2019年02月25日 10:41 弁護士ドットコム
車道を走っていた自転車が、交差点で赤信号になった途端に歩道に上がり、交差する車道に入って左折していく。大学生のマサヒコさんは最近、こんな光景に出くわした。
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具体的な手法はこうだ。まずは車道を走る。左折したいにもかかわらず、赤信号になってしまった場合、歩道に上がって、左折で入りたかった車線に進む。
車が交差点にあるコンビニの駐車場を利用して、信号で停止せずに左折する「コンビニワープ」が話題になったこともあるが、自転車の場合は歩道を利用して簡単に「ワープ」ができてしまう。
歩道と車道を行き来するため、周りの車や歩行者などにとっては動きが読みづらく、衝突の危険も考えられるが、こうした行動は信号無視にあたらないのか。道路交通法に詳しい西村 裕一弁護士に聞いた。
「質問のケースは、状況によって個別に判断せざるを得ないと考えられます。
まず、大前提として、自転車も軽車両として信号機に従わなければなりません(道路交通法7条)。ですから、赤信号の待ち時間を回避するために、ショートカットして自転車に乗ったまま歩道に上がり、左折をすれば信号無視に問われる可能性は十分にあります。
そもそも、自転車は原則として車道を走行しなければなりませんので(道路交通法17条1項)、自転車通行不可の歩道に自転車で進入するとその点でも問題になる可能性があります。
また、たとえ歩道通行可の場合でも、車道から歩道に進入する場合には、歩道の直前で一時停止し、かつ、歩行者の通行を妨げてはなりません(道路交通法17条2項)。ショートカットしようとする自転車の多くは、一時停止をして歩道に上がるといった行動を取らないことが多いでしょうから、いずれにしても道路交通法違反の問題が生じる行為といえるでしょう」
自転車から一度降りて、歩道に上がり、車道に出る段階で再び自転車に乗ってしまえば、問題はないのでしょうか。
「この場合には、いったん自転車を降りた段階で歩行者となってしまうため、信号無視の責任を問うのは難しくなるでしょう。ただ、歩道の前で一時停止をしなければ、先ほどの道路交通法17条2項に違反することにはなります。
最近では自転車事故でも、危険な運転と評価されれば起訴されるケースも出てきていますので、ワープ左折といったイレギュラーな運転はしない方がよいでしょう。
なお、自動車がコンビニの駐車場などを利用したショートカットも信号無視や歩道通行違反の問題が同じく生じます」
【取材協力弁護士】
西村 裕一(にしむら・ゆういち)弁護士
福岡県内2カ所(博多、小倉)にオフィスをもつ弁護士法人デイライト法律事務所の北九州オフィス所長弁護士。自転車事故も含め、年間100件以上の交通事故に関する依頼を受けており、交通事故問題を専門的に取り扱っている。
事務所名:弁護士法人デイライト法律事務所小倉オフィス
事務所URL:http://www.koutsujiko-law.com/