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ヲタみん、花たん、鎖那、000、鹿乃……“歌ってみた”文化彩る実力派女性歌い手を解説

2019年02月27日 10:41  リアルサウンド

リアルサウンド

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 自分の歌を聴いてもらいたい、という純粋な好奇心で投稿を始めた人も多い“歌ってみた”。そのシーンの中である程度の人気を博していた歌い手が、いまではメジャーデビューし、新たなフェーズへ向かっている。そんな中、最近はまふまふ、そらる、あほの坂田、天月など、男性の歌い手が話題に上る機会が多い。彼らは個人で活動しつつも、グループ、ユニットを組む割合が多いのも理由かもしれない。そこで今回は、“歌ってみた”文化を長年彩ってきた実力派の女性歌い手5名にスポットを当ててみたい。“歌ってみた”文化に触れたことのない人でも、心酔すること間違いなしだ。


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■ヲタみん
 “歌ってみた”文化を形成するきっかけとなったryoの「メルト」が投稿されたのが2007年。その後、2008年5月という早い段階で同曲の“歌ってみた”動画をアップし、歌い手活動を開始。今年で活動11年目を迎えるのがヲタみんだ。彼女は当時流行していた物語性のある楽曲を様々な声色を使い分け、感情を込めて歌うことでリスナーを魅了し続けてきた。彼女が2012年に投稿した「威風堂々」、2014年に投稿した「虎視眈々」は、ボカロP・梅とらの代表曲であり、彼女の濃艶さを不動にした作品。このようなセンシュアルで刺激的なロックチューンも聴かせる反面で、ファルセットの効いた伸びのある歌声でバラードも歌いこなす優れた表現能力を持つ。声質と歌唱力双方が問われる時代に、必然的に注目されたまさに実力派歌い手といえるだろう。


■花たん
 YURiCa名義でも活躍する花たんも、2008年にボカロP・maloの楽曲「ハジメテノオト」で“歌ってみた”投稿を開始した、古参歌い手の1人だ。様々な歌声が存在する“歌ってみた”のなかでも、力強く美しい声が印象的。なにより彼女がここまでリスナーに支持され続けている理由のひとつには、歌い手界隈でも類を見ないほどのずば抜けた歌唱力を持つことにある。声域が広く、どんな楽曲も歌いこなすことができるのだ。特筆したいのは、高音部分でかける美しいビブラート。ビブラート含めた歌唱力の面で、彼女を超える女性歌い手はいまだ出てきてはいないのではないか。


■鎖那
 一方、鎖那は歌唱力で実力の証左を示すのではなく、自身の声そのものの持ち味を生かすタイプの歌い手だ。そのチャーミングなウィスパーボイスでリスナーの心をキャッチしている。HoneyWorksのコンピレーションアルバムに彼女の歌った楽曲が収録されるようになったのも、彼女の声だからこそ表現しうるピュアさが、HoneyWorksの求めるイメージに合致したことにあるからだろう。“歌ってみた”動画を投稿してきた彼女が、2018年11月には編集・ミックス以外の音楽・イラスト・動画を自身で手掛けた「シュテルン」を投稿。彼女のキュートな感性が溶け込んだ作品となっている。今後の活躍にますます、期待したいところだ。


■000(おれお/おれそ)
 “アンニュイ女子”を代表する歌い手ともいえる、000(おれお/おれそ)の魅力は可愛らしい歌声だけに留まらない。彼女は自身でイラストを手掛け、自身のキャラクターグッズ制作にも積極的な上、ファッションモデルとしても活躍する一面も持つのだ。自身作のイラストを背景に“歌ってみた”動画を投稿することもあり、イラスト、声、外見、そのどれもがファッショナブル。2018年12月には、ナユタン星人、和田たけあき、神山羊などいまのボカロシーンを牽引するボカロPによる書き下ろし楽曲8曲収録の『クライベイビー ハズ ポップコーン』をリリースしたばかり。彼女の弾けるポップな感性、歌声に胸が高鳴らずにいられない。


■鹿乃
 2010年に投稿した「恋愛サーキュレーション」(アニメ『化物語』10話オープニング)をもって、歌い手活動をスタートした鹿乃は、囁くように歌う可憐な声から、リスナーに“ロリ声”と評されることが多い。ちなみに、2012年には作詞・作曲を手掛けるボカロPとしても活躍しており、2019年2月には甘い恋心を綴った「No Sweet N♥Life」を初音ミク歌唱ver.として投稿している。数々のアニメ主題歌を担当し、その名を広げている彼女は、直近でも2018年にTVアニメ『狐狸之声』のエンディングテーマ「HOPE」を歌唱しており、歌い手やボカロPの枠を超えた飛躍に目が離せないアーティストなのだ。


 以上、ボカロシーン黎明期から“歌ってみた”動画を投稿している個性豊かな女性歌い手を改めて紹介した。最近では歌唱力のみに特化せず、特徴ある声質を生かした活動をしている歌い手も多くなってきている。今後の“歌ってみた”シーンでは、彼女たちのようにオリジナリティを追求する歌い手がますます増えそうだ。(小町碧音)