イギリス在住のフリーライター、マット・オクスリーのMotoGPコラム。MotoGPオフィシャルテストで見えた各メーカーの動きをオクスリーが分析する。
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2019年に向けたホンダの主な焦点が、ホンダRC213Vのフロントとエンジンにある。フロントに関しては、タイヤ選択の幅を広げること、そして、エンジンはトップスピードの改善だ。
マルク・マルケスのライディング技術とRC213Vの構造は、フロントタイヤに大きな負荷をかけるため、マルケスはほぼ毎回のレースでハードタイヤを使わなければならなかった。
そのため、マルケスはフリー走行でもハードタイヤを使わざるを得ない。それが、彼が頻繁にクラッシュする理由だ。
ハードタイヤは扱いが難しいのだ。ハードタイヤではグリップが続いても警告がないのでクラッシュしてしまう。一方、ソフトタイヤはグリップしてからクリープ(ブレーキを離すと前に出ていく現象)し、アスファルトにブラックマークをつけることで、1000分の1秒の時間でライダーに警告を与える。その一瞬の時間のおかげで、ライダーはクラッシュを防げるのだ。
「なぜフロントタイヤにこれほど取り組むのかをいまだに分析しているところだ」とマルケスは語る。
「ハードタイヤならより速さを出せるかもしれないが、タイヤが硬いから危険を察知しづらい。ソフトタイヤを使えば、限界をより感じ取ることができるんだ」
2019年型RC213Vは、ジオメトリーの小さな変更、フレーム剛性の微調整、内部にあるオーリンズ製フォークの変更などがあったが、大きな変更はないだろう。新型バイクによるフロントタイヤの使い方の違いは大きくはないが、すでに正しい方向への一歩となっている。
「新型シャシーはとても似ている。僕たちは解決に近づいているし、フロントは今ではそれほど重大な状況ではなくなっている」とオフィシャルテストをミディアムのフロントタイヤで多く走行したマルケスは語る。
■2019年型RC213Vの最も大きな違いはエンジン
ホンダのもうひとつの大きな焦点はエンジンだ。たとえ2018年シーズンのエンジンが大きな改善を遂げていてもだ。
トップスピード差は小さくても差は差である。特にレースが接戦である場合、また、オーバーテイクを仕掛けるためにエンジンパフォーマンスが不可欠な場合はなおさらだ。
「ドゥカティのエンジンパフォーマンスは今も我々より高い。だから2019年にはさらに加速力が必要になる」とHRCのディレクターを務める桑田哲宏は認めている。
2018年シーズンは、ホンダが逆回転クランクシャフトを備えたビッグバン型エンジンの構成を使用してまだ2年目のシーズンだった。だから内部や燃料、マッピングなどにおいてさらに改善が図られることに疑いはない。
そしてスペインで行われたヘレステストで2019年型RC213Vに初めて乗ったマルケスは、2019年シーズンにストレートラインでより優れたパフォーマンスを出せることを確信した。
「新型バイクの最も大きな違いはエンジンだ」とマルケスは語る。
「新たな進化だし、改善されている。でもマシンを理解し、作業をする必要がある。エンジンの性質にそって電子制御を適応させなければならないからね」