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乃木坂46 西野七瀬卒業コンサートに見た、“努力と感謝と笑顔”の歴史

2019年02月25日 13:31  リアルサウンド

リアルサウンド

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「自分にしかない個性を出していって、乃木坂46にとって絶対に必要な存在になりたいし、見てもらって楽しいと思えるようなグループになりたいと思います」(『乃木坂46 7th YEAR BIRTHDAY LIVE Day4 ~西野七瀬卒業コンサート~』オープニング映像より、乃木坂46オーディション時の様子)


参考:乃木坂46、原点回帰の“全曲披露”7thバスラで示した “育てながら勝つ”グループの最新形


 『NHK紅白歌合戦』に4回連続で出場しても、『日本レコード大賞』を2年連続で獲得しても、海外でライブをいくつも成功させても、卒業コンサートに5万人の観客が訪れ、全国200館を超える大規模なライブビューイングが実施されても、決して驕ることなく、謙虚な姿勢と感謝の気持ちを貫き通す。『乃木坂46 7th YEAR BIRTHDAY LIVE Day4 ~西野七瀬卒業コンサート~』は、そんな“絶対に必要な存在”になった西野が築き上げてきた“努力と感謝と笑顔”の歴史を、改めて感じさせられたライブだった。


 公演本編のVTRでも紹介されていたが、最初の『お見立て会』で握手に来たのは数人、1stシングルおよび2ndシングルでは3列目、テレビ番組では泣いてばかりだった西野は、3rdシングルタイミングでの舞台『16人のプリンシパル』で自分を曝け出した“自己紹介”を経て、徐々にファンの目を引く存在に。8thシングルで単独センターを射止めて以降はグループのエースへと成長し、乃木坂46が今日の人気を獲得するうえで欠かせない存在となった。


 コンサートはその足跡をたどるように、彼女が初めてセンターを務めた8thシングル表題曲「気づいたら片想い」でスタート。西野がソロでスポットライトを浴び、震える声でサビ頭を歌い出したあと、他のメンバーがゆっくりと勿体ぶるように、彼女の肩へそっと手をかけて後押しする様子は、まさにメンバーと西野の関係性、この日の寂しさを端的に表していたように思う。


 そこから、絶対的エースとして切磋琢磨した白石麻衣とのWセンター曲「今、話したい誰かがいる」、8thシングルカップリング曲であり、西野のキュートな一面を引き出した「ロマンスのスタート」、2作連続センターとなった9thシングル表題曲で、曲に後押しされるように西野自身も殻を破った「夏のFree&Easy」では、当時の心象を表現するように、西野がワイヤーで宙を舞い「大阪、声出るかー!?」と叫ぶ。


 高山一実、伊藤かりん、与田祐希と1期、2期、3期メンバーが彼女との思い出を話した後に歌った、彼女にとって初めてのソロ曲「ごめんね、ずっと」を終えると、場面は3期生パートに。山下美月センターの「自分じゃない感じ」、岩本蓮加センターの「トキトキメキメキ」、アンダー曲として中田花奈センターの「春のメロディー」が披露された。


 ユニット曲ゾーンに変わり、西野・秋元真夏・齋藤飛鳥による「Another Ghost」、白石・衛藤美彩・松村沙友理・高山による「魚たちのLOVE SONG」、若月佑美の卒業により堀未央奈が後継者「2代目箸くん」になり生まれ変わった“新・若様軍団”こと“堀様軍団(堀・梅澤美波・山下美月・阪口珠美)”による「失恋お掃除人」、久保史緒里センターのアンダー曲「君は僕と会わない方がよかったのかな」をパフォーマンスし、バースデーライブとしての一面もしっかりとのぞかせはじめる。


 再び西野がセンターに戻り、2015年3月の11thシングル表題曲「命は美しい」、「何もできずにそばにいる」を経て、大園桃子センターの「羽根の記憶」、乃木坂46の“全体曲”としてサビ以外は1期生→2期生→3期生と歌割りが進んでいく「設定温度」、4期生によるこじ坂46の「傾斜する」と深川麻衣ソロ曲の「強がる蕾」、全体での「転がった鐘を鳴らせ!」へと続く。


 1stアルバム『透明な色』発売時のカップリング投票で1位を獲得するなど、ファンからの人気も高く、西野のユニット曲といえば真っ先に挙げられる「他の星から」は、卒業メンバーである若月佑美と伊藤万理華に変わって山下美月・与田祐希が入ってパフォーマンス。続けて生田・白石・松村による「ショパンの嘘つき」、西野・桜井・山下による「Rewind あの日」では歌詞の世界観にあわせて“乃木坂46ナンバー(プレートには西野の誕生日である「05-25」)”のオープンカーがステージに登場し、西野が好きだと公言するアンダー曲「生まれたままで」では、渡辺みり愛がセンターを務めた(参考:西野七瀬 公式ブログ)。


 中盤は「吐息のメソッド」、「僕がいる場所」でスタートし、MCを挟んだあとは、西野のソロ曲「ひとりよがり」へ。減った人数を補強しないまま、「他の星から」のオリジナルメンバー5人で噛みしめるように歌われた「隙間」、“94年組楽曲”である「遠回りの愛情」は、これらのユニットにおける“特別さ”を物語る一幕だった。


 「きっかけ」を挟んで“94年組”の井上・桜井・中田によるMCでは、中田が「94年組のメンバー、もらった頃はめちゃくちゃいたじゃん」とオリジナルメンバーが減っていることや、ダンスの振り起こしの際の思い出を語って涙を見せた。


