2タイヤに履き替えて走り始めた3周目にターン9で飛び出してしまった。
ガスリーは自分のミスだと認めた。
「ターン9でミスを犯して、マシンのコントロールを失ったんだ。ほんの少し、10cmか15cmだけワイドに入っていってしまった。それでターンインした瞬間にリヤを失ったんだ。何が起きたかは見ての通りだ。メカニックのみんなにとっては今夜は長い夜になるだろうしチームのみんなに申し訳ないよ」
まさに2018年スペインGPのフリー走行3回目でブレンドン・ハートレーが大クラッシュを演じたのと同じミスだった。
無理にプッシュするような場面ではなかったが、前週のターン12でのクラッシュに続きガスリーにとっては早くも2度目の自損事故となった。
「ものすごく大きな衝撃だったし、僕が今まで経験した中で最も大きなクラッシュのひとつだったと思う」
リヤからやや斜めにぶつかったこともあり、パワーユニットには大きなダメージを負っていたため交換を余儀なくされてしまった。
ホンダの田辺豊治テクニカルディレクターは次のように説明する。
「2018年の時とは違って斜めにぶつかって、ギアボックスをテコのようにして力がコンポーネントに掛かり、あの時以上のダメージを受けることになってしまいました。明日に向けて新品のパワーユニットに交換します」
レース状況を想定したセッティングとレース運用のテストを行っていたホンダ陣営だが、並行して確認したかった耐久性のテストはまたしても予定変更。結局、トロロッソ側が無交換で走り続けたのに対し、レッドブル側はクラッシュという外的要因による交換で、1日半、4日半、1日という使用距離の異なる3基が生じることになった。ある意味ではこれも比較データ取りになると言える。
■ガスリー、「現状ではフェラーリに届かない」と認める
それよりも深刻だったのはフェラーリが1分16秒231というタイムを記録し、驚異的な速さを見せたことだ。現時点でのマシンパッケージとしてはこれに及ばないとガスリーは認めた。
「正直言って、無理だったと思うよ。彼らはとても良いかたちでテストを進めているし速さを見せている。RB15は良いクルマだし、ここまでいろんな項目をテストしてきたし僕らにもポテンシャルはあると思うけど、最速の存在ではないかもしれない。フェラーリはかなり速いように感じられるから、僕らもかなりのハードワークが必要になるだろう」
一発のアタックラップでは、燃料差は外からは分からず、燃料を搭載して走れば実力をある程度隠すことができる。しかしレースシミュレーションではタイヤのライフに合わせてどのチームも燃料搭載量が概ね揃うことから、ラップタイムの比較はマシンのパフォーマンス比較に直結する。
この日のフェラーリとレッドブルのレースシミュレーション走り始めのタイムを比較すると、0.7~1秒の差があった。フェラーリがC2、レッドブルがC3を履いていたため実際には0.7秒ほど差は縮まるが、それでも0.3秒ほどの差が残るのは確かだ。
ガスリーがクラッシュした第2スティントはレースシミュレーションの中でプッシュするような場面ではなかったが、マックス・フェルスタッペンとのチーム内闘争だけでなく、対フェラーリの戦いも意識したがゆえの結果だったのかもしれない。
いずれにしてもガスリーは8日間のテストで2回目のクラッシュであり、パワーユニットを2基壊してしまった。シーズン本番ではないとはいえ、テストプログラムへの影響を考えれば決して褒められたことではない。地に足を付けてトップチームの戦い方を習熟するとしていたが、思わずそれを忘れてしまったことになる。
チームとしてもフェラーリとの差を突き付けられたかたちとなったうえに、前日のギアボックストラブルと合わせてまだ一度もレースシミュレーションを完走することができていない。最終日はそれをしっかりと完遂し、開幕戦に向けた準備を整えたいところだ。