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片平里菜、等身大の姿で届けた5年間の名曲の数々 未来への希望に溢れた東京ワンマンライブ

2019年02月27日 11:31  リアルサウンド

リアルサウンド

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 片平里菜が2月24日、『「fragment live darling & honey」day2 honey』をZepp DiverCity TOKYOにて開催した。このライブは、デビュー5周年を記念して昨年発売された2枚組ベストアルバム『fragment』のDISC 1「darling」とDISC 2「honey」と連動したもの。先日2月10日の大阪なんばHatch公演は「day1 darling」、今回の東京公演は「day2 honey」とタイトル付けされ、それぞれ全く異なるセットリストで構成された。片平は昨年12月に個人事務所「BUCHI.」を立ち上げて独立。今回は独立以来、初めての東京でのワンマンライブだ。独立を機にバンドメンバーも一新され、山本幹宗(Gt)、浜公氣(Dr)、なかむらしょーこ(Ba)、村山潤(Key)という顔ぶれが揃った。


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 「よろしくお願いします! 片平里菜です!」という掛け声とともにステージに現れた片平は1曲目に「baby」を披露。冒頭から伸びやかな歌声を響かせ、リラックスした印象だ。続く「HIGH FIVE」では、〈しかれたレールに嫌になって〉と力強く歌い、「Hey boy!」でも〈もう君は私の夢じゃないの〉と強く自立した女性を表現する曲を並べた。


 「今日受験生はあんまりいないかもしれないけど、頑張ってる人に向けて一曲歌います」と披露したのは、「誰もが」。ハンカチで目頭を抑えている観客も見受けられた。


 しっとりとした空気から一点、亀田誠治プロデュースの「Oh JANE」では、女性の「遊びたい、甘えたい、愛されたい」といった欲望をストレートに表現。ステージを縦横無尽に移動しながらの熱唱だった。そのまま「それぞれ帰る家を思い浮かべて、みんなであったかいおうちを作りたいと思います。おかえり~」と声をかけ、「Come Back Home」へ。山本のアコースティックギターの音色に合わせて爽やかに歌い上げる。コーラス部分は会場にマイクを向け、一体感を生んでいた。


 シンセサイザーの音の中、幻想的な雰囲気で始まったのは「異例のひと」。赤青黄色の光が星空のように会場を包む。美しい裏声と地声の行き来に聞き入った。


 続いて弾き語りコーナが始まると、スポットライトに照らされる中、歌ったのは「ラブソング」。「弾き語りになると一対一な気分になるね。今は個になっている感じ」と片平本人が語ったように、ギターや歌の強弱が直に伝わってくる。それゆえ、片平が自身の声を巧みに操り、細かな表現をしていることに気づかされる。会場は息をのむように聞き入っていた。


 「東京でどうやって力を発揮できるかと悩んでいた時、たどり着いた一つの答え。それは、人と比べず、自分であることが一番だと思っています。そんな曲です」と前置きし、歌い始めると思いきや「届くわけないか、生歌で歌いたくなる」と、オフマイクで「なまえ」を披露。筆者がいた客席後方まで歌詞がしっかりと聞こえていた。しかし本人は「端っこまで行ってない気がした」と中断し、続きはマイクを通して歌った。〈母にもらったこの名前を いつか綺麗に咲かせたい 父から受けついだ名前を いつか立派に旅立ちたい〉と歌う姿は、片平の目指す生き方そのもののようだった。


 バンドスタイルに戻り、中盤へ。「最高のテンションでお届けしたいと思います!」と片平が赤いエレキギターをかき鳴らし、「小石は蹴飛ばして」を披露。続く「誰にだってシンデレラストーリー」「女の子は泣かない」の流れで、待っていました! と言わんばかりの片平ワールドへ。女性の本音に迫る歌が続き、女性客を中心に拳が高く上がっていたのが印象的だった。


 「もっといけますかー! わー!」とテンションマックスのまま「BAD GIRL」。ジャジーでセッション風の雰囲気に合わせ、片平は身体を左右に揺らしながらステージを動き回る。この時の声量は特に素晴らしく、今でも耳に残っている。片平の圧倒的な歌唱力に引き込まれるように、会場も声を徐々に大きくしていった。「Party」でボルテージは最高潮。会場中が拳を振り上げ、タオルを回す人も見られた。ステージ上のメンバーも全員が身体を思い切り揺らす。


 「やっぱり直接会ってみないと分からない。ライブみたいにダイレクトに伝えられるのはいいなって思いました。音楽を続けるために環境も変えたけど、これからもやっていきます」と独立にも触れ、「東日本大震災後に、福島の海から地球の海、それを照らす太陽を想って書いた、博愛的な曲です」と最後に披露したのは「心は」。ピアノに合わせてしっとりと歌い上げ、〈そんな簡単に見失わない 心は〉という歌詞に余韻を感じつつ、本編は幕を閉じた。


 鳴り止まないアンコールに応え、ライブグッズの半袖フォトTシャツを身にまとい、赤いエレキギターを抱えた片平とメンバーがステージに再登場すると、「ありがとう、新曲やってもいいですか? やらん方がいい?」と照れ気味に新曲「sunny」を披露。「どう?」と聞くと会場から「いいよ!」という声があがり、片平も満足そうだ。


 5月11日と自身の誕生日である5月12日に、新宿BLAZEでの2DAYSワンマンを発表し、「あなた」で最後をしっとりと締めくくった。ライブ全体を通して、片平の等身大で自然な姿が印象的だった。表情も終始やわらかで、清々しい。「またいっぱい発表していくので楽しみにしてください!」という片平の未来は、きっと希望に溢れている。心機一転、前を見据える彼女の今後に期待が膨らむライブだった。(深海アオミ)