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欅坂46、東京女子流、EMPiRE……変化と進化を続ける女性アイドルグループの新作

2019年02月26日 10:51  リアルサウンド

リアルサウンド

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 主要メンバーの復帰、メンバーの新加入や脱退など、様々な出来事を繰り返しながら、変化と進化を続けている女性アイドルグループの新作を紹介。グループの現状、コンセプト、未来へのビジョンなどをリアルに反映した楽曲は、現実とフィクションが混ざり合う、きわめてスリリングな音楽体験を与えてくれるはずだ。


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 最初に聴こえてくるのは、街の雑踏。その後、美しく、切ないピアノのフレーズ、鋭利なスラップベースとともに〈信号は青なのかそれとも緑なのかどっちなんだ?/あやふやなものははっきりさせたい〉という、内面の葛藤と潔癖な決意を含んだ歌詞が響く。平手友梨奈の復帰で話題を集めている欅坂46の8thシングル表題曲「黒い羊」は、緻密に構築されたリズム、物語性を感じさせるメロディラインを含め、歌謡曲~ダンスミュージック~ミュージカルなどを融合した実験的ポップチューン。作曲者はナスカ。エキセントックな試みをJ-POPのなかで繰り広げてきた彼のセンスが上手く発揮された楽曲だ。“黒い羊”とは、周囲に馴染めず、違和感を抱えている人間のメタファー。“白い羊になったら、自分ではなくなる”という切実なメッセージは、平手の存在とも重なり、リスナーの心を揺さぶる。


 2018年初めに新たなスタイルを導入し、アーティスト性の高い楽曲と、アイドルとしてのきらびやかさを共存させながら活動を継続している東京女子流のニューシングル『光るよ / Reborn』は、“見ちゃいけない東京女子流”をコンセプトにした両A面。「光るよ」は、作詞・春ねむり、作曲・増田武史によるパーカッシブなポップナンバー。〈ここから/はじめよう/何度でも新しいわたしで/生まれたい〉というラインからは、リニューアルを繰り返しながら、そのたびに新しい魅力を身につけている彼女たちの軌跡につながっているように感じる。SEAMOことNaoki Takadaが作詞を担当した「Reborn」も、タイトル通り“生まれ変わる”がテーマ。シャープなグルーヴを感じさせるトラックのなかで〈新しい姿の 東京女子 Yes!!〉とそのものズバリな歌詞を気持ち良く響かせるパーティーチューンだ。


 『SUPER☆GiRLS超オーディション!!!!』を経て、7名の新メンバーを迎えたSUPER☆GiRLSの新体制・第一弾(通算21枚目)のシングル表題曲「コングラCHUレーション!!!!」は、モータウン風のビート、華やかなホーンセクションを交えたサウンドのなかで〈新しい世界へ行こう〉と元気よく宣言するアッパーチューン。2020年の10周年へのキックオフにふさわしい旅立ち応援ソングだ。瑞々しさと前向きなパワーに溢れたボーカルも心地いい。カップリングには軽やかに疾走するリズムとともに、バレンタインデーに向けた愛らしい気持ちを描き出す「Give me Love me!チョコ」を収録。グループの現状と未来、アイドルらしいキュートネスを同時に感じさせるシングルに仕上がっている。


 2019年1月29日にYUKA EMPiREが学業に専念するためグループ脱退を発表。EMPiREとして初の、そして、現体制ラストとなる1stシングル『ピアス』(TVアニメ『FAIRY TAIL』ファイナルシリーズ 第2クール エンディングテーマ)の表題曲は、グループとして新たな局面を迎え、それでも前に進んで行こうとするメンバーの意志を強く反映した楽曲となった。作詞・作曲は松隈ケンタが担当(作詞はJxSxKとの共作)。〈裏切られたってやつらなんか放っておけ/いざ行け!行け!行け!〉というフレーズに圧倒的な説得力を与える、質の高いプロダクションが実現している。カップリングの「ERASER HEAD」は、メンバーのMAYU EMPiREが作詞したダークなダンスナンバー。未来、夢に対するシリアスな思いをダイレクトに描いている。


 関西出身の5人組アイドルグループ・たこやきレインボーの3rdフルアルバム『軟体的なボヤージュ』は、“地図のない航海(ボヤージュ)の荒波を、たこのように柔軟に=軟体的に乗り越えて行こう”というテーマを掲げた作品。制作段階からメンバーが積極的に関わり、Jeff Miyahara、前山田健一、CMJK、浅利進吾、今井了介、MioFRANKY、塚地武雅(ドランクドラゴン)などのバラエティ豊かな作家陣にオファー。元気いっぱいでキュートな等身大の魅力、そして、新たなトライアルへと挑む姿勢を同時に描き出す作品となった。個性的かつポップな楽曲が並ぶが、個人的ベストは作詞・綾小路翔(気志團)、作曲編曲・西園寺瞳による、“レペゼン関西”を前面に押し出したロックダンスナンバー「ウエッサイ・ストーリー」である。


■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。