トップへ

DL違法化「必要な議論尽くされた」「バランスの取れた内容」…文化庁の説明資料入手

2019年02月28日 12:01  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

記事画像

ダウンロード違法化の範囲を拡大する著作権法改正案をめぐり、文化庁が「必要な議論は尽くされた」「バランスの取れた内容になっている」という考えを示していることがわかった。2月22日の自民党の合同会議で配布された資料で明らかにされた。改正案をめぐっては、著作権法などの研究者や弁護士が反対しており、波紋を広げそうだ。


【関連記事:「田中の対応最悪」社員名指しの「お客様の声」、そのまま社内に貼りだし公開処刑】



●研究者が「さらなる慎重な議論を重ねるべき」と声明を発表していたが・・・

自民党の文部科学部会・知的財産戦略調査会合同会議は2月22日、文化庁がまとめた著作権法改正案を了承した。(1)違法アップロードされた漫画など、あらゆるコンテンツについて、海賊版と知りながらダウンロードすることを違法とする、(2)正規版が有償で提供されているものを継続的にダウンロードする場合は「刑事罰」の対象とする――という内容だ。



弁護士ドットコムニュースは、合同会議で、文化庁が配布した説明資料を入手した。資料は3点ある。



参考資料として、ダウンロード違法化に関する「Q&A」が用意されている。たとえば、「法案化までの議論が拙速ではないか」という問いに対しては、「権利者団体・出版社・利用者団体へのヒアリングがパブリックコメントを行った上で、議論が深められており・・・(中略)・・・これらの過程で必要な議論を尽くされたものと考えています」という回答だ。



また、「学者や漫画家も反対しているのではないか」という問いに対しては、「権利者団体・出版社・利用者団体等により構成される『文化審議会著作権分科会』における審議結果を忠実に反映したものであり、幅広い関係者の意見を総合的に勘案したバランスの取れた内容となっていると考えています」と答えている。



この会議に先立つ2月19日、文化審議会著作権分科会の小委員会のメンバーも含む研究者ら87人が、「さらに慎重な議論を重ねることが必要」「拙速な法改正は、私的領域のおける情報収集の自由に対して過度の萎縮効果を及ぼす」とする緊急声明を発表している。文化庁との認識のズレがあらためて浮き彫りになったかたちだ。



●文化庁「一般的な資料収集や創作活動等に特段の影響はない」

参考資料の「ダウンロード違法化に関するQ&A」のうち、主なものをピックアップする。



(問)漫画村のようなストリーミング型の海賊版サイトには効果がなく、無意味ではないか。



(答)ダウンロード型の海賊版サイトも多数存在しています。ストリーミング型の海賊版サイトへの対応については、広告出稿抑制のための民間での取組の推進や、海賊版サイトにアクセスした際に警告表示を行う仕組みの導入など、著作権法以外の手法も含め、政府全体で実効性のある対策を総合的に講じていくこととしています。



(問)インターネット上での資料収集、創作・研究活動等が萎縮するのではないか。著作権法が目的とする「文化の発展」を阻害するのではないか。



(答)あくまで、違法にアップロードされたものを、違法であると確定的に知りながらダウンロードを行う場合のみが禁止されますので、一般的な資料収集や創作活動等に特段の影響はないと考えています。創作・研究のためとは言っても、違法な情報源からコピーを入手することは正当化しがたいものであり、仮に創作・研究のために違法にアップロードされたものを活用する必要がある場合には、権利者に連絡して許諾を得るなどにより対応することが基本だと考えられます。なお、当然ながら、著作権法が目的とする「文化の発展」は、適法な著作物の流通を前提としたものです。



(問)法案化までの議論が拙速ではないか。



(答)海賊版対策が喫緊の課題となる中、文化審議会においては、昨年10月に検討が開始されてから、3か月間で5回、小委員会を開催し、集中的に審議が進められてきました。その中では権利者団体・出版社・利用者団へのヒアリングやパブリックコメントも行った上で、議論が深められてきており、さらに親会である著作権分科会において、権利者団体・消費者団体・有識者等による審議も行った上で、最終的な報告書が取りまとめられています。これらの過程で必要な議論を尽くされたものと考えています。なお、ダウンロード違法化については、既に音楽・映像が違法となっている中で、その対象範囲を拡大するものであり、リーチサイトへの対応のような全く新しい課題を検討する場合と比べ、短期間で方向性を取りまとめることができたものと考えています。



(問)学者や漫画家も反対しているのではないか。



(答)今回の改正は、権利者団体・消費者団体・有識者等により構成される「文化審議会著作権分科会」における審議結果を忠実に反映したものであり、幅広い関係者の意見を総合的に勘案したバランスの取れた内容となっていると考えています。 なお、当然ながら、個々には、様々な意見・懸念をお持ちの方もいらっしゃると思いますので、引き続き、それらの意見・懸念にもしっかりと耳を傾けつつ、普及啓発や運用面での対応などに活かしていきたいと考えています。



・法律案概要 https://storage.bengo4.com/news/resources/法律案概要.pdf



・概要説明資料 https://storage.bengo4.com/news/resources/概要説明資料.pdf



・参考資料 https://storage.bengo4.com/news/resources/参考資料.pdf



(弁護士ドットコムニュース)