 その後のVTRでは、最初はよそよそしく、強引に近づこうともしない“良い距離感”だったが、次第にグループのエースとして、Wセンターとして“盟友”になった白石と西野の関係性が紹介され、2人にとって唯一のユニット曲「心のモノローグ」、2人がセンターを務め、初めての『日本レコード大賞』を獲得した「インフルエンサー」へ。続けてアンダー曲の「別れ際、もっと好きになる」「嫉妬の権利」、2期生曲の「かき氷の片想い」を挟み、西野がトロッコに乗って笑顔を振りまいたユニット曲「無口なライオン」、切なげに歌い上げられた「やさしさなら間に合ってる」から、残ったオリジナルメンバーである西野・生田・松村の3人で披露された「やさしさとは」への“やさしさメドレー”が、終盤へと向かう“別れの時”を思わせはじめる。


 アンダー曲「My rule」から、西野が生み出したキャラクター“どいやさん”に声が当てられた衝撃のVTRを前後に挟んで人気のユニット曲「せっかちなかたつむり」が披露されたあとは、“どいやさん”型の気球が西野を乗せて飛行し、「スカイダイビング」をパフォーマンス。「会いたかったかもしれない」では西野が気球から“どいやさん人形”をファンへ向けて投下し、本編最後の「いつかできるから今日できる」を終えた。


 アンコール前のVTRでは、西野がグループ内で卒業を発表した際に号泣したメンバーの姿や、西野に関するこれまでの出来事が映し出されたあと、ステージには“ちょっとだけ鳩を意識した”という衣装で西野が登場し「今日のライブが始まる直前まで『卒業ライブかな?』って感じだったんですけど、出る前に喉が締め付けられる感じになって、自分にとっての乃木坂がすごく離したくないものというか、知らない間にそういう例えようのないものになってたんだなと気づかされました」と話し出す。


 その後、「ライブをやって感じてきたのは『楽しいな』ってことで。大変なこともたくさんあるんですけど、ライブができることもありがたいですし、場所があって、セットを作ってくださる方も構成を考えてくれる方も、綺麗に撮ってくれるカメラマンさんも、照らしてくれる照明さんも、マイクから音を出してくださる音声さんもいて。当たり前のように感じてしまうかもしれないけど、こうしてライブができることは当たり前じゃないんだなと昨日の夜に感じていました」と、謙虚な彼女らしく、自分のことはさておき、スタッフに感謝を述べる。


 そして、ファンへ向けて「自分が楽しい気持ちで歌ったり踊ったりできるのは、それを見てくださったりアピールしてくださるみなさんがいたから。すごく力になりました。ライブって『私を見て!』ってしゃかりきにできるところなんですよ。降りると「見ないで!」ってなるんですけど、ライブになると遠くのお客さんにも見えるように精一杯手を伸ばそうとか、自分の中でのルールが一つずつ生まれていって。それを考えるきっかけになるのはファンの方に喜んでいただきたいっていう思いなので、それを思わせてくれて、すごくありがたいなと思います」と、ファンへの感謝を立て続けに口にした。


 最後に自身について、西野は「会場には5万人の方がいて、画面の向こうにはもっとたくさんの方がいて。そんな存在に乃木坂46の西野七瀬がなったことは、誰も予想しなかったですよね(笑)。私もそう思わなかったですから、本当に幸せだったと思います。たくさんの方が力を貸してくれて存在できていて、それは他の仕事にも活きること。この7年間で覚えたことや教訓は、どこに行っても役に立ってくれるものだと思っています。今後は乃木坂46の西野七瀬じゃなくなりますけど、西野七瀬は続いていくので、無理をせず見ていただければと思います」と“不器用なりに届けた”というメッセージを笑顔で届け、彼女にとって最後のソロ曲となった「つづく」を、涙を詰まらせながら歌唱した。


 アンコールはその後「シンクロニシティ」と、生田絵梨花が出だしを〈なぁちゃんの温かい その背中が好きだった〉と涙ながらに言い換えて歌った「ダンケシェーン」を経て、“全曲披露”における最後の1ピースを埋める「帰り道は遠回りしたくなる」へ。楽曲の最後にはファンから「ありがとう」と書かれた紙が掲げられ、メンバー一人ひとりと挨拶を交わした西野は「なんの悔いもなく卒業できます。今後も私がいなくなっても乃木坂46はどんどんキラキラ輝いていくと思いますし、私も応援しますから、みなさんも応援しましょう。本当にありがとうございました!」と言葉を残し、ステージを後にした。


 ファンからの声援が鳴り止まずに行われたWアンコール。ソロ曲の「光合成希望」をメンバーと共に歌い上げた西野は、「終わりたくないですね。寂しいですね。でも、どうしよう……かずみん、助けて!」と高山に助けを求め、会場全体から温かい笑い声が降り注ぐ。その後、一列に並んで生声で感謝の気持ちをドーム中に叫んだところで、この日の公演が終了した。


 かと思いきや、トリプルアンコールとして西野が再びステージに登場。最後に松村がこの日のMCで触れていた、写真を撮るときのキュートな“にんじん顔”で記念撮影を行い、優しい空気のなかで「またね~♪」と西野は笑顔で最後のステージを後にした。


 緩やかな空気の中で行われたこの日のライブを終えて、西野が〈好きだったこの場所〉を離れて〈ここではないどこか〉へ行っても、彼女の物語と乃木坂46の物語はまだまだ〈つづく〉。そうして分かれた2つの道がどちらも幸せに繋がっていることを願いながら、このレポートを締めくくりたい。(中村拓海)


※初出時、記事内容の一部に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。