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『ナカイの窓』は心優しきガキ大将が仕切る草野球のよう? 中居正広のMC力を振り返る

2019年03月01日 06:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 中居正広がMCを務めるバラエティ番組『ナカイの窓』(日本テレビ系)が、3月6日に「最後のスタジオ 酒飲みSP」を放送する。放送開始からの7年間をまとめたボードを肴に、思い出を語り合うというのだが、予告映像では中居が「最終回でしょ?」と訝しげに問いかけていることから、このまま番組終了なのか、それとも……と、ファンの心をざわつかせている。


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 『ナカイの窓』は、実にバランスのいい番組だ。もし最終回ということであれば、こんなに寂しいことはない。1週間の真ん中で、まだまだ頑張らなければならない水曜深夜。過激なお笑いも、心を痛める報道も、ちょっぴりヘビー……そんなときに、中居が繰り広げるトーク番組の安心感たらない。その雰囲気をたとえるなら、心優しきガキ大将が仕切るグラウンドで繰り広げられる草野球を見ているようだ。


 いつもおなじみの芸人たちはもちろん、“知る人ぞ知る”な世界から来たゲストも、同じように「入れよ!」と誘って、トークのキャッチボールをしていくかのごとく、その回集まったメンバーで楽しいひとときを過ごす。このオープンな空気は、きっと中居が日ごろ「苦手な人を作らないために、得意な人を作らない」というMCの極意があるからこそだろう。


 直近の放送を振り返ると、「世直しの窓 第2弾」(2月27日放送)では、陣内智則、ヒロミ、バカリズム、指原莉乃と、バラエティの名プレーヤー揃い。そんな回は、コンビニやバラエティ番組、ネット社会などに感じた、世の中への不満を好き勝手にぶちまけていく……ようで、よくよく聞くと非常によくできた“あるある”ネタになっている。


 彼らは、視聴者も常日頃「それ思っていた!」という球に狙いを定めて打つことができるし、「それはこの人だからこそ(言えること)」という球もストレートに投げ込んでくる。そんなメンバーが集まった回は、ゲストがしっかりと受け止めることを信じて、中居も「滝沢秀明との不仲説」「貯金100億円」など際どい球で攻めて、その場を盛り上げていくのだ。


 一方、女性医師やイマドキ女子、◯◯で働く人……など芸人以外のゲストに対しては、一人ひとりのポテンシャルを確かめるように、丁寧なキャッチボールからスタート。そして、次第にキャラに応じた速度の球を投げていくのがわかる。少しディープな内容に偏ってきたと感じたときには、中居がアイドルらしからぬ女性ネタなどを披露することで、ゲストだけにその空気を背負わせない振る舞いも。もちろん、そんなときはゲストMCの芸人メンバーが、中居の意図を察してツッコミを入れるリズムの良さも、長年続けてきたこの番組だからできること。


 また以前、中居が女性芸人とあわやキス、という流れになったとき、バラエティではお約束のようになっている罰ゲーム的な嫌がり方はしなかった。「大事にしなよ~」と女性芸人に対して、そんなふうに軽々しくキスなんてやめたほうがいい、という流れに持っていき、その場を収めたのを覚えている。中居の態度は一見するとぶっきらぼうだが、そこには相手への愛があるのを感じる。自由に楽しくプレーするゲストはのびのびとしてもらい、輪の入り方がわからないゲストには愛あるイジりをしながらも、決してヨゴレ役にしない。常にゲストが入れ替わる『ナカイの窓』では、そのスタイルが特に光って見えた。


 そんな誰もが参加して楽しいホームグラウンドが、なくなってしまうかもしれない。そう思うと、やっぱり手放したくない気持ちになる。せっかくこんなに温かい場所ができたのに、と。3月6日放送回では、これまで295回放送されてきた中での名場面を、一挙に大放出するという。最終回ならずっときてほしくない、けれど最新回は待ち遠しい。そんな複雑な気持ちで、オンエアを楽しみにしている。(文=佐藤結衣)