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UUUM代表取締役・鎌田和樹氏が語る、ゴルフ事業立ち上げの理由「僕らだからこそリーチできる人たちがいる」

2019年02月27日 10:11  リアルサウンド

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 ヒカキン、はじめしゃちょー、フィッシャーズを始めとする人気YouTuberを多数抱え、インフルエンサー・マーケティングの分野で躍進を続けるUUUM株式会社。そんな同社が、2018年1月に「UUUM GOLF」というチャンネルを展開し、3月1日からはプロアマ大会「UUUMトーナメント リクナビNEXT CUP in沖縄」を開催するなど、ゴルフ事業に注力している。いまなぜ、「ゴルフ」なのか。その理由と、動画クリエイターのマネジメント事業に通じる理念について、同社代表取締役・CEOの鎌田和樹氏に聞いた。


(参考:UUUMが本社を東京ミッドタウンに移転 「もっと“もっと”アソビナカマを」


■偶然の重なり=必然から生まれた「UUUM GOLF」
ーー鎌田さんはもともとゴルフに関心があったわけではなく、本格的に始めたのはUUUM社を設立したあとだと伺いました。そこからゴルフの魅力に目覚め、事業化に至るまでの経緯から聞かせてください。


鎌田和樹(以下、鎌田):もともと、ゴルフは朝が早いし、ルールも厳しそうだし、スポーツというよりビジネスパーソンにとっての“儀式”のようだと思っていて、苦手意識すら持っていたんです。企業さんのコンペに参加させていただくなかでも、僕は下手だからすぐボールをロストしてしまい、そのたびに皆さんが探してくれて、「申し訳ない」と思っていました。けれど、ゴルフには人となりが出るし、そこで深いコミュニケーションができて、いい仕事につながっていく、ということが徐々にわかり始めて。そこからどんどんハマっていって、いまではゴルフのことだとすぐに返事をする、という感じになりました(笑)。


ーー「人となりが出る」という言葉もありましたが、あらためて、そこで気づいたゴルフの魅力とは?


鎌田:良いもわるいも自分次第で、人のせいにできない、というところが僕の性に合っていると思います。もちろん、仕事をしていて誰かのせいにする、ということはないのですが、自分たちだけではどうにもならない要因に左右されることもある。けれど、ゴルフは自分でスイングしてボールを打つしかないし、またなかなか上手くならないのも、のめり込む要因ですね。


ーー常に挑戦し続けることができると。


鎌田:そう、常に挑戦して、常に挫折して。でも、全18ホール回って、例えば100回打つと、すべてが駄目なのではなくて、なぜかゴルフの神様はたまにいい当たりをさせてくれるんですよ(笑)。


ーー鎌田さんの志向として、もともとそうした「ままならないもの」が好きなのでしょうか?


鎌田:仕事においては当然、不安定なものは嫌で、再現性のあるものをビジネスにしているタイプなのですが、趣味に関してはそうだと思います。例えば、学芸会や文化祭って、当日を迎えるまでの準備が楽しかったりしますよね。僕のなかでゴルフには終わりがないし、どこまでもその「過程」を楽しむことができるものなんです。仕事も終わりのないものですが、好きでやっている趣味なのにゴールがない、というのがいいんだろうな、という気がします。


ーーなるほど。そうしてゴルフへの関心を深めるなかで、「UUUM GOLF」というチャンネルを設立し、公式のトーナメントを開くまでに至りました。「好き」から「事業化」には一段階、ハードルがあると思いますが、どんな経緯があったのでしょう?


鎌田:YouTuberを象徴する言葉に「好きなことで、生きていく」というものがありますが、それは大変なことですし、だからこそ、そのなかで光るものが生まれます。僕も会社を背負っていますから、ゴルフの魅力は実感していても、すぐに「好きだから事業にする」という判断はできませんでした。きっかけは、いまのゴルフ事業の責任者と出会ったことですね。ゴルフ業界に長年いて、雑誌も作っていたエキスパートです。これはどの事業にも言えることなのですが、ひとつ決めているのは、「適任の担当者がいなかったらやらない」ということなんです。


ーーなるほど、現場できちんと導ける人材がいなければ、事業にしないと。


鎌田:そう、トップがひらめきでウルトラCを狙うより、日々一つのことに集中して向き合っている人のほうが強いんです。僕も気づいたことを言うことはできますが、コツコツ、地道に積み上げてノウハウ化するABテストはできない。そういう担当者が見つかるまで、絶対に事業化はしない……と思っていたら、巡り会えたんですよね。古臭く聞こえるかもしれませんが、僕はそういう縁とか、和とか、義みたいなものをめちゃくちゃ大切にしていて、だからこそ今のUUUMがあると思っていて。偶然も重なれば必然ですし、「これはゴルフ事業をやれということだな」と思って、「UUUM GOLF」を立ち上げました。


 うれしかったのは、クリエイターのなかにも一緒になってゴルフを楽しんでくれる人が出てきたことですね。もっといろんなところでクリエイターと価値観や体験を共有したい、と思っているんですけど、一緒に食事をしたり、お酒を飲むだけでは必ずしもそれは叶わないし、旅行をしようか、というのも何か違うと。


ーーゴルフなら人となりも見えるし、食事よりも長い時間を共有できますね。


鎌田:そうなんです。旅行よりも適度な時間で、継続的に関係を深めていくことができる。それを一緒に盛り上げてくれるクリエイターが出てきてくれたのは、本当にうれしかったです。ただ、そうすると残念なことに、先に始めていた僕が負けてしまうんですよ(笑)。


ーー(笑)。人気グループ「釣りよかでしょう。」のよーらいさんなどは、かなりの腕前だそうですね。


鎌田:この間も熊本に行って一緒に回ったら、ガチで負けました(笑)。東京からだと一時間かけて練習場に行く、という感じですが、「釣りよか」は九州・佐賀を拠点にしていて、練習環境がとてもいいので、ぐんぐん成長していくんです。


■きちんとゴルフという領域で成功したい
ーーさて、そんな人気クリエイターたちも出演している「UUUM GOLF」チャンネルですが、ゴルフ動画の展開についてはどうお考えですか?


