バルセロナ合同テスト2週目の2日目はマックス・フェルスタッペンがRB15のステアリングを握り、レッドブル・ホンダはついにフルレースシミュレーションに踏み切った。
午前中は初日と同じようにショートランでセッティングの違いを評価していき、午前だけで69周。そして午後のセッションが始まるとピットスルーからのスタート練習を皮切りにいきなりレースシミュレーションに突入していった。
まずはソフトタイヤにあたるC3タイヤで19周。1分23秒台前半から始まって24秒台前半までじわじわと落ちてきたところでピットインし、ガレージ内で再度準備を整えてからC2タイヤに履き替えて今度は20周。そして最後は印字なしのプロトタイプに履き替えて走り始めて5周が経ったところで突然ピットに戻り、RB15はウマに乗せられてギアボックスが切り離され、レースシミュレーションを辞めてしまった。
「あれはトラブルではなくてルーティーンのチェックで、マシンの確認をするためにギヤボックスを取り外す必要があって少し時間が掛かってしまったというだけのことだよ。何かが壊れるところまで走るべきではないから、チェックのためにガレージに留まらなくてはならなくて時間を失ったんだ」
フェルスタッペンはそう語るが、もちろんこれは予定外のチェックだ。レッドブルはパワーユニットと接続して走らせるベンチ上でも度々ギヤボックスに問題が起きていたようで、やや心配が残るところだ。
これによって66周走るはずのレースシミュレーションが約2/3で終わってしまった。その後は何本かのテストランを行ったり、実走行の中でピットイン・アウトを繰り返してタイヤ交換練習を行ったりといったプログラムで18時のセッション終了までに128周をこなした。
まずまずの周回数とはいえ、やや不完全燃焼の感が残るテスト2日目であったことは否めない。
セッション終了後、フェルスタッペンはいつまで経ってもピットガレージから出てこなかった。それだけマシンを降りてエンジニアと話し込むことが多かったということだ。通例のメディア対応をする時間もほとんどないまま慌ただしく18時半から始まるチーム全体の技術ブリーフィングへと駆け込んでいったほどだった。
初日の当コラムで説明したように、レースシミュレーションはロングランのデータ取りという側面以上に、レッドブルとホンダにとってチームとしての動き方を確認するためのものという位置づけが強い。その中でチームとしての課題がいくつも出て来たということだ。
開幕してから実戦の中でこうした課題に直面するのではなく、開幕前のこの段階で問題を把握できたことは大きな収穫だったと言えるだろう。
■ホンダF1のパワーユニットは耐久性、制御面での熟成進む
その一方でパワーユニットはこの日もノートラブルで走行を続けた。レッドブル側はテスト1週目の3日目からだが、トロロッソ側はこれで6日目。実に3193.33kmを走破して約4レース分の耐久性をクリアした。
レースシミュレーションを行うためには、基本的なセットアップや様々な状況に合わせたエネルギーマネジメントのセッティングが出揃っていることが条件になる。逆に言えば、ホンダのパワーユニット熟成もそこまで進んできているということだ。
ホンダの田辺豊治テクニカルディレクターはこう語る。
「エンジン単体としてのキャリブレーション、パワーユニットとしてのエネルギーマネジメント込みでのキャリブレーション。それも刻々と燃料搭載量や路面状況が変わる中で乗り方が変わっていくのに合わせて変化させていかなければなりませんから、それだけのデータを持っておかなければレースシミュレーションはできません。チームの計画に合わせてターゲットを設定し我々もデータを積み重ねてきました」
この日のフェルスタッペンのレースシミュレーションはあえなく2/3で終わってしまったが、残りの2日間では最大パフォーマンスを引き出す予選も含めた確認作業がホンダにとっての最優先課題だという。
「予選やフォーメーションラップからのスタートなども含めた金曜から日曜までの流れの中で、抜け・漏れがないかを改めて確認すること。それを残り2日間の中でしっかりとやっておきたいことですね」
パワーユニットのハードウェアとしては2月28日にFIAにホモロゲーション申請を行い、ひとまずこの仕様で開幕戦を迎えることが決まる。あとはこれをいかに使うかの勝負だ。
レッドブルとしてはギヤボックストラブルに不安を感じずにはいられないが、ホンダとしては少なくとも4レース週末は保つパワーユニットが出来上がっていて制御面でも熟成が進んでいることが確認できたテスト第2週の2日目だった。