鎌田:こちらはきちんと戦略があって、ゴルフに限らず「レッスン動画」というのはYouTube上にたくさんあって、必ずしも有名ではない方の動画が100万再生を超えている、というのも珍しくないんです。YouTubeのいいところは、コンテンツを置いておけば、いつか再生されること。なかでもレッスン系は繰り返し視聴されるので、ストックとして計算できるだろうと。また、YouTubeチャンネルで大々的にゴルフをやっている人がいなかったので、これはチャンスだと思いました。特にゴルフは、雑誌はたくさんありますが、スイングは動画で見ないと伝わりにくい。上級者というより、僕らだからリーチできる、これからゴルフをやりたい若い人とか、好きなクリエイターがやっているからやってみたいと思う人とか、そういう人たちにアプローチして、ゴルフ人口が増えてくれたらいいなと。


ーーチャンネル登録者数は15万人を超え、100万再生を超える動画も出てきました。反響も大きいのでは?


鎌田:そうですね。ゴルフ場に行くと、後ろの組の方が普通に「昨日、UUUM GOLF見た?」なんて話しているのを聞くこともあって。僕はUUUM GOLFのヘッドカバーを使っているので、キャディーさんに「これ、あのYouTubeのですか?」と聞かれることも多かったり。それだけに、ミスショットしたりすると恥ずかしいのですが(笑)。


ーーまた、必ずしもゴルフに興味がなくても、人気クリエイターやタレントが出演していたり、YouTubeらしい検証(一万円でゴルフが始められるのか?など)や、おしゃれウェアを買ってみたのような企画があったりと、多くの人が楽しめる動画もありますね。


鎌田:アンバサダーとして参加していただいている、女子プロゴルファーの古閑美保さんと、誰かが対決するとか。いちコンテンツとして面白いな、と思ってもらえたらうれしいな、というのはあります。


ーーそして、3月1日からは女子プロゴルファー、一般参加者に加えて、人気クリエイターも多数参加する「UUUM トーナメント リクナビNEXT CUP in 沖縄」が開催されます。


鎌田:外から見ると「UUUMが何をやっているんだ」という感じかもしれませんし、僕もそう思うところがありますが、きちんとゴルフという領域で成功したい、と考えているんです。UUUMはやるとなればとことんやる、という泥臭い会社でもあり、その一環として、今回のような本格的なトーナメントがあります。


 テレビでもゴルフ中継が減ってきているなかで、なんとか接触の機会を増やしたい。例えば、いまは人気のYouTuberだって、最初は動画を見る側だったんです。そこから興味を持ち、自分が作る側に回って、トップクリエイターになった。ゴルフも同じで、まずは見て、「ゴルフってこういうものなんだな」という思う人が増えないと、プレイ人口も増えないでしょう。


「好きなクリエイターが出るから」という目的で視聴する人も含めて、ゴルフに触れるきっかけになるイベント、あるいは配信になればと考えています。


■地方拠点にU-FES.ーーUUUMが全国に目を向ける理由
ーー配信も楽しみです。また、今回のトーナメントは沖縄開催、先日は宮崎に初の地方拠点を設けるという発表もあり、そして人気クリエイターが集結する一大イベント「U-FES.」の全国開催も発表されました。UUUM社の事業全体として、全国に目を向けていく年になるのかな、という印象もあるのですが、いかがでしょう?


鎌田:意図していないといえば嘘になりますね。U-FES.を始めとするイベントについては、「地方在住だから行けなかった」という声もいただいていますし、また2016年にも大阪と福岡で開催して、地域特有の温度感がとてもおもしろかったという思いもあって。もちろん、会社ですから最終的には利益も出るようにしなければいけませんが僕らは世の中に対して何らかの貢献をしたいと常に考えていて、その仲間を広げるという意味で、企業理念の「セカイにコドモゴコロを」とともに、「もっとアソビナカマを」という言葉も使っています。ですから、今年はできる限り僕らから「会いに行こう」と。また、UUUMを設立した2013年と比較すると、大きく変わっていて、東海オンエア(愛知県岡崎市)やカズ(福井県)さんのように、地元で活躍するクリエイターが増えていってもおかしくないな、と思うことも増えています。


ーーさて、UUUM GOLFに話を戻しますが、今後の展開で、何か決まっていることはありますか?


鎌田:今後はいよいよクリエイターをもっとフィーチャーして、彼らが真剣にゴルフに向き合う姿を見せていきたいと考えています。男女一名ずつの人気クリエイターにやってもらおうと検討しているので、楽しみにしていてほしいですね。


ーーなるほど、決まったクリエイターが定期的に動画を上げてくれると、さらにのめり込んでゴルフの魅力に気づく視聴者が増えそうですね。そこでゴルフを始めた人が、今後大会に出てくる、というエコシステムができると素晴らしい。


鎌田:そうですね。また、この事業は長く続けることが大事だと考えています。耐える時期も出てくると思いますが、僕らには動画がありますから、時間が経てば経つほど、コンテンツが回って負けにくくなる。世代交代を支えつつ、きちんとゴルフの楽しさを伝えながら、事業としてもしっかり勝ちにいきたいと考えています。


(橋川良寛)